新作メニューの豚骨ラーメン爆誕!
「じゃあ麺を茹でている間に、お椀に出来上がったこの濃厚豚骨スープを入れておくっと」
並べた二つのお椀に、出来上がった熱々の濃厚豚骨スープをお玉ですくってたっぷりと注ぎ入れる。
「ご主人、そろそろ砂時計が終わるよ〜〜!」
タイミング良くベータがそう言ってくれたので、砂時計の砂が全部落ちるのを見てからコンロの火を止める。
「で、タイミング良く麺が茹で上がったので、ザルでお湯を切る!」
片手鍋を手にした俺は、用意しておいた大きめのザルに茹で上がった麺を流し入れて軽く湯切りをする。
もちろん、茹で終わったお湯は流しの中で待ち構えていたスライム達が一瞬で飲み込んでくれた。
火は駄目だけど、お湯はほぼ熱湯でも全然大丈夫みたいなんだよな。
「でもって、ここに麺を入れて……うん、等分だな」
キラッキラに目を輝かせてこっちを見ているシャムエル様と目が合った俺は、苦笑いしてそう呟き、お箸を使って湯切りした麺を並べたお椀に等分になるように頑張って取り分けた。
「でもって、ここにぎっしりと薄切りにした煮豚チャーシューを並べて、真ん中に刻んだネギを山盛りに盛り付け、その横に茹でたコーンと半分に切った味玉を並べれば、特製豚骨ラーメンの完成だ!」
出来上がった豚骨ラーメンの入ったお椀を片手に持った俺は、シャムエル様にそれを見せながらドヤ顔になる。
「うわあ、美味しそう! 食、べ、たい! 食、べ、たい! 早く食べたい食べたいよ〜〜! 豚骨ラーメン食べたいよ!」
もうこれ以上ないくらいにキラッキラに目を輝かせたシャムエル様が、新曲、豚骨ラーメン食べたいの歌を歌いながら、俺にはよく分からない複雑なステップを超高速で踏み始める。
「はいはい、お供えするからちょっとだけ待ってくれよな」
苦笑いした俺は、即座にスライム達が用意してくれたいつもの簡易祭壇に用意した二杯の豚骨ラーメンを並べてから、いつものように目を閉じて手を合わせた。
「ええと、新作の豚骨ラーメンです。少しですがどうぞ。あ、でもこれはかなり濃厚で脂も多いので、もしかしたらシルヴァとグレイにはちょっと合わないかもしれません。もしそうならごめんなさい」
一応、鶏がらスープの方の脂はほぼ取り除いたけど、豚骨スープの脂はほぼそのままだからな。
前の会社でも、豚骨系が好きな人はほぼ男性陣だった事と女性の中には豚骨系は苦手だって人が複数いたのを思い出して、一応そう付け加えておく。
頭を撫でてくれたのが分かったので顔を上げると、いつもの収めの手が何度も俺を撫でてから、湯気の立つ豚骨ラーメンを何度も撫でまわし、それぞれのお椀を持ち上げる振りをして、最後にこっちに向かってOKマークを作ってから消えていった。
「大丈夫だったみたいだな。よし、じゃあ食べよう!」
心配したけど大丈夫だったみたいで、手だけなのにはしゃいでいたのが分かって思わず笑顔になる。
「お待たせ。はいどうぞ。一応言っておくけど、熱いからいつもみたいに頭から突っ込んだら冗談抜きで火傷するぞ。取り皿に少しずつ取ってやるから、こっちを食べてください」
湯気の立つ熱々のスープとそれに絡まる麺を見て苦笑いした俺は、サクラに小さめのお椀をもう一つ取り出してもらい、とりあえずお箸で麺をお椀に取り分けてやった。
それから薄切り岩豚チャーシューと味玉を一つ。スープは少しだけスプーンですくって入れてやる。
「ありがとうね。では、いっただっきま〜〜す!」
目を輝かせてお椀を受け取ったシャムエル様は、高らかにそう宣言するとやっぱり麺に頭から突っ込んでいった。
「熱い! でも美味しい! 何これ! めっちゃ濃厚!」
いつもの三倍サイズになった尻尾をブンブンと振り回しつつ、小さな手で麺を鷲掴んでバクバクと食べはじめた。
でも、麺を啜るのは上手く出来ないみたいで、ツルツル滑る麺に苦労している。
「ちょっと待った。じゃあこれでどうだ?」
一旦下がってもらい、小さめのナイフを取り出してお椀の中の麺を軽く切ってやる。
「ありがとうね。これなら上手く食べられるよ!」
またお椀に手を突っ込み、短くなった豚骨スープの絡んだ麺を鷲掴んで引っ張り出して食べ始める。
「気に入ったみたいだな。よし、じゃあ俺もいただこう」
笑ってそう言い、まだ熱々の豚骨ラーメンを俺も改めて手を合わせてから食べ始める。
「おお、スープだけの時よりも濃厚さが感じられるな。確かに美味い! これは良いスープが出来たぞ。よし、食べ終わったらこのスープで、岩豚を入れた鍋を準備しておこう。あいつらが帰って来たら豚骨鍋パーティーだ!」
ズルズルと遠慮なく音を立てて麺を啜りながら、最高に美味しい出来になった豚骨ラーメンを満喫した俺だったよ。
ちなみにシャムエル様は、取り分けてやった分は文字通り瞬殺してすぐにおかわりを要求してきたもんだから、結局俺はその度に食べる手を止めて取り分けては麺を刻んでやる羽目になったのだった。
うん、次にこれを作る時には、シャムエル様用の麺は先に刻んでおいてスープも少し冷ましたのを用意してやろう。
ちょっと伸びてきた麺をすすりながら、密かにそんな事を考える俺だったよ。




