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朝の賑やかなひと時

 翌朝、いつものニニの腹毛に埋もれて気持ち良く眠っていた俺は、久し振りに起こされる前に目を覚ました。

「うう……今、何時だ……? って、時計は無いってな」

 思わず呟き、仰向けに転がってぼんやりとテントを見上げる。

「あれ?珍しく今日は自分で起きたね? おはよう」

 声に目をやると、俺の顔の横でシャムエル様が笑って手を振っていた。

「おはよう。なんか知らんけど目が覚めたよ」

 大きな欠伸を一つして、起き上がって伸びをする。すると、俺の腹の横で熟睡していたタロンが、支えが無くなりコロリと横に転がった。

「ああ、ごめんごめん」

 笑ってニニの腹から落ちそうになっていたのを助けてやると、なんとそのまま俺の腕に寄っかかってまた寝てしまったのだ。

「こーらー起ーきーろー」

 いつもやられている意趣返しとばかりに、寝ているタロンの頬を突っついてやる。

「うわあ、実はタロンももふもふじゃん! 人差し指の第一関節、全部埋まったぞ」

 そう、タロンの頬を突っつこうと指を入れたら、なんと! 人差し指の第一関節全部埋まりました!

 ……頬毛もふもふじゃん。


「そっかー! タロンは頬の毛がもふもふなんだな!」

 笑った俺は、まだ寝ているタロンを抱き上げてその頬に、思いっきり頬擦りしてやった。

「おう、これはまた新たなるもふもふじゃん……」

 みっちりと詰まった猫独特の柔らかい毛に、俺は完全に撃沈した。

「誰か助けて! ご主人が私をもふり殺す気よ!」

 目を覚ましたタロンが、笑いながら俺の額に手を突っ張って逃げようとする。ああ、この肉球も堪らんぞ。

「大丈夫だ。もふって死んだ奴はいない」

 断言してやると、タロンだけでなく、シャムエル様や周りにいた従魔達まで皆笑い出した。

「仕方がないわね。早起きしたご褒美にちょっとぐらいならもふらせてあげるわよ」

 笑ったタロンが、長い尻尾の先で俺の鼻先を叩く。

「では遠慮なく!」

 叫んだ俺は、抱いていたタロンの腹に顔を埋めた。

「ずるい! 私もまぜてー!」

「私も私も!」

「私も混ざります!」

 小さな体に戻ったソレイユとフォールが一緒に飛びかかってきて、その上からフランマも飛びかかってきた。

 堪えきれずに声を上げて地面に転がった俺は、フランマのもふもふな尻尾に顔を叩かれて笑いながら更に転がった。それをソレイユとフォール、それからなぜか巨大化したタロンが追いかけてのし掛かってきた。

「なにするんだ。コラー!」

 笑いながら声を上げた俺は、一番近くにいたフランマの尻尾を撫でまくり、フォールの顔をおにぎりにしてやり、頭突きしてくるソレイユを捕まえて、大きな耳の根元を撫でさすってやった。それから最後に、巨大化したタロンには、いつもニニにしているみたいに腹毛の中にダイブして潜り込んだ。

「ご主人、朝から激しすぎー!」

 タロンの叫ぶ声に、俺達はもう堪える間も無く吹き出して笑いが止まらなくなった。



「お前ら、朝から何をしてるんだ」

 突然ハスフェルの声がして振り返ると、何故かテント側面のカーテン部分がいつのまにか全開に開けられていて、神様軍団全員から呆れたような目で見られていたのだった。



 ……沈黙。



「お、おはようございます」

 誤魔化すように笑って起き上がり、とりあえず挨拶をする。

「おはよう」

 皆それぞれに笑いながら挨拶を返してくれたのだが、男性陣は顔を見合わせてこう言ったのだ。

「ハーレムだな」

「確かに、これは紛う事なきハーレムだな」

「うん、モテる男は辛いな」

「全く、羨ましい限りだ」

「ただし、同族じゃないところが少々何だがな」

 最後のハスフェルの言葉に、その場にいた俺を含めた全員同時に大爆笑になったのだった。




「ああ、朝から笑わせてもらったよ」

 持参した椅子に座って、まだ皆して笑っているのを見ながら、俺はフライパンを総動員して在庫の無い目玉焼きを作っていた。

 目玉焼きが焼けたところで、それと一緒に昨日作った揚げ物を適当に取り出して並べて、パンや野菜、チーズも適当に並べる。コーヒーが無いので、今日は紅茶だ。

 手抜きと言うなかれ。

 これだけの人数の食事の面倒を見るのは、思いの外大変なんだよ。どうぞ、好きに食べろ。


 嬉々として色々取ってパンに挟んでいる神様達を見ながら、あんまり腹が減っていない俺は、鶏肉の入ったお粥を温める事にした。

 お粥を温めている間に、食パンをサクラに切ってもらい、マヨネーズとマスタードを塗って、チーズ入りトンカツとレタスを挟んだ簡単サンドイッチを大量に作る。

 七枚のお皿に、乗るだけ半分に切ったサンドイッチを乗せてやり、同じく七枚取り出した小皿にトマトを切って並べ、フライドポテトをその横に山盛りにする。

「これは昼飯な。サンドイッチと付け合わせでセットだから持って行ってくれよ。ええと、このまま収納出来るよな?」

 普通なら、このまま持って出掛けるなんて出来ないが、収納の能力持ちなら問題ないはず。

「ああ、大丈夫だぞ。全員そのまま持っていける。悪いな。何だか大人数になっちまって」

 チーズ入りトンカツに目玉焼きまで挟んだコッペパンを完食したハスフェルは、申し訳なさそうにそう言って頭を下げた。

「良いって良いって。料理するのは嫌いじゃないし。美味いって喜んで食ってくれるんだから構わないよ」

 笑って、温まったお粥をよそって椅子に座った。座ってこっちを見ているシャムエル様にも、小さな器にお粥をよそってやった。鶏肉も、小さいのを一欠片な。

 薄味のお粥は、体に染み渡るくらいに美味しかったよ。



 作ってやったサンドイッチの弁当を持って、大喜びで神様軍団は狩りに出かけて行った。

 一旦片付けて、改めて自分用に緑茶を淹れる。

「あ、ベリー。果物はいるか?」

 振り返って尋ねると、姿を現したベリーと目が合った。

「あれ? ベリー、また成長と言うか……年取ったような気がする」

 思わずそう聞くと嬉しそうに頷いた。

 今の姿は、ハスフェル達よりも上で、初老の爺さんみたいな感じだ。

「そうですね。ほぼ、元の姿に戻りましたね。本当に感謝します」

「良かったな。その姿だと賢者の精霊って言葉がピッタリっぽい」

 からかうように笑う俺に、ベリーも笑っている。

 果物を箱ごと出してやり、それぞれ食べ始めるのを見ながら、今日何を作るか考える。

「あと、作っときたいのは唐揚げと卵料理だな。じゃあ午前中はそれか。午後からは、在庫の少なくなったご飯を炊いて……」

 俺は今日の作るものを考えて呟きながら、お茶を飲んだ。


 さてと、また大量の仕込み開始だね。

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