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自重って言葉の意味……知ってるか?

「ご馳走様でした!」

「おう、お粗末様……」

 満面の笑みの神様軍団にお皿を返してもらいながら、若干呆れたように俺は笑っていた。

 だってもう笑うしかないよ。

 女性陣二人も含めて全員、あの大盛りのカツ丼を見事にカケラも残さずぺろっと平らげたんだぞ。


 お前らやっぱり食う量がおかしい。初期設定値、絶対に間違ってるから訂正した方がいいと思うぞ。


 順番にサクラとアクアに手伝ってもらって手早く片付ける。

 ハスフェルとギイが勝手に酒を取り出して一杯飲み始めたので、俺の分も入れて貰って椅子に座った。

「さっき、ケンと話をしていたんだが、例の地下洞窟に行くのは、祭りが終わってからにしないか? 時間を気にしながら探検するのは面白くなかろう?」

 ハスフェルの言葉に、飲んでいたエリゴールが顔を上げた。

「確かにそうだな。じゃあ、それまでは言っていたようにジェムモンスター狩りか…ちょっとぐらいなら、珍しいのもあっていいだろう?」

「確かに。少しくらいなら、展示を兼ねた特別なジェムとかもあってもいいだろうからな」

 ハスフェルとエリゴールとレオの会話に、オンハルトの爺さんも頷いている。

「じゃあどこへ行くかなあ? 他の地下洞窟へ行くのは駄目か?」

「……それって例の地下洞窟へ行くのを祭りの後にした意味無くね?」

 俺の突っ込みに三人が揃って笑ってる。

「それじゃあ、面白いところへ連れて行ってやるよ。あそこなら転移の扉があるからすぐに戻れるから大丈夫だぞ」

 ハスフェルの声に、三人が振り返って何やら小声で相談を始めた。それを見て、女性陣も側へ行った。

 一瞬だけど、樹海って言葉が聞こえたのは聞かなかった事にする。

「お手柔らかにな。俺は行かないぞ」

「ええ! ケンも一緒に行こうよ」

 俺がそう言うと、振り返った女性二人が口を尖らせて文句を言う。

 うっかり頷きそうになったが、必死で堪えたよ。

 絶対駄目だって。パーティーを組むなら、やっぱりレベルはある程度揃えないとね。

「命がいくつあっても足りなさそうだからヤダ! まあ、弁当くらいは持たせてやるから、頑張ってジェム集めをして来てください」

「わーい、お弁当だって」

「それなら頑張ってくるわね」

 弁当と聞いて機嫌を直す女性陣と、後ろで話を聞いててこちらも喜ぶ男性陣。


 あはは……俺、本当に神様の胃袋、掴んじゃったみたいだよ。



 その夜、いつものようにニニの腹毛に潜り込みながら、祭りまでの間に何を作るか考えていた。

「肉料理をもう少し仕込んでおかないと、あの調子だとまたすぐ無くなりそうだな。あとは何を作るかな……」

 そこまで呟いて、胸元に潜り込んできたフランマのふかふか尻尾に完全に意識を持っていかれた。

「ああ癒されるよ……このもふもふ……」

 そのまま尻尾に顔を埋めて気持ち良く眠りの国へ旅立って行ったよ。まあこれは仕方が無かろう。




 翌朝、いつもの如くモーニングコールチーム総出で起こされた俺は、朝は作り置きをいろいろ出して好きに食べてもらい、お弁当にBLTサンドとカツサンドを山盛り持たせてやった。サイドメニューはジャーマンポテトと切ったトマトと温野菜だ。

 笑顔で出かけていく神様軍団を見送って、その日はとにかく肉料理を仕込みまくった。


 まず、サクラに頼んで切ってもらった薄切りの牛肉で、スライスした玉ねぎと一緒に甘辛く砂糖と醤油、それから味醂とお酒で味付けをして、すきやき風丼の具。それから、同じく薄切りの豚肉を茹でて氷水で冷やしたものを、これまた大量に作り置き。これは冷しゃぶサラダ用だ。

「ミンチって作れるかな? それが出来たら、ハンバーグとか肉団子も出来るんだけどなあ」

 ハンバーガーに挟んでいるのは、どう見てもひき肉を使ったパテなんだから、ミンサーも探せばありそうだ。

「今度街へ戻ったら探してみよう、だけど今は無いから作るぞ」

 そう呟いた俺は、まずは牛肉の欠片や切り落とした残りを全部包丁で軽く刻み、両手に一本ずつ持って、まな板の上でドラムを叩くみたいに一気に肉を包丁で叩くようにして刻んで行く。

「こんなものかな?」

 満足いくまで叩いたら、それを見本にして試しにサクラに作ってもらった。サクラはちょっと考えたあと、見事な挽肉を作ってくれたよ。うん、ミンサー買う必要無くなったな。

 ついでに豚肉も追加して、合挽きミンチも作ってもらう。

 ううん、サクラとアクアの中がどう言う仕組みになってるのか、ちょっと本気で気になってきたよ。



 ミンチが手に入った結果、ハンバーグとチーズ入りハンバーグ、照り焼きハンバーグ、肉団子の甘酢あんかけと肉団子入りクリームシチューが、新たな作り置きメニューに追加された。

 それからサンドイッチ用に、四角く作った塩味のビーフパテも量産しておく。

 どれも大好評だった事は言うまでも無い。

 ちなみに、新作を作る度に、シャムエル様は味見しては大喜びしてくれたよ。



 午後からはマックス達が交代で狩りに出かけ、何やらまたしてもお土産を持って帰ってきたらしい。

 群れを見つけたので頑張ったんだって。何なのか聞いたら、美味しいんだよと言われただけだった。

 まあ、それは良いんだけどさあ……。

 アクアの中が、俺の知らない獲物でどんどん満杯になっていくのが、ちょっと怖いです。



 俺は午後からはまた減った分の米を炊き、思いついて、弁当用のおにぎりを作る事にした。

 まず、ひき肉で肉そぼろを作って濃いめの味付けにする、それから炒り卵を作り、サヤエンドウもどきも茹でて、刻んでおく。それで三色おにぎりを大量に作ってやった。

 要するに、巨大おにぎりの中に三色の具を入れて握っただけだ。海苔は無いので、胡麻もどきを軽く煎って振りかけておいた。それから、唐揚げを入れて握ったのも大量に作っておいた。

 これで、時間の無い時でもガッツリ食べられるぞ。


 翌日の弁当にその巨大おにぎりを渡してやったら、これまた大喜びされたもんだから、なんだか楽しくなってきて、結局毎日せっせと弁当を作ったよ。

 その結果……時間切れで街へ帰るまでに神様軍団が集めたジェムは、もうとんでもない種類と数になっていた。

 普通のジェムモンスターだけでなく、最上位種や亜種のジェムも大量にあるらしく問い詰めたら、何度か樹海や他の地下洞窟へも行っていたなんて言うもんだから、俺は本気で遠い目になったよ。



 誰か……限度とか加減って言葉を、あいつらに教えてやってくれ。

 自重って言葉の意味……知ってるか?




 そしてようやく時間切れとなり、ハンプールの街へ戻る日になった。

 頑張って作った料理の備蓄も相当な量になったから、これで当分安心だろう……多分。

 そして、ジェムの在庫は言わずもがな。もう、突っ込む気力は無い。

 腐るもんで無し、まあ良いかと既に悟りの境地だった。



 張りっぱなしだった各自のテントを撤収して、荷物をそれぞれ片付ける。

 結局、ずっとベースキャンプで留守番して料理を作っていた俺は、マックスに乗るのも久し振りだ。

「じゃあ、街までよろしくな」

 大きな頭に抱きついてから、久し振りの鞍を装着する。

 そこで問題になったのが五人に足になる騎獣がいない事だった。さすがに大鷲に乗って街まで行ったら騒ぎになるって。

 それで相談の結果、ニニには慣れているハスフェルが乗り、空いたシリウスに女性二人、クーヘンはいないので、預かっているチョコにはレオとエリゴールが乗り、ギイの乗るブラックラプトルのデネブにオンハルトの爺さんが一緒に乗る事で解決した。

 憧れの女性との相乗りは、夢と消えました……残念。

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