新作料理は大好評!
「ただいま!」
「腹減りました!」
「新作料理〜〜〜!」
子供みたいに目を輝かせたハスフェル達三人が、そう言いながら部屋に飛び込んでくる。
おう、いつもは従魔達が先陣切って飛び込んでくるんだけど、今日は食欲が勝ったみたいだ。
「あはは、おかえり〜〜。もう準備万端だぞ〜〜!」
笑ってそう言い、ハスフェル達に続いて飛び込んできたマックスとニニに思いっきり押し倒される俺。
「わかったわかった。嬉しいのはわかったからちょっと落ち着けお前らは」
仰向けに押し倒されて思いっきり覆い被さられた俺の背中は、一瞬で跳ね飛んできたスライム達がしっかりと受け止めてくれているので怪我をする心配はない。とはいえ、大興奮状態のマックスにベロベロ舐められて、もう俺は全身びちゃびちゃだ。
「だから落ち着けって! ステイだステイ!」
マックスの鼻先を両手で押さえつけながら、腹に力を込めて大声でそう言ってやる。
我に返ったマックスが即座に下がって良い子座りになる。
しかし、ステイが効くのは残念ながらマックスだけ。
当然の様に空いた場所にマニとカッツェが飛びかかってきて、もう俺の周りはただただもふもふの海……。
そして、時間差で飛びついてくるビアンカと巨大化した狼コンビ。
結局またしても全身ベロベロに舐めまくられて、俺は情けない悲鳴をあげる羽目になったのだった。
「はあ、冗談抜きで死ぬかと思った。ありがとうな」
最後は見かねたハスフェルが、俺の襟首を引っ掴んでもふもふの海から引き摺り出してくれて助かったよ。まあ、その際に、鎖帷子のせいで思いっきり首が締まってしまい、こっちはこっちで物理的に死にそうになったんだけどね。
「相変わらずだなあ。それより腹が減ったんだけど……おお、これはまた素晴らしい!」
笑ったハスフェルが俺を解放してくれて、机の上を見て目を輝かせる。
「おう、バッチリ準備してあるよ。俺も腹減ったから食おうぜ」
「「「よろしくお願いします!」」」
目を輝かせた三人の声が重なり、俺も笑いながら立ち上がって自分の席に座る。
「ええと、これが新作の海鮮丼。新しく仕入れた海老だけじゃあなくてイカやタコなんかも入ってるぞ。このわさび醤油をかけてどうぞ。こっちは単品の海鮮丼。気に入った具材があればどうぞ。それから、こっちは屋台で買ったイカ焼きとイカ飯。でもって、これはあのデカい海老のバター焼きだよ」
お皿ごとに違う味の種類も説明していく。
「それからこれはデカい海老のフライ。まあ、一枚食ったら俺なら満腹確定だけど、お前らなら大丈夫だよな。これは、タルタルソースと一緒にどうぞ」
後から取り出したタルタルソースのお皿を横に置いてやる。
「それで、これはいったい何だ?」
真顔になったハスフェルの言葉に思わず吹き出す俺。
三人の視線は、山盛りのたこ焼きに注がれている。
「これはたこ焼き。ええと、俺の元いた世界では定番の料理だよ。溶いた小麦粉の中にタコやいろんな具材を入れて、こんな鉄板で丸く焼くんだ。これ、面白いから今度皆でやってみよう」
笑いながら、そう言ってあのたこ焼き用の鉄板を一つ取り出して見せてやる。
「ああ、これってたまに屋台で売っているこんな感じの甘いやつを焼く用の鉄板だよな」
「へえ、こんなサイズのもあるんだ」
一口カステラみたいなアレをどうやら知っていたらしいハスフェルとギイが、笑いながらそう言って鉄板を突っつく。
「おう、その甘いのを売っていた屋台の店主に聞いて、鉄板を売っているお店を教えてもらってわざわざ買いに行ったんだよ。ちなみに甘いやつってこれだよな?」
笑いながら、あの一口カステラもどきを取り出す。
「ああ、それそれ。特別好きってわけではないんだが、たまに無性に食いたくなるんだよな」
笑ったハスフェルの言葉に、ギイも笑いながら頷いている。
彼らは酒飲みだけど甘い物も大好きだからな。
「じゃあこれも出しておいてやるよ。まとめ買いしてあるし、これは俺も食える貴重な甘い物だからな。皆も好きなら、また買っておくよ」
「ああ、よろしく頼むよ。では、そのたこ焼きとやらをいただいてみるか」
興味津々なギイが、お皿にフォークでたこ焼きをすくって取り分けていく。
「あ、ちなみに皿ごとに具材が違うからな。これとこれがタコで、こっちはホタテ、それでこれが海老でこっちはソーセージとかハムだよ」
「了解だ。では、いただきます!」
お皿にたこ焼きを山盛りに取ったギイが満面の笑みでそう言って手を合わせてから、フォークでブッ刺したたこ焼きを一口でいった。
あ、それは思いっきり駄目なやつだぞ。
たこ焼きはどれも焼き立てをそのまま収納してあったから、熱々なのに……。
「熱っ!」
予想通りの悲鳴を上げて、速攻で冷えたビールを取り出して一瞬で栓を抜き一気飲みするギイを見て、ハスフェルとオンハルトの爺さんが揃って吹き出している。
「熱いから気をつけてって言おうとしたところだったのになあ」
わざとらしくそう言った俺の言葉に、もう一回ハスフェルとオンハルトの爺さんが揃って吹き出し顔を見合わせて大爆笑になった。
「じゃあ、昼にも供えたけど、一通りお供えしておくか」
笑ってそう呟き、俺もお皿を取り出して新作料理を取り分けていく。
シャムエル様が海鮮丼の横で大興奮状態でステップを踏んでいたので、苦笑いして海鮮丼も取り、一通りのメニューをスライム達が用意してくれたいつもの簡易祭壇に並べる。
あ、これに冷えたビールは絶対に必要だよな。
手持ちから白と黒の冷えたビールを取り出してグラスと一緒に並べてからそっと手を合わせた。
「ええ、新作料理色々です。たこ焼きは熱いので気をつけて食べてください」
いつもの収めの手が現れて何度も俺の頭を撫でてくれてから、順番に料理を撫でてはお皿を持ち上げて消えていった。
「喜んでいたな」
手だけなのに相変わらずはしゃいでいるのが分かるって面白い。
そんな事を考えつつ、とりあえず席にお皿を戻してから座る。
「ああ、待っていてくれたのか。ありがとうな」
ギイがたこ焼きを一つ摘んだだけで、そのまま待っていてくれた三人に笑ってお礼を言い改めて手を合わせていただきますをしてから俺も食べ始めた。
「おお、このバター焼きはどれも美味いな」
「この、大判エビフライも美味いぞ。この白いソースとの相性も抜群だ」
「この、イカ飯というのはなんとも面白いな。だが美味い!」
オンハルトの爺さんは、イカ飯が気に入ったらしく、一切れ食べた後は、目を輝かせて大きいのを丸ごと一匹分確保して嬉しそうに食べている。
「それにしても、熱いがこれは美味いな」
「確かに熱いが、これは冷えると絶対に味が落ちるやつだよな。うん、これは冷えたビールと一緒にいただくのが正解だな」
海鮮丼と一緒にエビフライとバター焼きを早々に平らげたハスフェルとギイは、熱い熱いと言いつつも嬉しそうにたこ焼きを爆食中だ。
どうやら新作メニューはどれも大好評のようで、安堵のため息を吐いた俺も熱々のたこ焼きを口に放り込んだのだった。
「熱っ!」




