今日の予定
『おお〜い、生きてるか〜〜?』
『腹が減ったんだけどな〜〜』
『起きてくれよ〜〜〜!』
突然頭の中に響いたハスフェル達三人の大声に、俺は飛び上がった。
「うえっ! 何だ?」
そのまましばし呆然としてから思いっきり吹き出したよ。
『あはは、もしかしてあのまま寝落ちしたのか。ごめんごめん。すぐ行くよ』
一応トークルームに念話で返事をすると、ハスフェル達三人が揃って大爆笑していた。
だって、今の俺はニニとカッツェとマニの間に収まっていて、腕の中にはフランマとタロンが揃って潜り込んで抱き枕にいなっているし、俺の顔の横には小さくなったティグ達がこれまたぎゅうぎゅうにくっついていたのだ。
ちなみに俺が飛び起きて座った状態になったので、俺にくっついていたティグ達は全員転がり落ちてニニ達の猫団子の真ん中に収まっているよ。
しかも、水遊びをしていたマックス達はもう全員部屋に戻って来ていて、揃って良い子座りで俺を見ているし、もちろんスライム達も全員戻ってきていて、今はソフトボールサイズになって部屋の中を好きに転がっている。
「はあ、じゃあリビングへ行くぞ。ええと、今日はハスフェル達は庭のダンジョンに行くって言っていたけどお前らも行くか? 俺は料理をしたいから残るけどさ」
鞄を手にそう言うと、マックス達は顔を見合わせてから揃ってワンと吠えた。
「では、我らはハスフェル様達と一緒にダンジョンへ行ってきます! ご主人の分まで頑張ってジェムと素材を集めてきますね!」
「もちろん私達も行くわよ!」
起き上がったニニの言葉に、猫族軍団の子達も張り切って飛び跳ねている。
「おう、じゃあ頑張って集めてきてくれよな。でも、無理は駄目だぞ」
笑ってマックスのむくむくな首のあたりを軽く叩いてやり、そのまま全員を引き連れてリビングへ向かった。
「おはよう。ニニ達とくっついていて寝落ちしちゃったよ。ごめんって」
リビングで待っていた三人にもう一回謝り、急いでいつもの朝食メニューを取り出していく。
「まあ、それなら仕方ないな」
「相変わらず仲のよろしい事で」
笑ったハスフェルとギイにそう言われて、誤魔化すように笑った俺だったよ。
「ええと、今日のお前らは、ダンジョンに潜るんだよな?」
しっかりと食べ終え、おかわりのコーヒーを飲みながらそう尋ねると、三人が揃って頷く。
「おう、せっかく戻ってきたんだし楽しませてもらうよ」
にんまりと笑ったハスフェルの背後では、満面の笑みになったベリーが右手を挙げている。
どうやらベリー達も一緒に入るみたいだ。
「俺はちょっと料理をしたいから、それじゃあ俺の従魔達も連れて行ってくれるか」
「おう、そう言っていたな。それにしても何を作るんだ? もうそれほど作り置きは必要ないだろう?」
ハスフェルの言葉に、俺はにんまりと笑って一枚のメモ用紙を取り出した。
「ふふふ、以前ウォルスの街の美味しい鍋のお店の店主にレシピをもらっただろう。ハンプールの街ではなんだかんだで忙しくてすっかり忘れていたから、今のうちに一度作ってみようかと思ってさ。これはかなり時間がかかりそうなレシピだったから、まとめて時間の取れる時にやらないとな。まあ、上手くいくかどうかは俺にも分からないけどね」
メモ用紙をぴらぴらさせながらそう言うと、三人は目を輝かせて拍手をした。
「そういう事なら了解だ。じゃあ、是非とも頑張って美味いのを作ってくれ。出来上がりを楽しみにしているよ」
「まあ、ご期待に添えるように頑張るよ。ちなみにこれは数日は確実にかかるレシピだから、すぐには食べられないので、そこはご了承くださ〜〜い」
最後は笑ってそう言ってやると、三人は揃って泣く振りをしていた。
ううん、こういうノリは嫌いじゃないよ。
「じゃあいってらっしゃい。怪我だけはしないようにな〜〜」
スライム達以外は全員ハスフェル達と一緒に出かけて行ったので、玄関まで一緒に行ってそんな彼らを見送った俺は、スライム達を引き連れてお城の厨房へ向かった。
せっかくだから、広い厨房で本格豚骨スープを作りたいからね。
とりあえず久し振りなのでまずはお掃除をスライム達にお願いして、俺は師匠のレシピ本を取り出してスープと仕込みについて書かれた項目を探した。
「おお、さすが師匠。ちゃんとあるじゃん」
下ごしらえと書かれた項目に豚骨スープや鶏がらスープの項目があり、もう俺は大感激してその項目をまずじっくりと読み込んでいった。
「まあ基本的には、材料を時間をかけて煮込むんだけど……豚骨が無いな」
重大な事実に気が付いた俺は、まず先に街へ行ってみる事にした。
街のお肉屋さんで、豚骨が売っている事を願おう。
最悪売っていなければ、岩豚を一匹だけ急ぎで捌いてもらって骨ごと引き取ってくるかだな。




