二日酔いの朝兼昼ご飯
ぺしぺしぺしぺし……。
ぺしぺしぺしぺし……。
ふみふみふみふみ……。
ふみふみふみふみ……。
ふみふみふみふみ……。
ふみふみふみふみ……。
カリカリカリカリ……。
カリカリカリカリ……。
つんつんつんつん……。
チクチクチクチク……。
こしょこしょこしょこしょ……。
ふんふんふんふん!
ふんふんふんふん!
ふんふんふんふん!
ふんふんふんふん!
「ご主人大丈夫〜〜〜?」
「ご主人起きて〜〜〜」
「ご主人、ごめんねなの」
いつもの従魔達総出のモーニングコールに起こされた俺は、違和感を覚えてゆっくりと目を開いた。
「あ、リビングの天井……って事は、また寝落ちか。ううん、頭が痛いぞ……」
ため息を吐いた俺は、ゆっくりと体を起こした。
スライムベッドが俺の動きに合わせて背中を押してくれたので、おかげで何とか起きる事が出来た。
「うああ、頭痛いし喉がカラカラだ。サクラ、美味しい水を頼む」
しかし予想以上の体の不調に大きなため息を吐いた俺は、もう一回背中から倒れ込み仰向けになる。
「ご主人、はいどうぞ」
寝転がった俺の目の前に、触手が伸びてきて美味い水の入った水筒を渡してくれる。
もちろん、蓋は開けるサービス付き。
「ありがとうな。ええと、ごめん、水を飲みたいから起こしてくれるか」
寝転がったままでは水も飲めなくてそう言うと、また背中がググッと押されて起き上がれた。
「ありがとうな。では」
小さく笑って足元のスライムベッドを軽く撫でてから、ぐいっと水筒の水を呷る。
グビグビと音を立てて飲む、飲む、飲む。
「ぷっは〜〜〜! 美味い!」
息を継いでそう言った俺は、残りの水も一気に飲み干した。
サクラの触手に水筒を返すと、きゅっと音がして蓋を閉めてくれた。
「はあ、美味しい水のおかげでなんとか復活だ。ええと、皆は……まだ撃沈かよ」
ようやく復活したところで部屋を見回した俺は、見えた光景に思わず吹き出した。
日の当たる窓辺に、ハスフェルの寝ているスライムベッドとギイの寝ているスライムベッドが仲良く並んでいる。
部屋の真ん中に置かれた大きな机横の広い場所に、オンハルトの爺さんが寝ているスライムベッドがある。
ちなみに三人のスライムベッドの横には空の酒瓶が何本も置いてあるので、間違いなくスライムベッドに行った後も寝酒を飲んでいたに一万点!
「しかも、俺が従魔達に起こされた時もまだ寝ていたって事は、二日酔いもかなりの重症と見た」
今も、全く動きが無いので、ちょっと死んでるんじゃあないかと心配になるレベルだ。
「とりあえず顔洗ってこよう」
リビングに備え付けられた水場へ行き、顔を洗って口もゆすぐ。
「ご主人綺麗にするね〜〜〜〜!」
跳ね飛んできたサクラが一瞬で俺を包んで綺麗にしてくれる。
「いつもありがとうな。ほら、いっておいで!」
笑ってサクラを捕まえておにぎりにしてから水槽に放り込んでやる。
次々に跳ね飛んでくるスライム達も同じようにおにぎりにしてから放り投げてやり、駆けてきた水遊びチームとお空部隊の子達に場所を譲る。
「おおい、起きろよ〜〜」
スライムベッドを順番に揺すりながらそう言ってやると、半寝ぼけの返事が返ってきた。
「さてと、朝昼兼用はお粥だな。じゃあ、この間作った新作雑炊も出すか」
そう呟き、鶏ガラスープメインの豚骨スープで作った、つみれ入り鶏雑炊を取り出した。
それから、こちらも作り置きのいつものお粥や雑炊も色々取り出して並べておいた。
「だから起きろって」
ここまで準備してもまだ誰も起きてこないので、笑った俺はもう一回スライムベッドを揺すって回った。
「うん、さすがにちょっと飲みすぎたな」
「だなあ、地下にいる間は一応それなりに遠慮して飲んでいたから、地上へ出てタガが外れたな」
「確かにそうだな。俺もまだ酔いが残っているよ」
起きてきた三人は、寝起きを隠さない顔でぐだぐだとそんな話をしている。
「でもまあ、この程度の頭痛ならこれで治る……かな?」
苦笑いしながらいつも使っているのとは違う水筒を取り出す彼らを見て、たぶんあれも美味い水の出る水筒なんだろうなと考えていた俺だったよ。
「それで何やらいい香りがしているんだが、何を用意してくれたんだ?」
何とか復活したらしい三人が、鼻をヒクヒクさせながら机の上に並んだ土鍋を見る。
「おう、まずこれが例の豚骨スープと鶏がらスープをアレンジして作った鶏雑炊。ハイランドチキンとグラスランドチキンの手羽先で作ったつみれがたっぷり入ってるよ。で、こっちがいつものシンプル白粥で、こっちは微塵切りの野菜が色々入った野菜雑炊で、こっちはハイランドチキンとグラスランドチキンの肉と玉子が入ったたまご雑炊。お好きなのをどうぞ!」
大きなお椀を取り出して並べながらそういうと、わかりやすい笑顔になる三人。
「では、遠慮なくいただくとしよう!」
お椀を手にしたハスフェル達が当然のように新作鶏雑炊に駆け寄るのを見て、俺も慌ててお椀を手に新作雑炊に駆け寄ったのだった。




