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もふもふとむくむくと異世界漂流生活  作者: しまねこ


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2089/2102

弁当選び?

「ええと、じゃあこの辺りでいいのかな?」

 マックスに、食事をしたいから適当に安全なところで止まってくれとお願いしておいたら、しばらく走った後に綺麗な花が咲き誇る草原の端で止まってくれたので、周囲を見回してそう言ってからマックスを覗き込む。

「ええ。この辺りならお弁当を広げても大丈夫かと思いますよ。一通り確認しましたが、周囲には特に危険なジェムモンスターや魔獣の気配はありませんね。念の為に、ご主人達が食事をしている間はセーブルが大きくなって警戒してくれるそうなので、どうぞゆっくりお食事をしてください」

 得意そうに目を細めたマックスの言葉に頷き、俺はとりあえずマックスの背から飛び降りた。

「じゃあ、いつもの机と椅子を出してっと、天気が良いからテントは要らないな」

 即座に鞄に飛び込んでくれたサクラから、そう言いながらいつものテーブルと椅子を取り出して並べる。



「じゃあ食べるならこの辺りかな?」

 ハスフェル達やギルドマスター達もそれぞれの騎獣から降りて集まってきたので、笑った俺は小さくそう呟きながら大きな弁当箱を色々と取り出して並べた。

「お好きなのをどうぞ。ちなみにこっちは野菜とハイランドチキンやグラスランドチキンの鶏ハムがメインのヘルシー弁当で、こっちはニンニクとバター醤油で焼いた岩豚がガッツリ入った岩豚肉弁当、でもって、こっちは岩豚トンカツをはじめ揚げ物各種がガッツリ入った揚げ物弁当。それからこっちは岩豚の角煮を挟んだ角煮まんがぎっしり入った角煮弁当です」

「おお、これは素晴らしい!」

 目を輝かせる一同を見て、にんまりと笑った俺はさらに追加を取り出していった。

「こっちは握り寿司と巻き寿司がぎっしり入った寿司弁当で、こっちはいろんな燻製肉や燻製卵や燻製チーズなんかも入った燻製弁当。それからこっちは焼き魚弁当と、だし巻き玉子が丸ごと一本入っただし巻き弁当なんかもありますよ」

「焼き魚やだし巻き玉子は分かるが、握り寿司と巻き寿司? それは何だ?」

 ヴァイトンさんとエーベルバッハさんの不思議そうな声が重なる。

「あ、そうか。まだこっちには刺身や寿司は届いていないのか」

 さすがにハンプールとの距離を考えて納得した俺は、別のお皿に並べてあった握り寿司が色々入ったお皿を取り出して見せた。

「春の早駆け祭りの後、ハンプールでしばらく滞在していたんですけどね。その時に長雨が続いた事があったんです。その後、雨が止んだ時に郊外で釣り大会をしたんですよ。それで釣れた魚を俺の故郷のやり方で調理してみたんです。今までは釣りたての新鮮な魚が手に入らなかったですからね」

 笑った俺の言葉に、エーベルバッハさんとヴァイトンさんが納得したように頷く。

「ああ、雨の後の泥の池での釣りか。それなら俺達もたまにやるな」

「だが、釣った魚は焼くか塩漬けにして干すかのどちらかだぞ。これはもしかして……生で食うのか?」

 そう言って思いっきりドン引きしているお二人を見て、困ったように笑った俺は醤油を入れた小皿を取り出し、サーモンの握り寿司を一切れ手に取ると軽く醤油をつけてからパクリといった。

「ええ、生で食ったぞ!」

「おい、いくら万能薬があるとは言っても無茶をするな! 腹を壊すぞ!」

 慌てたようなお二人の叫びに、にんまりと笑ったハスフェル達も手を伸ばして握り寿司を次々につまみ食いした。

「やっぱり、寿司はいつ食べても美味いな。じゃあ俺は、揚げ物弁当とこの寿司弁当の両方を貰おう」

「あ、同じ事を考えていたな。俺も両方もらうぞ」

 笑ったハスフェルの言葉にギイも笑いながら何度も頷き、二人揃って両方の弁当を確保してから椅子に座った。

「じゃあ俺は……寿司弁当と、燻製弁当をもらうとしようか」

 そんな二人を見てから少し考えたオンハルトの爺さんは、そう言って寿司弁当と燻製弁当の両方を手にして椅子に座った。

 まあ、別に良いけど、やっぱりお前らの食う量はおかしいと思う。

 その弁当一つでも、俺の感覚では余裕三人前サイズなんだからな。



「生の魚が、美味いだと……?」

「そんな話は、見た事も聞いた事も無いぞ」

 揃って真顔になるお二人を見て、俺は醤油の小皿ごとお寿司の盛り合わせのお皿を二人の前に置いた。

「気になるなら試食してみてください。食べやすいのは、こっちの鉄火巻き、ええと海苔にお酢を効かせたご飯を敷いて、そこにマグロを置いて巻いたお寿司です。少しだけ醤油をつけてどうぞ」

 リナさん達や新人さん達にも、最初は握り寿司よりも巻き寿司の方が人気があったからね。

 握り寿司やお刺身みたいに、生の魚を直接食べるよりも心理的な抵抗感が少ないのかもしれない。

「ケンさんが、そこまで言うのなら……」

「ま、まあ食ってみても良いかもな……」

 明らかにビビっているお二人だったけど、嬉々として寿司弁当を食べ始めたハスフェル達を見てから揃って頷き合い、それはそれは真剣な顔で鉄火巻きを一つ摘むと醤油を少しだけつけてから口に入れた。

 しばし無言で咀嚼する。

 何となく俺達は全員無言でそんなお二人を見ている。



「こ、これは!」

「美味いぞ!」



 ごくりと飲み込んだところで、目を輝かせたエーベルバッハさんの叫びにヴァイトンさんの叫びが続く。

「ケンさん、これは新鮮な魚でないといけないのでしょうか?」

「この寿司とは、具体的にはどのようにして作るのですか?」

 いきなり商人の顔になったお二人が俺の元に駆け寄ってくる。

 近い近い!

「待った待った、作り方くらいいくらでも教えて差し上げますから、とにかく食べましょう」

「ああ、すみません」

「し、失礼しました」

 我に返ったお二人が下がってくれたので、苦笑いしつつ立ち上がった俺は、自分用に寿司弁当と、少し考えてからだし巻き玉子弁当を取った。

 真顔で頷き合ったヴァイトンさんとエーベルバッハさんは、それぞれ寿司弁当と一緒に揚げ物弁当と岩豚肉弁当を手に取ると、もう一度頷き合ってから席に座った。

 そしてそれはそれは真剣な顔で寿司弁当を開けると、まずはマグロの握り寿司をスプーンですくった。

 まあ、お箸は使える人とそうでない人がいるみたいだからな。

 一応醤油瓶の小さいのを取り出してあげると、二人はそれを使って醤油をまぐろの上にかけてから一口でいった。

「おお、この少し酸っぱいご飯と相性抜群ですな」

「これはさっきのとはまた違う美味さがありますね。いやあ、これは驚きです」

 完全に商人の顔で感想を言いつつ食べ始めたお二人を見て、苦笑いした俺も寿司弁当を広げたのだった。

 え、もちろんだし巻き弁当はそのままシャムエル様に進呈したよ。



挿絵(By みてみん)

2025年11月14日、アース・スターノベル様より発売となります「もふもふとむくむくと異世界漂流生活」十二巻の表紙です。


もちろん今回も、れんた様が最高に可愛い表紙と挿絵を描いてくださいました!

前巻に引き続き、冬のバイゼンで楽しく大騒ぎです。

どうぞよろしくお願いしますm(_ _)m

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― 新着の感想 ―
明日2025/11/14 もふむく12巻  楽しみでしょうがありません!日々ほこほこ癒されてます。更新を楽しみにしてます♪応援してます。急に寒くなったので、くれぐれもも、体に気をつけて下さいね!
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