不安な展開?
「よし、飯も食ったしガッツリ買い物もした。鎧海老も手に入った事だし宿に戻るか」
出ていたいろんな屋台で、ご迷惑にならない範囲でガッツリまとめ買いをした俺は、笑ってそう言いながらハスフェル達を振り返った。
「おう、じゃあ俺達はまた出掛けるよ。宿に戻ってケンの従魔達も借りていくからな」
「ああ、そんな事言っていたな。もちろん連れて行ってくれていいけど……危険はないんだよな?」
この場合の危険は、普通にジェムモンスターと戦うのではなく、例えば岩食いみたいなとんでもないモンスターが出るような、とんでもない危険の事だ。
「まあ、モンスターの出現そのものは自然現象だから、危険が全く無いとは言わんが……あんなのはそれこそ特別だよ」
俺が言いたい事を正確に理解しているハスフェルが苦笑いしながらそう言い、俺の右肩に座ったシャムエル様もうんうんと頷いている。
「確かにそうだな。まあ、お前らやケンタウロスの人達までいるのなら大丈夫だとは思うが、充分気をつけてな」
「もちろんだよ。だが、オレンジヒカリゴケが大量に手に入ったおかげで、今は安心して戦えるよ」
笑ったギイの言葉に、ハスフェルとオンハルトの爺さんも笑って頷いている。
最低限度はあったとはいえ、確かに万能薬が足りなかった状況は彼らもかなり慎重になっていたみたいだからな。
「まあ、確かにその通りだな」
笑った俺もそう言い、揃ってのんびり歩きながら宿泊所へ戻って行ったのだった。
「あれ? 何だこれ?」
宿泊所に到着して、部屋の鍵を開けようとしたところで、二つ折りにした紙が扉の隙間に差し込まれているのに気がついた。
「ああ、もう準備が出来たみたいだ。じゃあ、ハスフェル達を見送ったら、俺はそのままギルドへ直行だな」
差し込まれていた紙には、綺麗な文字で準備が出来たので、都合のいい時に冒険者ギルドに顔を出してくれと書かれていて、それを見た俺は思わずそう呟く。
もちろん、この置き手紙の差出人は冒険者ギルドマスターのヴォイスさんだ。
部屋に戻って大喜びするマックスをはじめとする従魔達に押し倒された俺は、笑いながら従魔達と思いっきり触れ合い、ハスフェル達が部屋に来るまでの間、心ゆくまでもふもふとむくむくとふかふかとツルツルを堪能させてもらったのだった。
それから、準備を整えて部屋に来たハスフェル達に、今日のお弁当プラスアルファを色々と渡しておく。
あの海鮮丼も大好評だったので、作ってあった分をまとめて渡しておいたよ。
それから、マックス達も全員引き連れてハスフェル達は出掛けて行った。
ちなみに今日の留守番は、スライム達以外、基本的に戦力外のハリネズミのエリーとモモンガのアヴィだけだ。
まあ、地脈の吹き出し口の確認と言われても、そもそも何をするのかすら分からない俺は完全に戦力外。
小さく笑ってため息を吐いた俺は、スライム達が入っている鞄を手に部屋を出て行ったのだった。
「ああ、ケンさん。すまんがちょっとだけ待ってくれるか!」
俺が冒険者ギルドの建物の中に入ると、カウンターの奥にいたヴォイスさんが、慌てたようにそう言って手を振っていた。
座って机に向かっている彼は、横にいるスタッフさんが差し出す書類を見ながらもの凄い勢いでサインをしている。
「急ぎませんのでゆっくりやってください」
笑って手を振り返した俺は、小さく笑って部屋を見回した。
今は数名の冒険者がカウンターに座って何かの手続きをしているだけで、ほぼ人がいなくてがらんとしている。
「そっか。朝一番に依頼を引き受けた冒険者は、もう出掛けているから人がいないわけだな」
小さく笑った俺は、RPGの定番っぽい壁面にある大きなボードを見た。
「これが依頼ボード。へえ、いろんな依頼があるんだな」
当然、もういい依頼は残っていなくて、見たところあるのは街の中で出来るような初心者向けの依頼がほとんどだ。
例えば荷物運びだったり、護衛の依頼だったり。
「へえ、鎧海老の漁師募集、なんてのもあるんだ。ってか、それを冒険者に依頼するって、この街ならではだなあ」
苦笑いしつつそう呟き、鎧海老漁師募集と書かれた紙になんとなく手を伸ばした。
「なんだ。鎧海老漁師になってくれるのか?」
背後から聞こえた、笑ったヴォイスさんの言葉に思わず吹き出して手を引っ込める。
「あはは、あの鎧海老を見た後だと、俺には絶対無理だって言いますね」
「まあ、捌くのは大格闘でとんでもないが、鎧海老は漁も、更にとんでもないからなあ」
笑ったヴォイスさんの何やら不審な言葉に、冗談抜きでちょっとビビっている俺だったよ。
ええ、一体何をするって言うんだよ。
単に海老を捌くだけのはずが、とんでもないって……マジでドユコト?




