料理講習会の依頼とメタルスライムのジェム
「ええ、なんだこれ〜〜!」
「めちゃくちゃ美味いんだけど〜〜!」
「ああ、どうして今までこれを思いつかなかったんだ!」
「生の魚がこんなに美味いなんて、俺、生まれて初めて知ったよ!」
握り寿司や巻き寿司、それからお刺身を食べたスタッフさん達も、満面の笑みになって口々にそう言ってくれた。
「あ、ちなみにこんなのもありますよ。海鮮丼です。そっちの握り寿司や巻き寿司は酢飯ですが、こっちは普通の熱々ご飯です。ワサビ醤油をかけてどうぞ」
にっこり笑って取り出したのは、さっき作ったばかりの海鮮丼だ。
もちろんこれは、いろんな具材をこれでもかと言わんばかりに山盛りにしたバージョンだよ。
「うおお、それは間違いなく美味いやつ〜〜〜!」
スタッフさん達とギルドマスター達の悲鳴が重なる。
山盛りの海鮮丼は、一瞬で寄ってたかって駆逐されてしまい、追加を出した俺だったよ。
「ケンさん! 冒険者ギルドに指名依頼を出すから、料理講習会をしてくれ! 頼む!」
商人ギルドマスターのホークシーさんに拝み倒さんばかりに両手を握りしめてそう言われて、思いっきり吹き出す俺。
「もちろん、こんなので良ければいくらでもお教えしますよ。あ、この大トロとかサーモンは、以前ハンプールにいた時に、大雨の後に出現する泥沼で釣りをした時の魚なんですけど、こっちの海では……?」
「もちろん、外海に近い部分で大きいのが釣れるぞ。マグロやサーモンなんかは定番だな。見たところ、これくらいの具材ならほぼ全てうちの港で賄えるものばかりだ。これに鎧海老が加わればどれだけ美味いか……ああ、考えただけで涎が出るよ」
「だよなあ。あの鎧海老を刺身で食ったら、どれだけ美味い事か……」
「ああ、船が戻るのが待ち遠しい……」
うっとりとそう呟くギルドマスター達を見て、スタッフさん達も全力で同意するかのようにもの凄い勢いで頷いている。
「では、生の魚のおいしさを知っていただいたところで、今日は解散でいいですかね。料理講習会は、言ってくださればいつでもしますので」
「おう、冗談抜きで早々に頼むよ。でもまあ、せっかくだから鎧海老が入荷したら捌き方を教えるからケンさんもやってみるといい。あれは本当に格闘だからな」
「ええ、そうなんですか。じゃあそっちは是非とも詳しく捌き方を教えてください」
かなり不穏なセリフにビビりつつ、誤魔化すように笑って空になったお皿をスライム達に片付けてもらう。
「ええ、スライムが皿を食っているぞ!」
「ええ、あれは駄目ですよね? でも、ケンさんは笑って見ていますよ?」
ヴォイスさんとホークシーさんが顔を寄せてそう言いながら、お皿を綺麗にするスライム達をガン見している。
「ちょっと待て。それよりあの銀色やら金属っぽいスライムは一体何だ? あんなスライムは初めて見るぞ」
ここでヴォイスさんがいきなり真顔になる。
ガン見しているのは、手分けしてお皿を綺麗にしているメタルスライム達だ。
「ああ、この子達はメタルスライムですよ」
「メタルスライムだと!」
もの凄い勢いでこっちを振り返ったヴォイスさんの叫び声に、他のギルドマスター達も一斉にメタルスライム達を見る。
「ええ、カルーシュ山脈の奥地にメタルスライムが出現する場所を発見したんです。ハンプールの冒険者ギルドには届けてありますので、何なら問い合わせてみてください。新人にはちょっと難しい場所ですが、それなりに経験のある上位冒険者なら行ける場所ですから。まあそこへ行けば、テイマーや魔獣使いなら誰でもメタルスライムをテイム出来ますし、普通に狩る事も出来ますよ。あ、ちなみにメタルスライムのジェムはこんな感じでラメ入りなんですよね」
笑って、一瞬で鞄に入ってくれたアクアからメタルスライムのジェムを取り出して見せる。
そう、メタルスライムのジェムは珍しいラメ入りジェムなんだよね。これは完全に観賞用としての需要に偏っていたので、ここでは出していなかったジェムだ。
「おお、これはまた美しいな。だが、これは燃料として使うよりも王都の貴族の屋敷で観賞用のケースに入れて飾られる方が似合いだな」
苦笑いしたヴォイスさんの言葉に、俺も笑って頷く。
「これもたくさんありますので、必要ならお売りしますけど、いいですか?」
「いや、遠慮しておくよ。ここでは売り先が無いからな。だが、せっかくなので一つだけ売ってくれるか。ギルドに飾っておくよ」
「それなら、商人ギルドでも飾りたいので百個ほど売ってください! それにこれは、外部の商人達とのちょっとした面倒な取引の際に、交渉ネタとして使えそうですので!」
最後は商人の本音ダダ漏れな商人ギルドマスターのホークシーさんの叫ぶ声に、部屋は大爆笑になったのだった。




