昼は海鮮丼!
「沢山のお買い上げ、ありがとうございました! またいつでもお立ち寄りください!」
満面の笑みの店員さんに見送られて店を後にした俺は、その後も道具屋筋をゆっくりと見て周り、いくつか大きめのお皿や良さそうな鍋、それから調理器具や幾つかの道具を買い込んでから宿泊所に戻った。
「さて、じゃあ何からするかねえ」
部屋に戻って装備を外して身軽な格好になった俺は、腕まくりをしながらそう呟いた。
スライム達は、もうワクワクって感じで俺の周りでスタンバイしている。
「だけど、その前に昼飯だな。ええと……よし、海老とホタテにイカとタコまで手に入ったんだから、豪華海鮮丼でも作ってみるか。釣り大会で手に入れたサーモンやマグロなんかの刺身はまだまだあるもんな」
にんまりと笑った俺は、昨日の買い物で見つけた小さい方の、一応この世界では標準サイズらしい直径30センチ近くあるホタテ貝を取り出した。うん、これが標準サイズって時点で色々おかしいが、そこはスルーしておく。
そしてもう一つ取り出したのが、先ほどの道具屋筋で見つけたホタテ貝専用のコテみたいなナイフもどきだ。要するにこれを使えば、固く閉じたホタテ貝も簡単に開く事が出来るらしい。ってお店の人が言っていたので信じて使ってみるよ。
側にいたサクラに綺麗にしてもらってから、右手にコテもどき、左手にデカいホタテ貝を持つ。
ちなみに帆立貝は二枚貝だけど上下で形が違う。平らな貝と丸く膨らんだ貝があって丸いほうが上だ。
「ええと、まずこんな感じで下側になる平らな貝の方を上にして、こうやってこの貝殻の隙間からコテを入れて、中の真ん中あたりにある太い貝柱の根元を切って貝を開くんだ」
集まってきたスライム達に説明しながら実際にやって見せて、何とか頑張って貝柱を切って開く事に成功した。
上手く出来てよかった。さすがに、これを一からやるのは俺も初めてだよ。
「でもって、これがメインの貝柱だよ。この貝柱は、もう片方の貝からもコテで外してから集めておいてくれるか。逆にこの黒い部分は食べられないから取って捨てる部分だよ。あ、あとでまとめて食べちゃってくれていいからな。それ以外は、こんな風にバラして部位ごとにまとめておいてくれるか。こっちは生で食べるより加熱して食べるほうが美味しいから、後で別の料理に使うよ」
ホタテのヒモとか赤い部分とかは生でも食べられるって聞くけど、俺はバターで炒めたり干物にしたのが好きだから、そうやって食べる予定だ。あ、かなり大きいから見た目はちょっとグロテスクだけど、このヒモ部分とかなら燻製にしてもいいかも。貝柱の燻製とかイカの燻製とかも、絶対美味いやつじゃん。あとでオンハルトの爺さんに相談してみよう。
そんな事を考えつつ、俺が一つずつナイフの先で切り分けながら詳しく説明するのを、集まったスライム達はそれはそれは真剣な様子で聞き入っていたよ。
「わかった! じゃあちょっとやってみるね!」
アクアがそう言ったので手持ちのコテもどきを渡してやると、触手で受け取りそのまま体でホールドしたホタテ貝に器用にコテもどきをねじ込んだ。
「えっと、この辺りだね。あ、あった!」
少し戸惑うようにしていたが、不意にそう言うと一気にコテもどきを根元まで差し込んで動かした。
パカっと上手く開いたホタテ貝を見て、思わず拍手する俺。
「お見事。じゃあこれも渡すから手分けして下処理をお願い出来るかな」
そう言って、スライム達に使ってもらおうと思って買っておいたコテもどきをまとめて取り出して渡し、追加で買ってあった雑魚海老の下処理とホタテ貝の処理を全部まとめてお願いしておく。
「はあい、やりま〜〜す!」
アクアにくっついてもぐもぐしていたスライム達が、次々にそう言ってホタテ貝に集まっていった。
「じゃあ、よろしくな」
そう言った俺は、先程自分で開いたホタテの貝柱を手にした。
「ううん。かなりデカいホタテ貝だったから、貝柱もデカいとは思っていたけどここまでデカいとちょっと感動するな」
大きくて分厚い貝柱は、見るからにプリップリで美味しそうだけど、そのままではさすがにデカすぎる。厚みも直径も、ほぼ10センチ近くある。手の平からはみ出しそうなデカさだ。
「じゃあ横に半分に切るか。さすがにこのまま食うにはデカすぎるよ」
苦笑いしつつ包丁とまな板を取り出した俺は、とりあえず貝柱を水平に半分に切ってみた。それでもまだデカかったのでさらに縦にも半分に切り分けておいた。
それから、魚屋さんで下処理してもらった超デカい赤イカみたいなやつの身をやや分厚めの削ぎ切りにしておく。
雑魚海老は、尻尾だけ残した生食用のやつを用意しておく。茹でたタコは、とりあえずこれも削ぎ切りでいいな。
「じゃあ具材はこれくらいあればいいだろう。よし、盛り付けだ!」
綺麗な半月型になった貝柱や新ネタのイカやタコ、それから雑魚海老を見てにんまりと笑った俺は、まずは炊き立てご飯と刺身各種の並んだバットを一通りサクラに頼んで出してもらい、お椀に盛り付けた熱々のご飯の上に好きなだけお刺身を盛り付けて行った。
もちろん、俺の大好きなサーモンとマグロのトロは外せないよ。
「うおお、なんかめっちゃ豪華になったぞ。じゃあ後でこれもたくさん作り置きしておこう。あいつらも絶対これは喜ぶだろうからな」
文字通り具材が山盛りに積み上がった海鮮丼を見て笑み崩れた俺は、醤油とわさびを小皿に入れて軽く混ぜ合わせた。
「じゃあ、まずはお供えだな」
小さく笑ってそう呟き、手の空いたスライム達が速攻で準備してくれた簡易祭壇に、海鮮丼と醤油の小皿、それから少し考えて冷えた白ビールを一本だけ一緒に並べてお供えした。
「昼は、豪華海鮮丼です。このわさび醤油を具の上に回しかけてからご飯と一緒に食べてください。あ、もちろんお刺身だけ先に食べるのもありだよ」
手を合わせながら目を閉じてそう言うと、いつもの収めの手が現れて俺の頭を何度も撫でてから海鮮丼を嬉しそうに撫で回し、最後にお椀を持ち上げる振りをしてから消えていった。
「よし、じゃあ食べよう!」
消えていく収めの手を見送ってから、にんまり笑った俺はそう宣言してマイ箸を手にしたのだった。




