それぞれの役割
「いやあ、どれも美味かったよ」
「本当に予想以上だったな。俺はあのたこ焼きってのが気に入った。あれは間違いなく酒が美味くなるメニューだな」
用意した分をかけらも残さず綺麗に平らげたハスフェルとギイが、頷き合いながら感想を言い合っている。
オンハルトの爺さんも、もちろん山盛りの新作料理を綺麗に平らげた後は、満足気に赤ワインを満喫中だ。
「気に入ってもらえたみたいで俺も嬉しいよ。例の鎧海老が入荷したら、また何か作ってみるから楽しみにしていてくれよな」
「「「お願いします!」」」
綺麗に三人の返事が重なり、全員揃って思いっきり吹き出したのだった。
「それで、今日の狩りの成果は?」
甘えてくるマニとニニを交互に撫でてやりつつ、イカ焼きをつまみに赤ワインを飲んでいるハスフェル達を振り返る。
ちなみに俺が飲んでいるのはそれほど強くない吟醸酒で、つまみはもちろんイカ焼きだ。
「それなんだがな。ちょっとこの辺りの地脈の吹き出し口の回復具合が他の地域よりも遅いみたいなんだ。まだ詰まったままの吹き出し口が複数確認された。確かにこれでは、この地域のジェムが不足するのも当然だろう。みかねたベリーがケンタウロス達に連絡を取ってくれて、彼らがこの地域一体の吹き出し口を一通り確認してくれるそうだ。ケンタウロス達の持つ術で吹き出し口を浄化して貰えば、恐らくだがある程度までは回復する場合もあるからな」
ちょっと心配そうなその口調に、思わずマニを撫でていた手が止まる。
「ええと、それって問題無いのか?」
「問題が有るか無いかで言えば、大問題だよ。だがまあ、地脈の吹き出し口の動向そのものは自然現象だから、基本的にシャムエルも手出しが出来ない。だが、言ったようにケンタウロス達なら、ある程度の手出しは可能なんだよ」
その辺りの仕組みや事情については全く無知な俺は、そうですかと頷くしかない。
「とりあえず、俺達もその辺りの確認作業に同行するから、しばらくは日中は毎日出かけるよ。すまんが、ジェムモンスターの数の確認をする際には手が欲しいんで、ケンの従魔達も借りて行っていいか」
「おう、もちろん連れて行ってくれていいぞ。そっちは俺では役に立たないだろうから、全面的にお任せするよ。じゃあ俺はまた留守番して料理かな。この新作料理や寿司の作り方を教えてくれって、商人ギルドマスターにお願いされているしさ」
「そうなのか。じゃあそっちはケンに任せておくよ。新作料理を楽しみに、俺達は自分の仕事をするとしよう」
苦笑いしたハスフェルの言葉に、ギイとオンハルトの爺さんも苦笑いしつつ頷いている。
「あ、それなら、万一帰れなかった時の為に、弁当も渡しておこうか?」
「「「お願いします!」」」
またしても即座に返ってくる綺麗に揃った三人の返事。
笑った俺は、サクラが出してくれた作り置きの弁当を三人にまとめて渡したのだった。
うん、手持ちの在庫がかなり減ったので、俺はまたひたすら料理三昧だな。
グラスに残った吟醸酒を味わいながら、何から作るか考えながら思わず小さく吹き出した俺だったよ。
そうだな。とりあえず自分に出来る事からするべきだよな。うん適材適所だ。
適当なところでお開きになり、それぞれの従魔達を引き連れて部屋に戻る三人を見送る。
「ええと、果物は要る?」
振り返ったところにベリーやフランマ、それからカリディアが揃っているのに気づいて慌ててそう声をかける。
「大丈夫ですよ。手持ちの、飛び地の果物を皆と一緒にいただきましたから。私達も、明日以降も彼らと一緒に出掛けますので、留守番をお願いしますね」
「お、おう。よろしくお願いします。そっち方面では、俺は全くの訳立たずだからな」
苦笑いしつつそう言って頭を下げると、ふわりと飛んできたシャムエル様に何故か頭を撫でられた。
「そこは適材適所だから、別にケンが負い目を感じる必要は無いよ。これは本来の彼らやケンタウロス達の役目だからね」
笑ったシャムエル様にそう言われて、とりあえず納得した事にしておく。
「おう、じゃあ俺はとりあえずまた料理をするよ。この仲間達の中での俺の役割は、どう考えてもこれだからな」
イカ焼きを食べた後のお皿をスライムに渡してやりつつ、一口だけ残っていた吟醸酒をぐいっと飲み干す。
「鎧海老が届けば、また新作料理だね! ううん、楽しみだなあ〜〜〜」
ご機嫌な様子でそう言い、綺麗になって積み上げられたお皿の山の横で軽快なステップを踏み始めるシャムエル様。
「鎧海老は、俺も楽しみだよ。でも、ギルドマスターが言っていた、鎧海老を解体するのは格闘だって言っていたアレ。かなり気になるんだけど、どうなんだろうな。まあ、今は考えても答えは出ないから考えても仕方がないんだけどさ」
最後は小さくそう呟いて、とりあえず答えの出ない疑問は、全部まとめてふんじばって明後日の方向へ蹴り飛ばしておく。まあ、これは後で拾いに行くけどさ。
「よし、じゃあ片付けたら明日に備えて寝るか」
「はあい、もう終わりま〜〜す!」
俺の声に、スライム達の元気な返事が返る。
あっという間に片付いていく机の上を見て、笑ってサクラを撫でてやった俺だったよ。




