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夕食はカツ丼!

またしても、飯テロ回になりましたね……。

深夜に読んだ方、ごめんなさい。

 ほっこり炊き上がった真っ白なご飯を混ぜながら、問題が解決して安心したのか、すっかり寛いで一杯やっている神様軍団を眺める。

 それでなくても目立っている俺達と一緒に、あの無駄に顔面偏差値の高い軍団を祭りでテンション上がりまくっているハンプールの街へ、本当に連れて戻って良いのか若干不安になってきたのだ。

「でもまあ、もう今更だよな。目立ってる事に変わりは無いんだし……」

 炊き上がった最後のご飯を鍋ごとサクラに預けたら、今日の仕込みは完了だ。


「そう言えば、近いうちにクーヘンのお兄さんが来るって言ってたけど、どんな人なんだろうな。早く会ってみたいよな」

 シャムエル様に話しかけながら、ハスフェルが入れてくれていた俺の分の水割りを持って椅子に座る。仕込みをしていると、ずっと立ちっぱなしなので、案外疲れている。

「じゃあ、皆は明日からその地下洞窟に入るのか?」

 俺の言葉に、ハスフェルが振り返った。

「そのつもりだよ。まあ、あんな事はそう無いから大丈夫だよ。なんなら一緒に行くか?」

 割と本気のお誘いみたいだったけど、俺はソッコー首を振った。そりゃあもう、ちぎれんばかり力一杯な。

「謹んで遠慮させていただきます! 俺はもうしばらくここで、食材の仕込みと調理をさせて貰うよ」

「腕が鈍るぞ」

 からかうようなギイの言葉に、笑った俺はすっかり暗くなった草原を見た。

「まあ確かにそれは思うけどなあ。あ、それなら地下洞窟探検が終わってから、普通のジェムモンスター狩りにちょっとくらいなら参加させて貰うよ」

「それなんだが、一旦地下洞窟に入ると、数日程度は出て来られない可能性が高い。どうするかな……祭りまでには、街へ戻らなければならん。時間が限られている事を考えたら、地下洞窟へ行くのは祭りが終わってからでもいいかと思ってるんだが、お前達の予定は?」

 最後の言葉は、隣で飲んでいたオンハルトの爺さんの肩を叩きながら言う。

「ん? なんだ? ああ、別に我らには急ぐ予定などありはせぬよ。これだけの顔ぶれが一堂に会する事など滅多にないからな。迷惑でなければ、地下洞窟探検くらいはご一緒したいもんだな。それに、何よりここは飯が美味い」

「あの弁当は美味かったよ」

「簡単に作ってあれなら、次のお弁当がどんな風なのか、もう楽しみで仕方がないんだけど!」

 シルヴァの声に、頷いた全員が笑顔で拍手をしてくれた。

「いやいや、そんな大したもんは作ってないって!」

 慌てて顔の前で手を振ったが、謙遜するなと笑われてしまった。

「で、夕食は何を作るんだ?」

 エリゴールの嬉しそうな声に、思わず笑ったね。

「カツ丼にしようかと思うんだけど、ご飯でも構わないか? パンの方が良いなら何か考えるけど?」

「問題無いわ!」

 シルヴァが断言して、また全員が大きく頷く。

 って事で、夕食はカツ丼に決定。



「それじゃあ、ご飯はあるし、手早く作りますか」

 まずはカツ丼用のタレを作っておく。材料は、砂糖と味醂と酒と醤油、それから水と玉子だ。俺の知ってる醤油や味醂とは正確には違うのかもしれないが、味は一緒だからもう気にしない事にしている。

 本当はカツオ出汁があったら良かったんだけど、無いものは仕方がないから水で代用だ。

 ちょっと考えて、以前作ってあった、まだ味を付けていない干し肉のスープを使う事にした。これなら肉の出汁だから、問題無いだろう。

「砂糖と味醂と酒と醤油、あとは出汁があれば、大体のものはこれで作れるって定食屋の店長が言ってたけど、本当にそうだよな。確かに、ほぼこれで何でも作れるよなあ。あ、薄切り肉ですき焼き風丼とかも美味そうじゃん。よし、今度作ろう」

 そんな事を呟きながら玉ねぎを薄くスライスして見本にして、まとめて10玉分サクラに切って貰う。余ったら、また使えるから置いておけばいいもんな。

「アクア、ここにある玉子をこのお皿に、2個ずつ割っといてくれるか」

 三つ並べたお椀に、アクアが伸ばした触手で手早く玉子を割ってくれる。相変わらず器用なもんだ。


「何その子達、可愛い! お料理のお手伝いしてくれるの?」

 シルヴァが目を輝かせてそう言い、駆け寄って来て机の上にいるサクラとアクアを撫で回した。二匹とも撫でられて嬉しそうに伸びたり縮んだりしている。俺には分かるぞ。多分、あれはドヤ顔だ。

「そうなんだよ。別に教えたわけじゃ無いんだけどさ、横で見ていたら覚えたみたいで、下ごしらえの中でも面倒な、皮剥きとか切ったり割ったりするのを手伝ってくれるからすげえ助かってるんだよ。いつもありがとうな」

 俺も手を伸ばして、二匹を順番に撫でてやる。


「ご主人のお役に立てて嬉しいもんねー!」

「だよねー!」

 自慢気に伸び上がった二匹を見て、皆笑顔になったよ。



 割ってもらった玉子を軽くかき混ぜたら、フライパンを三個取り出してコンロの上に置く。

「じゃあ、順番に三人前ずつ作るから待っててくれよな」

 興味津々でこっちを見ている神様軍団にそう言ってから、三つ分のご飯を大きめの木のお椀によそっておき、カツ丼の具を作る。

 まずはフライパンに玉ねぎを入れて、混ぜて作ってあったカツ丼のタレを、カップとして使ってるミニピッチャーに計って取り、玉ねぎの上にタレを投入。火を付けて沸いてくるまでしばし待つ。

 その間にトンカツを適当に切っておく。あいつらなら二枚ずつくらいは余裕で食うだろうから、超ボリュームの玉子2個分だ……余裕二人前だよな、これ。

 玉ねぎに火が通ったら、カツを投入。カツの衣にタレが染みてきたら、溶き卵を回しかける。

 軽く火が通ったら完成だ。出来上がったカツ丼を、よそってあったご飯の上に一気に乗せてやる。


「はい、お待たせ」

 既に、全員がマイスプーンを持って待機している。あ、エリゴールとオンハルトの爺さんは、マイ箸持参じゃん。おお、箸仲間発見!


 しかし、目の前のカツ丼を見て思った。うん、前言撤回。あれは、余裕三人前だぞ。ちょっとカツが大き過ぎた。

 しかし、目を輝かせた神様軍団は三つの大盛りカツ丼を前に、誰が食べるかを無言で牽制しあっている……何やってるんだよ。


「お先いただき!」


 グレイとシルヴァの女性コンビが、そう叫んで真っ先に手を伸ばす。おう……彼女らもあれを食うのか。お腹は大丈夫か?

 しかし、密かに心配する俺をよそに、大盛りのカツ丼を嬉々として食べ始めた二人は、ほぼ同時に歓声を上げた。

「何これ最高! カツの衣がふわふわになってる。美味しい!」

「これは美味しいですね。ご飯と混ぜると、更に美味しいです」

 美女二人の満面の笑み頂きましたー! グッジョブ俺!



 そして残りの一つを手にしたのは、オンハルトの爺さんだった。

 嬉々として食べている三人を前に、笑えるくらいに悔しそうな顔をしているハスフェル達を見て、苦笑いした俺はもう一つコンロとフライパンを出し、玉子用のお椀ももう一つ取り出した。

 四つ同時のカツ丼作りはちょっと大変だけど、一人だけ食べられないのはさすがに可哀想だもんな。当然のように、それを見たアクアが4皿分の玉子を割ってくれた。


 残りの4つも同じようにして、何とか手早く作る。手を合わせた全員が嬉しそうに食べ始めたのを見て、最後に自分の分を作る。

 もちろん、俺の分はトンカツは一枚で卵は一個だ。これが普通のカツ丼サイズだよな。

 出来上がった普通盛りのカツ丼を持って席に着く。

「あ、サクラ。預けてある即席漬物を出してくれるか。そうだよ。今こそ、これの出番だよな」

 呟きながらサクラから受け取ったのは、以前作ったきりすっかり忘れていた、箸休め用の大根もどきと人参もどきを塩揉みして作った即席漬物だ。手早く小皿に取り分けて、皆に渡す。

「おお、カツ丼が濃い味だから、口がさっぱりして良いな」

 箸で摘んだ大根をかじりながら、オンハルトの爺さんが嬉しそうにそう言って笑っている。

 俺も、マイ箸を取り出して食べ始めた。



 うん、自分で作っていうのも何だが、美味いよカツ丼。

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