たこ焼きの準備と試作の開始!
「よし、生地は俺が作るから、その間に具材を準備してくれるか」
取り出したメモに必死で思い出したたこ焼きのレシピを書き出した俺は、そのままキッチンへ移動して待ち構えているスライム達を見てそう言った。
「はあい! やるやる!」
やる気満々なスライム達の声に笑った俺は、まずはサクラにお願いして一通りの具材を取り出してもらった。
「このネギはいつも通りにみじん切りな。ちくわは、細長く四つ切りにしてからこんな感じに刻んでくれるか。このソーセージも、こんな感じに細かく切っておいてくれ。こんにゃくは、あとで味を付けるからこんな感じに細かく刻んでおいてくれるかな。あと、このチーズとお餅もこれくらいに小さく角切りで頼むよ。それでこれがメインのタコ。これはこれくらいの大きさの角切りで頼むよ。あとこのホタテの貝柱と雑魚海老も、同じくらいの大きさの角切りにしておいてくれるかな。あ、この紅生姜はみじん切りでよろしく!」
一通りの具材を取り出して並べてから、説明しながら俺が見本を切ってお願いしておく。
「はあい、じゃあやりま〜〜す!」
張り切った声の後、何匹かずつ合体してから次々に具材を飲み込み始めた。
「じゃあ具材の準備はよろしくな。あ、切った具材は混ぜずにそれぞれ別の器に入れておいてくれよな」
「はあい、了解で〜〜す!」
これまた張り切った返事が返り、俺は笑って一番大きなボウルを手にした。
サクラには、まだ追加の材料や道具を出してもらわないといけないので、そのまま作業台の上にいてもらう。
「ええと、まずはここにたっぷりの小麦粉を入れて、そこに冷たくした二番出汁を入れて泡立て器で混ぜる。ある程度混ざったところで溶き卵を入れてさらに混ぜる。ダマが無くなるまでしっかり混ぜたら、ここに醤油と塩を入れて生地は出来上がり。おおい、誰かこれ、一日分の時間経過を頼むよ」
「はあい、もらいま〜〜す!」
すぐ側にいたスライム達からアルファが出てきてくれたので、ボウルごと渡しておく。
「せっかくだから、たっぷり作っておくか」
さっきの分量だと、数回作れば無くなってしまう。
人数が減ったとはいっても大食漢なあいつらの顔を思い出した俺は、小さく笑って一番大きなボウルをサクラに出してもらい、追加の生地をガッツリ用意したのだった。
生地作りが終わったところで、刻んでもらったこんにゃくを片手鍋にまとめて入れて、お水少々に砂糖と醤油とお酒とみりんで濃いめの味付けにして軽く煮立たせる。焦がさないように気をつけつつ、汁が無くなる直前まで煮込めば、味付きこんにゃくの完成だ。
これは元はダイエットメニューだけど、食感が楽しいから普通に具材として入れるよ。
「さてと、あとは天かすだな。これは作り置きがないから作らないと駄目だな」
天ぷらはあまり作らないから、天かすって案外ないんだよ。
苦笑いして小さくそう呟いた俺は、一番大きなフライパンにいつもより少なめに菜種油を入れて火にかけておく。
そしてボウルに小麦粉と水を入れてとろめの生地を作り、油が温まったところでお箸を使って生地を油の中に跳ね飛ばすようにして入れていき、小さめの金属製のザルで手早くすくっていった。これで油を切れば、天かすの出来上がりだ。
天かすが山盛りに出来上がれば、具材の準備は完成だ。
「ええと……早く焼きたいけど、その前に鉄板の下準備からだな。新品をそのまま使うと、絶対焦げてぐちゃぐちゃになるって」
笑ってそう呟いた俺は、まず取り出してジェムを入れた大型コンロに、たこ焼き器をセットしてから火をつけた。
それから取り出した小皿に綺麗な布を小さく切って入れて、これに油をたっぷりと染み込ませる。
たこ焼き器が温まってきたところで弱火にしてから、お箸で油を吸った布をつまみ、とにかく丸い穴の並んだ鉄板全体に油を塗り広げていく。
この状態で少し煙が出るくらいまで温めたら一旦火を止め、今度は乾いた綺麗な布で鉄板をこすって余分な油を拭き取る。
これを数回繰り返せば、鉄板全体に油が馴染んで良い感じになった。これで焦げ付かなくなったはずだ。
「よし、良い感じになったところで、一度作ってみようか」
綺麗に準備された具材の数々を見てにんまりと笑った俺は、時間経過の終わった生地の入ったボウルを取り出す。
「このままだと入れにくいな。じゃあこれを使うか」
小さめの片手鍋を用意しておたまでたっぷりとすくい入れてから、改めてコンロに火を入れる。
「よし、この穴に一つずつ具材を入れていくぞ」
そう言って、まずはメインのタコと味付きこんにゃくを一つずつ穴に入れていく。最初だし、今回は全部タコで作るよ。
しっかりと鉄板が温まってタコがチリチリと音を立て始めたところで、片手鍋から生地を流し入れる。
少し控えめに生地を流し入れたら、ネギとちくわ、それからたっぷりの天かすを全体に入れ、ついでに紅生姜も全体に回し入れてから、量を見て足りないところへ生地を追加で入れていく。
ここで、たこ焼き器と一緒に購入したたこ焼き用ピックを取り出す。ここからが楽しいたこ焼きタイムだ。
「少し焼けるまで待って、穴の周りをピックを使って切っていくっと。でもって、くるっと回して半回転させる!」
若干潰れたが、案外綺麗にひっくり返って思わず笑顔になる。
「へえ、面白い事をするんだね」
俺の右肩に座って作業を見ていたシャムエル様が、不意にピックを持った腕の上に現れて興味津々でたこ焼き器を覗き込む。
「こんな感じで、少しずつひっくり返して丸くしていくんだよ。面白いだろう?」
笑いながらそう言い、手早く順番にひっくり返していく。
ここは、少しくらい潰れても気にしなくていい。火が通ると、ちゃんと形はまとまってくるからね。
「へえ、本当に丸くなったね。凄い凄い!」
しばらくせっせと転がしていると、見事に綺麗なまん丸になったたこ焼きが完成したよ。
「よし、成功だな。じゃあ味見をしないとな」
にんまりと笑った俺は、お皿を二つ取り出してきっちり半分ずつになるように数えて取り分けた。
「ソースは甘口のこれでいいな」
幾つか取り出したソースの中から、やや甘めの中濃ソースを手に取ると、お皿に取り分けたたこ焼きにたっぷりと回しかけた。
「あとはマヨネーズと鰹節の粉、それから細かくした青さ海苔を振りかければ完成だ!」
「わあい、美味しそう!」
俺の言葉に、ご機嫌なシャムエル様が飛び跳ねている。
「よし、まずはお供えだな」
小さく笑って、スライム達が用意してくれたいつもの簡易祭壇にお皿を並べる。
少し考えて、冷えた白ビールと黒ビールの瓶も一緒に並べておく。
何しろ、さっきから収めの手が現れて、大はしゃぎで俺の髪の毛を引っ張っていたんだからさ。
「新作の、たこ焼きです。中はとても熱いので気をつけてください。あとで、またタコとは違う具材でも作るので、そっちも楽しみにしていてください」
手を合わせてそう呟くと、収めの手が俺の頭を何度も撫でてくれた後に、たこ焼きを撫で回してからお皿を持ち上げ、ビール瓶も持ち上げる振りをしてから消えていった。
「無事に届いたみたいだな。よし、じゃあ食べよう!」
竹串を手にした俺の言葉に、もう一回ご機嫌で飛び跳ねたシャムエル様だったよ。




