いつもの賑やかな朝の光景
「いやあ。どれも最高にうまかったよ。ごちそうさん」
「確かに美味かったな。ぜひまた作ってくれ」
「ふむ、どれも予想以上に美味かったな、ちょっと食べ過ぎたよ」
満面の笑みのハスフェルとギイの隣では、ソファーに座ったオンハルトの爺さんが笑いながらお腹をさすっている。
「あはは、締めのラーメンまで美味かったもんな。ちなみにこのスープでお粥も作ったから、飲んだ翌朝の楽しみがあるぞ」
「なんだそれは!」
「今すぐ食べたいぞ!」
「「あれだけ食っておいて何言ってるんだよ!」」
キラッキラに目を輝かせるハスフェルとギイの言葉に、俺とオンハルトの爺さんの叫びが重なり、全員揃って大爆笑になったのだった。
もちろん、お粥は後日改めてって事になったのは言うまでもない。
「じゃあ、片付いたら今夜は解散だな」
手分けしてスライム達が空っぽになった鍋やお皿を片付けてくれているのを眺めつつ、食後の緑茶を啜る。
さすがにあれだけ食べたら満足したみたいで、ハスフェル達も淹れてやった緑茶をのんびりと啜っていた。
「ええと、じゃあ明日は昼前くらいに商人ギルドへ行って、ヴァイトンさんとエーベルバッハさんと合流して、そのまま郊外へ出る予定だからよろしくな」
「おう、了解だ。じゃあ、今夜はこれで解散だな。ごちそうさま。冗談抜きで本当に美味しかったよ」
笑ったハスフェルの言葉にギイとオンハルトの爺さんも笑顔で頷き、とりあえず今夜はこれで解散となった。
綺麗に全部片付いたところで、俺も従魔達を引き連れて部屋に戻った。
「ああ〜〜〜久々のニニとマックスのもふもふとむくむくだ〜〜〜やっぱりこれが最高だよな〜〜」
大きなキングサイズのベッドに横になってくれたニニのお腹に飛び込む俺。
即座に俺を挟んでマックスが定位置に横になり、カッツェとビアンカがそれぞれ足元に来てニニとマックスにくっついて横になる。
おかげで俺は巨大猫団子の真ん中に収まった形になる。
横向きになった俺の背中側にはいつものウサギトリオが収まり、タッチの差でマニが俺の腕の中に潜り込んでくる。
「おお、今夜の抱き枕はマニか〜〜ううん、いい感じのもこもこだねえ」
ぎゅっと抱きついて、これまた久し振りのマニのもこもこな毛を満喫する。
「よかったですね。では消しますよ」
笑ったベリーの声の後に、部屋が真っ暗になる。
「ベリーも、何度も行ったり来たりしてくれてありがとうな。これからも、よろしく……」
小さく欠伸をしつつなんとかそれだけを言ったんだけど、久々のもふもふとむくむくに埋もれた俺は、そのまま気持ちよく眠りの海へ落っこちて行ったのだった。
いやあ、やっぱりもふもふとむくむくの癒し効果、すげ〜。
ぺしぺしぺし……。
ぺしぺしぺし……。
ふみふみふみ……。
ふみふみふみ……。
ふみふみふみ……。
ふみふみふみ……。
カリカリカリ……。
カリカリカリ……。
つんつんつん……。
チクチクチク……。
しょりしょりしょり……。
ふんふんふんふん!
ふんふんふんふん!
ふんふんふんふん!
ふんふんふんふん!
「うん、起きてるって……」
翌朝、いつもの従魔達総出のモーニングコールに起こされた俺は、半ば無意識にそう答えつつ腕の中にいたふわふわを抱きしめた。
あれ? このふわふわはマニじゃないな? 誰だ?
寝ぼける頭の中で考えつつ腕を伸ばして尻尾を撫でる。
「このふわふわ尻尾は……フラッフィーだな。ううん、相変わらず、良き尻尾ですなあ……」
小さく呟きつつ、ふわふわなしっぽを撫でさする。
ベリーとシャムエル様の笑う声が聞こえたが、そのまま俺は二度寝の海へ墜落して行ったのだった。
ぺしぺしぺしぺし……。
ぺしぺしぺしぺし……。
ふみふみふみふみ……。
ふみふみふみふみ……。
ふみふみふみふみ……。
ふみふみふみふみ……。
カリカリカリカリ……。
カリカリカリカリ……。
つんつんつんつん……。
チクチクチクチク……。
しょりしょりしょりしょり……。
ふんふんふんふん!
ふんふんふんふん!
ふんふんふんふん!
ふんふんふんふん!
「うん、だから起きてるってば……」
二度目のモーニングコールに起こされつつそう答えた俺は、腕の中のフラッフィーを抱きしめて違和感に気付いて薄目を開けた。
「ご主人おはよう」
そこにいたのは、猫サイズのタロンとティグ、それからマロンの三匹だった。
「あはは、なんだか変だと思ったら、三匹一緒だったのか。おはよう」
笑ってそう言いつつ、眠気に負けてまた目を閉じる。
そのまま小さなもこもこ達を撫でてその間に顔を埋めようとしたところで羽ばたく音が聞こえて慌てて起きあがろうとした。
しかし、その直後に額の生え際と右の耳たぶを二箇所、それから右脇腹を二箇所ペンチでつねられたかのようにガリっとやられた。
「うぎゃあ〜〜〜〜げふう!」
久々の激痛に悲鳴をあげる俺。そしてその直後に三連ちゃんで腹を蹴っ飛ばされて勢い余ってそのまま背中から転がる俺。
そして、その直後に俺の腕の辺りにもう一発。
「最後のこれは、ルベルだな。うん、なかなか力加減も上手くなったぞ」
ベッドから転がり落ちたところで、待ち構えていたカッツェの背中に抱きつく形で止まる。
「あはは、ありがとうな。起きるからもうやめてください!」
バサバサと軽い羽音と共にお空部隊の子達が集まってくるのを見て、俺は慌てて起き上がり、順番に捕まえておにぎりの刑に処してやったのだった。
もちろん、最後に猫サイズのルベルもしっかりとおにぎりにしてやったよ。
その後、なんとか起き上がって顔を洗いに水場へ向かいつつ、やっぱりこんな賑やかな朝がいいなとしみじみと考えていた俺だったよ。
うん、ハスフェル達の事を笑えないな。あんまり自覚はなかったけど、実は俺も、かなりの寂しがりだったみたいだ。




