大量のジェムを引き渡すぞ!
「おう、来てくれたか。忙しいところをすまんな」
冒険者ギルドの建物に入ったところで、カウンターの中にいたギルドマスターのヴォイスさんが俺に気付いて満面の笑みで出てきてくれた。
「はい、買い取りの数が決まったとの事ですので、来ました。有りったけご用意させてもらいますよ」
「おお、よろしく頼むよ。それじゃあ奥へ行こうか」
そう言って笑顔のヴォイスさんに案内されたのは、前回と同じ一階の会議室みたいな何もない部屋……のはずだったんだけど、驚くくらいに前回とは全く様子が異なっていた。
まず、部屋の広さそのものが、何故か前回の三倍くらいある。
これは、前回は気が付かなかったけれどこの会議室左右の壁が可動式になっていたらしく、それが全部開け放たれて両隣にもあった会議室三つ分が一体化していたのだ。
でもって広くなったスペースには、やる気満々なスタッフさん達が勢揃いして待ち構えていたのだ。
まず真ん中の部屋にはジェム取り出し用なのだろう、会議机が幾つもくっつけて大きく並べられている。
そしてその左右にはジェム運び用の台車や猫車は言うに及ばず、大きなトレーはそれこそ会議机の上に見上げんばかりにうず高く積み上げられているし、控えの明細を取る為なのだろう画板のような大きな板と万年筆を手にしたスタッフさん達や、鑑定の為の虫眼鏡や何かよく分からない道具を持った人達も大勢いる。
もう、部屋中がやる気に満ちあふれている。
「その前に紹介しておくよ。商人ギルドマスターのホークシーと、船舶ギルドマスターのヨナス、それからドワーフギルドマスターのティームだ。今回は、ギルド連合からの買い取りとさせてもらう。改めてよろしく頼む」
「ケンです。よろしくお願いします」
一番前にいた四人が進み出てきてくれたので、笑顔で挨拶を交わす。
全員が、働き者の証であるなんとも頼もしい分厚い手をしていた。
やや細身の男性ホークシーさんと、間違いなく元漁師さんだろう大柄で筋骨隆々なヨナスさん。ううん、ヨナスさんとヴォイスさんと並ぶと、何というか圧が凄い。
逆にドワーフギルドマスターのティームさんは小柄で、ドワーフにしてはやや細身なくらいだ。まあ、そうは言っても俺に比べれば遥かに筋骨隆々なんだけどね。
「これが注文書だ。それから、この見本は一旦お返ししておく。念の為確認をお願いするよ」
別の場所に箱ごとに並べられたサンプルを見て預かり票を取り出した俺は、駆け寄ってきたスタッフさん達と一緒に確認をしながら一旦全部収納した。
もちろん、鞄の中に入ったサクラが即座に整理して在庫に戻してくれているよ。
「おお、これはなかなかに頑張りましたね。もちろん数は大丈夫だと思いますので、じゃあ出していきますね」
渡された注文書には、高価なジェムは数が少ないものの一割引のジェムは数万個単位の数が書かれていてちょっと感心した。
この街では、贅沢品である装飾用や高価な武器の為のジェムや素材よりも、一般に流通する価格が安めのジェムが何よりも最優先されるのだという気概のようなものさえ感じられたからだ。
「では、出していきますね」
サクラの入った鞄を左手に、そして鞄に右手を突っ込んだ俺は、注文書を読み上げてはジェムをガンガンと会議机の上に遠慮なく取り出して行ったのだった。
当然のように、集まったスタッフさん達の手により即座に整理されてトレーに並べられたジェムは、すぐに台車に載せて待ち構えた別のスタッフさん達の元へ運ばれ、すぐに明細が書きとられていく。
それが終われば、木箱に詰めて部屋の外へと運び出されていく。
まあ見事なまでの流れ作業。どこも滞る事なくスルスルとジェムが運ばれて行く。
あまりの手際の良さに割と本気で感心しつつ、二枚目の注文書を読み上げ始めた俺だったよ。
「次は大きなジェムになりますので、直接ここにお願いします!」
俺が注文書を読み上げたところで、満面の笑みのスタッフさんが俺の横に猫車を運んできて置いてくれる。
「了解です。じゃあ出していきますよ!」
笑った俺も、言われた通りに猫車に大きなジェムを取り出していった。
「あ、ちょっと置きにくいですね。渡していただけばこちらで積みます!」
すぐに山盛りになってしまい、適当に上に置いたジェムが転がり落ちそうになって、慌てて受け止めた俺を見たスタッフさんが、即座にそう言ってくれて横に並んでくれたので、あとはそのスタッフさんと声を聞いて即座に応援に来てくれた他のスタッフさん達が協力して、俺の手から直接ジェムを受け取り綺麗に積んでくれた。
そのおかげで、もう俺はただただジェムを取り出して渡すだけで済んだよ。
いやあ、なんというか会場内の一体感が半端ない。
「あ、これが最後の一枚だ!」
注文書をめくった俺の言葉に会場内がどよめく。
「じゃあ、出していきますよ〜〜〜!」
注文書に書かれた万単位の数を見て笑った俺が確認しながら次々に取り出すジェムを、歓声を上げたスタッフさん達が即座に整理してくれる。
最後の一つを取り出した時にはもう部屋中が拍手大喝采になり、最後の箱が運び出されるのを見送ったあとで、俺も一緒になって部屋にいたスタッフさん達と、満面の笑みでハイタッチをしまくったのだった。
いやあ、お疲れ様でした!




