いつもの朝と鎧海老の事
翌朝、いつもの従魔達総出のモーニングコールに起こされた俺は、眠い目を擦りつつなんとか起き出して水場で顔を洗い、スライム達を水槽にフリースローで放り込んでやってから、水遊び大好きチームに場所を譲った。
とは言え、バイゼンのお城とは違って宿泊所の水場は小さいので、マックス達は水槽には入れず、スライム達が寄越してくれる飛沫を浴びる程度だ。
それでもご機嫌で遊ぶマックス達を見て和みつつ、俺は自分の身支度を手早く整えた。
「ふああ。まだちょっと眠いな。でも、今日は朝から市場へ行くぞ。噂の鎧海老が入荷していたら嬉しいんだけど、どうなんだろうなあ」
剣帯を締めながらそう呟く。
ここでタイミングよくハスフェル達からの念話が届いた。
『おおい、起きてるか〜?」
『おう、おはよう。今、身支度を終えたところだ。じゃあ、俺の部屋に集合な』
『おはようさん。それなんだが、朝市で屋台も出ているそうだから、行ってみないか?』
『おはよう。もしかしたら、鎧海老が入荷しているかもしれないぞ』
「へえ、それは期待大だな。じゃあそっちへ行ってみるか!」
思わず声に出して答えてしまい慌てていると、何故か通じていたらしく笑ってじゃあ廊下に出てきてくれと言われた。
『ああ、市場は道が狭いから、従魔達は留守番な』
最後に笑ったギイにそう言われて、昨日の魚市場の様子を思い出した俺も笑って頷く。
『了解。じゃあ後でな』
ここで念話を切って、まだ水浴びしているマックス達に声をかける。
「おおい、今朝は朝市の屋台へ行くらしいから、お前らは留守番な。良さそうなのがあれば買い物もしたいから、念の為にサクラは一緒に来てくれるか」
「はあい、今行きま〜〜す!」
張り切ったサクラの返事が聞こえた直後に、水槽の中から飛び出したサクラがこっちに向かって勢い良く跳ね飛んでくる。
笑って持っていた鞄を開けてやると、そのまま鞄の中へ飛び込んでいった。
「ナイスシュート! 遊んでいるところをごめんな。じゃあ行こうか」
笑って鞄を叩いてやり、まだ水遊びをしているスライム達とマックス達を見る。
「遊ぶのはいいけど、後始末はしっかりやっておいてくれよな」
「はあい、床下までしっかり片付けま〜す!」
ご機嫌なアクア達の返事が聞こえて、もう笑うしかない俺だったよ。
サクラの入った鞄を手に、念の為ヘラクレスオオカブトの剣も身につけた俺は、鍵を手に廊下へ出た。
部屋の鍵をしてから鍵は自分で収納しておき、出てきていたハスフェル達と一緒に朝市へ向かった。
しかし、宿を出て冒険者ギルドの建物の前を通り過ぎようとしたところで、ギルドマスターのヴォイスさんが俺たちに気付いて駆け出してきた。
「おお、おはよう。ちょうどよかった。今からそっちの宿へ行って、ケンさんに連絡しようと思っていたところだ。早朝、漁から戻ったアレクから連絡があってな。今回も大漁だったらしいぞ。それで、厳選した鎧海老を持っていくので、ぜひ料理をして欲しいとの事だ。ケンさん、今日の予定は?」
「おはようございます。もちろんいつでも大丈夫ですよ。今日もハスフェル達は従魔達を連れて出掛けるそうですが、俺は街で留守番して料理を作る予定でしたから」
「それなら良かった。アレクには、昨日の魚料理の話と一緒に、ケンさんに鎧海老の解体のやり方の説明をするって言っていた事も話したんだ。なのでその際にはぜひご一緒させてくれとさ。では、商人ギルドのホークシーにも連絡を取って早々に場所を確保するから。準備が出来たら宿に連絡するよ」
「了解です。ええと、俺達は今から朝市に顔を出して屋台で食事をしてきます」
笑った俺の返事に、ヴォイスさんも笑顔になる。
「おう、この時間なら夜明け前に戻った船から揚げた鎧海老の第一弾が、そろそろ店に並ぶ頃合いだな。まあ、楽しみにしているといい。ケンさんがデカいと言って驚いていたあの海老が小さく見えるぞ」
笑って腕を大きく広げて丸くするヴォイスさんの言葉に、ちょっとビビった俺だったよ。
ええ、鎧海老って、単にデカいだけの伊勢海老っぽいのを想像していたけど、違うんだろうか?
笑顔のヴォイスさんに見送られた俺は、鎧海老について考えつつハスフェル達の後ろを歩いていたので、周りをよくみていなかった。
そのおかげで、到着した朝市の屋台にドドンと並べられていた丸ごとの鎧海老を見て、本気で驚いて悲鳴を上げる事になったのだった。
何あれ、マジで怪獣だぞ!?




