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もふもふとむくむくと異世界漂流生活  作者: しまねこ


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2102/2102

ああ、海だ!

「ええと、行く先は五番だったな。じゃあ五番っと」

 従魔達には出来る限り小さくなってもらい、ぎゅうぎゅう詰めになってなんとかして全員が無事にエレベーターもどきに乗ったところで、俺がそう言いながら目的地の五番のボタンを押した。

 いつもの、ふわっと浮き上がる感覚のあと、しばらくして重力が戻る。

 そして、ここで到着を知らせる可愛らしいベルの音がチンと鳴る。

「ご、ご主人。今のは一体何事だ? なんとも不思議な感じだったが……」

 とりあえず扉が開いたのでエレベーターホールに出たところで、マックスの首輪に取り付けたカゴの中に小さくなって収まっていたルベルが、完全にビビった声でそう尋ねてきた。

「ああ、これは転移の扉って言って、遠い場所に一瞬で移動出来る装置だよ。まあ、シャムエル様特製の、ね。だからこれを使えるのは俺の仲間達とその従魔だけだよ」

 苦笑いしながらそう説明してやると、納得したのかうんうんと頷いたルベルはそれ以上聞いて来なかった。

 笑って手を伸ばしてそっと撫でてやってから、俺達はいつもの急な階段をせっせと上がって行ったのだった。



「おお、ここは完全に森の中だな」

 外に出たところで思わずそう呟く。

 今回の出口は、転移の扉の定番古びた祠だった。

 と言っても、周囲は完全に硬い茨と絡まるつる草に埋もれていて、ここから人力では出るのは無理だろうと思われる。

「ご主人、乗ってください。とりあえずここから離れましょう」

 マックスがそう言ってくれたので、祠を出たところにあったわずかな草地に立ち尽くしていた俺は慌ててマックスに飛び乗った。

「では、行きますね」

 何故かスライム達が俺の下半身をしっかりと確保してくれるのを見て、嫌な予感がした俺は、慌てて手綱をしっかりと握りしめて体を低くした。

 これ正解だったよ。

 何故かと言うと、マックスが予備動作も無しにいきなりジャンプしたんだよ。

 しかも超大ジャンプ!

 情けない俺の悲鳴を響かせながら、荊の茂みを完全に飛び越え、その向こうの草地に見事に着陸した。

 うん、ありがとうスライム達。もしも君達がいなかったら、間違いなく着地の反動で俺は吹っ飛んでいるよ。

「大丈夫か?」

 シリウスに乗ったハスフェルも豪快に荊の茂みを飛び越え、笑いながら俺の隣に着地する。その後にギイとオンハルトの爺さんもそれぞれの騎獣に乗って飛んできた。

 当然、その後には他の従魔達も軽々と飛んできて、俺はもうマックスの背の上でただただ乾いた笑いをこぼしていたのだった。



「はあ、とりあえず無事に到着だな。じゃあ行こうか」

 鬱蒼とした森を見て若干ビビりつつそう言うと、お空部隊の子達が一斉に巨大化した。

「ご主人、ここは空を行くのが安全よ」

 ドヤ顔のローザの言葉に納得して、俺はまたファルコの背に乗せてもらった。

 巨大化したお空部隊の子達を見たルベルが何か言いたげだったけど、俺は笑って顔の前でばつ印を作ってからルベルを撫でてやった。

 今から人の多いところへ行くんだから、ルベルが巨大化するのは無しだよ。

 全員が定位置につき、スライム達にしっかりと確保してもらったところでお空部隊の子達が一斉に羽ばたいて空へと舞い上がる。

「ああ、海だ!」

 遥か遠かったけれど、間違いなく水平線が見えて一気にテンションが上がる。

 笑ったファルコが甲高い声で一声鳴き、一気に海を目指して加速して行ったのだった。



「ああ、地上に降りたら海が見えなくなったな」

 しばらく飛んで、遥か先に街道らしき細い線が見えた辺りで一旦地上に降りる。

 従魔達にはいつもの大きさになってもらい、それぞれ定位置についてもらう。

「じゃあ、ターポートの街目指して、出発進行!」

 マックスの頭の上に立ったシャムエル様が、ご機嫌な声でそう言ってちっこい拳を振り上げる。

「お〜〜〜〜!」

 笑った俺達も拳を振り上げ、マックス達が一気に駆け出す。

 そのまま街道の近くまでほぼ一直線に走り続け、そのあとは速度を落として街道としばらく並走してから、ゆっくりと街道に入っていった。

「うわあ! 街道に魔獣が出たぞ!」

「ちょっと待て! 人が乗ってるぞ!」

「ええ、一体何事だ!」

 しかし、ちょうど近くにいたらしい冒険者が三人、俺たちに気付いて一斉に抜刀して駆け寄ってくる。

「待った待った! これは全員俺と俺の仲間達の従魔です! いいから武器をしまえ!」

 慌てた俺が、両手をブンブンと頭上で振り回しつつマックスの背の上から大声でそう叫ぶ。

「これが全部従魔だと? この従魔の数……お前さん、もしかしてハンプールの早駆け祭りに出ていたケンさんか?」

 恐らくリーダーなのだろう、かなり良い装備の大柄な男性が、マックスを見ながらそう尋ねる。

「あはは、そうだよ。この春は残念ながら勝てなかったけどね」

 苦笑いしつつそう言うと、笑ったその男性は手にしていた長剣をしまってくれた。

「失礼した。ターポートで冒険者をしているパロットだよ。一応上位冒険者だ」

「成る程。よく見ればどれも紋章があるな。いやあ、噂では聞いていたが、本当だったんだな。いや、これはとんでもない数と種類だぞ。オーロラ種だけでも何匹いるんだ」

 その後ろで槍を構えていた細身の男性も、呆れたようにそう言って槍にカバーをかけてくれた。

「失礼した。俺もターポートで冒険者をしているユーニンだよ。よろしく」

「ワハハ、噂より事実の方がとんでもないってのを初めて見たぞ。いや、これは凄い」

 最後の一人は筋骨隆々なドワーフさんで、その体格に似合の巨大な斧を地面に突き立てて大笑いしていたが、笑顔で駆け寄ってきてキラッキラの目でマックスを見上げた。

「ターポートの街で冒険者をやっとるクラウスだ。よろしくな魔獣使い殿」

「ケンです。よろしくお願いします」

 慌ててマックスから飛び降りてそう言い、順番に握手を交わす。

 彼らはハスフェル達とも初対面だったみたいで、それぞれ挨拶を交わしてから一緒にターポートの街へ向かったのだった。



挿絵(By みてみん)

2025年11月14日、アース・スターノベル様より発売となりました「もふもふとむくむくと異世界漂流生活」十二巻の表紙です。


もちろん今回も、れんた様が最高に可愛い表紙と挿絵を描いてくださいました!

前巻に引き続き、冬のバイゼンで楽しく大騒ぎです。

どうぞよろしくお願いしますm(_ _)m

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― 新着の感想 ―
ターポートの門番たち 「「魔獣の数、どんだけぇ~~!?!?」」 「「こんな大所帯、聞いてないよーー!!!」」 みんな、頑張れ……(遠い目)
久々の大慌てや・・・(懐かしさを噛み締める表情
人より大きな従魔が多数現れたら、まあ驚きますね(≧▽≦)
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