お城への帰宅
「じゃあ戻るか。すっかり遅くなっちまったな」
すっかり暗くなった空を見上げたハスフェルの言葉に、俺達も苦笑いしつつ頷く。
「しかも、なんだかんだで昼飯食いっぱぐれたし」
不意に気付いた重要な事実に俺がそう呟き、顔を見合わせて揃って吹き出したよ。
「まあ、さっき広場で串焼きとビールをいただいたから、あれが遅い昼食って事にしておこう。じゃあもうこのままお城へ帰って何か食ったら今日は休もう。なんだか疲れたよ」
笑った俺の言葉にハスフェル達も笑いながら頷き、とりあえずマックスの手綱を引いて街外れまでゆっくりと歩き、貴族街に入ったところでマックスの背に飛び乗りそのままお城へ帰っていったよ。
久々のアッカー城壁の城門は、ここを発つ時に閉めてあったのでハスフェルとギイが開けてくれた。
ちなみにここの城門横には勝手口的な小さな扉が付いていて、もちろんその扉の鍵も普段は閉めてあるけど、大きな門を開けなくても、人だけなら簡単に出入り出来るようになっている。
俺達が留守の間、ここの管理をギルドにお願いしているから、定期的にお城周辺や敷地内に問題が無いかの見回りをしてくれている職員さんは、ここから出入りしていると聞いている。
まあ、俺達は小さくなれない魔獣の従魔を複数連れているから、城門を開けないと出入り出来ないんだけどね。
それからその小さな扉の横には小屋があって、中には回転式のハンドルが付いた装置があり、そこにジェムを入れてからハンドルを回すと、何やら鎖がジャラジャラと引っ張られて城門が開く仕様になっている。
これが無ければ人力でこの巨大な鉄の城門を開けるのなんて、ハスフェル達でも絶対に無理だろうから、この門を開く仕組みを作ってくれた職人さん達にマジで大感謝だよ。
無事に城門が開いたところで中に入り、一声吠えたマックス達が一斉に走り出し他の従魔達も嬉々としてそれに続く。
お城まであっという間だったよ。いやあ全力疾走したマックス達、速い速い。
「おお、お城周辺は草刈りしてくれているんだな」
城門を入った所や途中の敷地内は基本的に草が生え放題になっていたんだけど、到着したお城周辺は綺麗に草刈りがされている。
ランタンを手にしていた俺はそれを一旦ハスフェルに持っていてもらい、受け取った鍵で急いで玄関の鍵を開けた。
とりあえず室内の明かりを灯してからランタンを消し、そのままリビングへ向かう。
手持ちの作り置きで夕食を済ませて少し飲んでから、もうその日は早々に解散になった。
何だかんだでハスフェル達も疲れていたみたいだ。
「はあ、疲れた〜〜」
部屋に戻った俺がソファーにそのまま倒れ込むように座り込んで放心していると、スライム達が手早く俺の装備を外してくれたよ。
しかも、靴と靴下まで脱がせてくれる徹底っぷり。
もちろん、サクラがあっという間に全身綺麗にしてくれたのでサラッサラで快適だよ。
「あはは、ありがとうな。では、ニニ〜〜マックス〜〜今夜もよろしく〜〜〜!」
笑って立ち上がった俺は、待ち構えていたニニとマックスの隙間に飛び込んでいった。
即座に中型犬サイズになったウサギトリオが俺の背中側に、足元にはカッツェとビアンカがくっついて収まる。横向きになった俺の腕の中にはマニが嬉々として潜り込んできて収まる。
「今夜の抱き枕担当はマニか。よしよし、いいモコモコっぷりだな」
笑ってモコモコなマニを抱きしめて胸元に顔を埋める。
はあ、この短い毛も良き良き。
「では消しますね」
俺がニニとマニのもふもふな腹毛と短い胸毛に埋もれて満喫していると、笑ったベリーの声が聞こえて部屋の明かりが消された。
「いつもありがとうベリー。おやすみ」
「はい、おやすみなさい」
真っ暗な部屋から笑ったベリーの返事が聞こえる。
目を閉じた俺は、そのまま気持ち良く眠りの海へ墜落して行ったのだった。ぼちゃん。




