調理器具のまとめ買い!
「よし、イカ飯とイカの姿焼きも無事に買えた事だし、次に行こう。ええと、教えてもらった通りってここでいいんだよな」
思い出して戻り、イカ飯とイカ焼きをがっつり買い込んで大満足した俺は、キョロキョロと周囲を見回しながら良さそうな店があれば立ち寄って買い物しつつ歩き、無事に教えてもらった道具屋筋に到着した。
確かによく見るとその通りには、いかにも業務用って感じの大鍋や大皿などを積み上げたお店をはじめ、さまざまな道具を扱うお店が軒を連ねていた。
「おお、これは他にも何かよさそうなのがあったら買ってもいいかも!」
目を輝かせた俺は、いそいそとその通りに足を踏み入れたのだった。
「あ、鉄板発見! もしかして、有るかな〜〜」
早速鉄板や調理道具を売っている大きな店を見つけた俺は、ちょっとワクワクしつつそのお店の前で立ち止まり中に入ってみた。
「ああ! たこ焼き用の鉄板発見!」
しばらく無言で店の中を見ていたら、壁際に近い一角に見覚えのある丸い穴のある鉄板が見えて思わず駆け寄る。
「へえ、フライパンサイズもあるんだ。うん、こういうので良いんだよ」
手前の通路側に置かれていたのは、さっきのお店でも見たような、一度に百個以上は余裕で作れそうな縦長の鉄板を二つ合わせるタイプだったんだけど、壁面に引っ掛けて展示されていたのは、普通のコンロに置いて使えるフライパンタイプの取っ手のついた円形の鉄板で、直径は小さいので30センチほど、大きいのだと50センチ位。それでも穴の数はそれなりにあるので、これなら充分たこ焼き機として使えそうだ。
「いらっしゃいませ。そちらは一度に作れる数は少ないですが、通常のコンロでも使える丸型のケーキ焼き用鉄板です。こちらの金串を使っていただいて、完全に火が通る前にひっくり返していただきますと上手く円形になります。ですが少し練習が必要ですので、その点はご了承ください。丸型を簡単にお作りになりたければ、こちらの二枚合わせのタイプがおすすめです。鉄板のサイズに合わせた専用コンロもございますので、ご希望があれば紹介いたします」
俺がまじまじとたこ焼き用の鉄板を見ていたもんだから、店の奥から店員さんが出てきて満面の笑みで説明を始めてくれた。
壁面の引き出しを開けて見せてくれたそれは、細長い金串には木製の持ち手部分がついていて、そのまんまたこ焼き用のピックだったよ。
「ええと、コンロで使えるタイプのはここにあるだけですか?」
とりあえず、一番大きなサイズを指差しながらそう尋ねてみる。
「はい、サイズはこちらにあるだけになりますね。こちらが一番大きなサイズになります。数が必要でしたらもちろん在庫はございますので、必要数をお申し付けください」
ううん、これ一つだけだと一度に作れる数は限られるから、ハスフェル達の食べる量を考えたら出来れば数が欲しい。
「ええと、じゃあこの一番大きなサイズのを十個お願い出来ますか。あ、それとその金串も十本お願いします」
とりあえず十個くらいなら頑張ればコンロを並べて一気に焼けるだろう。まあ無理そうなら、数を減らせばいいだけだからな。
金串は、他にも使えそうなので予備を含めて多めに買っておく事にした。
「かしこまりました! では、すぐにご用意しますのでこちらへどうぞ」
笑顔でそう言った店員さんに案内されて、俺は店の奥へ向かった。
「ところでお客様、コンロはどのようなものをお使いでしょうか?」
店の奥に案内されてカウンターの前に座ったところで、先ほどの店員さんが笑顔でそう聞いてきた。
「ええ? 普通のコンロですけど?」
そう言って、鞄に入ったサクラから、いつも使っている簡易コンロを取り出して見せる。
その瞬間、店員さんが言いたい事が分かった。
あの一番大きな鉄板に満遍なく火を通そうとしたら、このコンロでは火が小さ過ぎるんだよ。
宿泊所に設置してあるコンロも、土台の大きさが違うだけでコンロの大きさなんてほぼ変わらない。
しかもこの鉄板自体かなりの重さがあるから、持ち上げて火の当たる位置をいちいち変えるのはかなり大変そうだ。
「ああ、そうか。この鉄板に使えるコンロが無いぞ」
頭を抱える俺を見て、これまた満面の笑みになる店員さん。
「お客様、それでしたらこちらの業務用のコンロをお勧めさせていただきます」
そう言って立ち上がると、先ほどとは別の通路を示した。
頷いて立ち上がった俺は、一旦マイコンロを収納してからその後について行った。
「おお、すげえ。デカいコンロだ!」
案内された先にあったのは、いかにも業務用って感じの大きなコンロで、火の出るリングが全部で三重になっている。外側のリングはかなり大きいから、これならあのデカい鉄板でも満遍なく火が当たりそうだ。
でも、宿泊所のキッチンの広さを考えると二台、頑張っても三台置くのが精一杯な気がする。
だけどこれって大物を調理する時や、バーベキューの時にも使えそうだ。
いざとなったら、郊外へ出てスライム達に草刈りをお願いすれば地面に置いても使えるサイズだ。
よし、買おう!
「あの! じゃあこれも十台お願いします!」
まさかの十台買います宣言に、一瞬驚いたように目を見開いた店員さんだったけど、すぐにまた満面の笑みになった。
「ありがとうございます。こちらは少々嵩張りますので配達も賜っておりますが、どちらへお届けさせていただけばよろしいでしょうか?」
「ああ、俺は収納の能力持ちなので、用意してくださればそのままいただきます。もしかして在庫は別の場所だったりしますか?」
この大きさだから、さすがに十台は無いかもしれない。それなら配達を頼むしかないかな?
そう思って聞いたんだけど、少し待って貰えばすぐに用意出来ると言われたのでお願いしておく。
「あの、もう少し見たいので!」
この際だから、大きめの鉄板なんかも欲しい。
あのデカいコンロがあれば、大きな鉄板も普段から使えそうだ。
嬉々として店内を見て回る俺の背後には、他の店員さんに鉄板とコンロの準備を任せた先程の店員さんが、これまた満面の笑みでついてきていたのだった。
飛び込みで来て、あれだけ一度にまとめて買ったらそりゃあ良客扱いしてもらえるよな。
もう笑いそうになるのを堪えつつ、大きめの鉄板もついでに注文した俺だったよ。
よし、これであの巨大車海老の姿焼きだって作れそうだ!
思わぬ調理器具の充実に、何から作ろうか考えてちょっと笑み崩れる俺だったよ。




