追加の料理とおかえり
「それじゃあ、失礼しますね。お疲れ様でした」
臨時の試食会も終わり綺麗に片付いたところで笑顔のスタッフさん達に見送られた俺は、笑顔でそう言って冒険者ギルドを後に宿泊所へ戻った。
『おおい、今何をしている?』
ちょうど部屋に戻って一息ついたタイミングでハスフェルから念話が届いた。もちろんトークルーム全開状態だよ。
『おう、お疲れさん。今冒険者ギルドから戻ったところだ。がっつりジェムを引き渡してきたよ』
ソファーに座った俺の返事に、ハスフェル達も笑う気配が届く。
『おう、お疲れさん。もう少ししたら戻れるんだが、とにかく腹が減ってな。そっちはどんな感じだ?』
『もしかして、何か新作の料理があるかと楽しみにしていたんだけどな』
『買い出しの成果は?』
三人からのめっちゃ期待のこもった言葉に、思わず吹き出す俺。
『おう、色々仕入れてきたぞ。だけど新作料理を作った後は、言ったようにジェムの引き渡しに時間がかかったからさ。結局、今日は午後からの市場には行けなかったんだ。だから、残念ながら鎧海老は、まだ手に入っていないよ』
『おう、それは残念だ』
『でも、新作料理があるのか?』
『それは楽しみだな』
鎧海老がまだ手に入っていないと聞いて残念そうなハスフェルの言葉に被せるように、新作料理があると聞いて嬉しい声をあげるギイとオンハルトの爺さん。
『あはは。そっちは期待してくれていいぞ〜〜』
ちょっと胸を張りつつそう答えると、三人揃った歓声が聞こえてもう堪えきれずに吹き出した俺だったよ。
『じゃあ、気をつけて帰ってきてくれよな』
笑った返事と共にトークルームが閉じられる。
「さてと、腹減り小僧達が帰ってくるまでに、もう少し何か用意出来るかな?」
そう呟いて、部屋に併設されたキッチンへ向かう。
「昨日は海老しゃぶだったんだよな。まあ、あの海鮮丼とたこ焼きがあればもういい気がするけど、あいつらならもうちょいボリュームのあるメニューを欲しがるだろうから、他に何か……」
そう呟きながら、足元にいたサクラを抱き上げて作業台の上に乗せてやる。
「ご主人、何を出しますか?」
部屋に戻ったところで解散して、ソフトボールからバレーボールサイズになって好き勝手に床に転がってたスライム達が、その声を聞いて一斉に集まってくる。
もうやる気満々。キラッキラに目を輝かせている。まあ、スライム達に目はないんだけどね。
「じゃあ、あのでかいエビのぶつ切りでバター焼きを作ってみるか。あ、そうだ。あのぶつ切りで海老カツとかどうだ? 絶対美味いと思うから、それもやってみるか」
にんまりと笑った俺は、待ち構えているスライム達に次々に指示を出し、揚げ物準備を整えてもらった。
その間に、俺はフライパンを取り出して並べ、同じくやや薄めのぶつ切りにした巨大海老の身をバター焼きにしていった。
味もレモンバターとバター醤油、それからハーブを効かせたのとニンニクバターのも作ってみた。
出来たそれは大皿に山盛りにしてからサクラに収納してもらい、一番大きなフライパンにたっぷりの菜種油と胡麻油を入れて加熱しておく。
油が温まったら、スライム達が用意してくれたぶつ切り巨大エビのエビフライも揚げていく。
「ううん、これは絶対、間違いなく美味いやつだろうけど、俺はこれ一個食べたらもうそれだけで他は食えないな」
巨大な円盤状になったそのエビフライを見て、もう笑いしか出ない。
「ってか、これは絶対にエビフライの形じゃあないよな」
何故か円盤状のそれがツボにハマってしまい、後半はもう声を上げて笑いながら揚げ物をする変なやつになっていたのだった。
『おおい、もう間も無く街へ到着するぞ〜〜』
『腹が減ったよ〜〜〜』
一通りの揚げ物が終わり、後片付けをしていたところでタイミングよくハスフェル達からの念話が届いた。
『おう、おかえり〜〜〜。準備万端整っているから、早く帰っておいで〜〜』
笑いながらそう返してやると、うれしい悲鳴と共にすぐに帰ると返事が返ってきた。
「あはは、じゃあ期待されているみたいだし、先に準備しておいてやるか」
笑いながらそう呟き、ひとまず部屋に戻る。
後片付けを終えたスライム達が次々に跳ね飛んでついてくる。
「じゃあ、とりあえず、海鮮丼は一通り人数分出しておいてやるか。足りなければまた出せばいいな」
「はあい、じゃあこれだね!」
机の上に跳ね飛んで上がってきたサクラが、俺の呟きを聞いてまずは山盛りに具が積み上がった海鮮丼を四つと、ネタごとに作ったさっきのよりも小ぶりな海鮮丼も四つずつ取り出して並べてくれた。
「それからたこ焼き各種と、後はさっき作ったバター焼きとエビフライ。それから屋台で買ったイカ飯とかイカ焼きも出しておくか」
「はあい、じゃあ順番に出しま〜〜す!」
俺の呟きを聞いたサクラがまた張り切ってそう言い、順番に取り出して並べてくれる。
「一応、握り寿司と巻き寿司も並べておくか。え? もうこれだけしかないの?」
サクラが出してくれた握り寿司と巻き寿司を見て思わずそう尋ねる。
「あ、そうか。さっきの試食会でかなり出しちゃったもんな。それなら明日はこの辺りの作り置きからだな」
苦笑いしてそう呟き、サクラが取り出してくれた食器やカトラリーなども並んだ机の上を見る。
「じゃあ後は、味噌汁とかコンソメスープ、あとはサラダ各種とお惣菜辺りも一通り頼むよ。それから、あいつらなら食いそうだから、ご飯とパンも一応出しておくか」
俺の言葉を聞いて、次々に取り出してくれるサクラをそっと撫でた俺は、これまたタイミングよくノックの音が聞こえて、笑いながら扉を開けてやったのだった。
さて、新作料理の反応やいかに?




