森林エルフの皆さんに俺が教えた事?
「いやあ、本当にのんびりさせてもらいました。ありがとうございます」
「いえいえ、こちらこそ本当に色々と勉強になりました」
「お世話になりました!」
「本当にありがとうございます!」
その日、朝食を終えた俺達は、俺の部屋まで来てくれたサイプレスさん達各枝の代表の人達と笑顔で挨拶を交わしていた。
すっかり落ち着きここでのぐうたら生活を満喫させてもらった俺達だったけど、もう初夏の季節だしそろそろ出発してもいいんじゃあないかって事になったんだよ。
俺は、たまに料理もしつつ、ここでの従魔達とのもふもふ生活をグータラしながら満喫させてもらったし、従魔達の狩りを兼ねて外に出た時には、川辺で従魔達と童心に帰って心からの水遊びを楽しんだよ。
それから木の家にいる時にはサイプレスさん達枝の代表の方々と一緒に、彼らが作った果実酒を片手にいろんな話をしたりもした。
例えば、俺の元いた世界の活版印刷なんかの印刷技術の説明をしたり、まあこれは以前、ケンタウロスの長老達に話したのと同じ内容なんだけどね。他には俺の元いた世界のお店の種類や物流について、日常的に使っていた簡単な生活道具の話なんかをしたりした。
とは言ってもこの辺りは、万一にも危険な技術がうっかりこの世界にもたらされたりする事が絶対に無いように、必ずオンハルトの爺さんに同席してもらってかなり気を使って話をしたんだけどね。
印刷技術についてはケンタウロス達と連絡を取るって言っていたから、もしかしたら今後は、人間達の世界にも活版印刷や印刷技術が広がるかもしれないな。
それ以外に驚いたのが、俺が何気なく作った折り紙の鶴に彼らが大興奮した事。
口々に、何だそれは、立体の芸術品だと言って集まってきて大騒ぎになり、それを見て笑ったハスフェル達提供の紙をまずは正方形に切るところから始まり、急遽折り紙講習会が何度も開かれる事になったのだった。
ちなみに、そもそも折り紙の基本の形である正方形をどうやって作るかでも、ひと騒動あったよ。
もうそれはそれは、本当に大騒ぎだったんだよ。
俺は、いつもやっているように適当に直線に切った紙をまずは端を揃えて半分に折ってもう一回折り、両辺の同じ長さのところで印をしてそこ同士を直線で繋いで三角に切って拡げたら正方形になるって説明したんだけど、それを聞いた森林エルフの皆さんとオンハルトの爺さんは、何故か突然もの凄い勢いで何かの計算を始めてしまい、その後にそれぞれの答えを持ち寄って顔を突き合わせて真剣に相談を始め、俺には分からない数学的な方法で定規を使って正方形の図形を描いていたよ。
なんかよく分からないけど、スゲー。
教えてくれって言われて、そもそも自分がそんな何種類もの折り方を覚えているか不安だったんだけど、いざ正方形の折り紙が大量に出来上がったところで折ってみたら、子供の頃の記憶って案外覚えているもので、鶴やいくつかの動物を作っては拍手大喝采を浴びたのだった。
他には、子供の頃に新聞紙で父さんが折ってくれた被れる兜や振ったら音の鳴る扇、尻尾を引っ張れば羽ばたく鶴に始まり、母さんが俺が幼い頃に広告紙で折ってリビングのテーブルの上でのゴミ箱にしていた、何種類かの四角い箱なんかを見本を見せながら折り方の説明をすると、もう枝の代表の方々は揃って大興奮してしまい、テーブルの上は折り紙の動物達や箱や封筒など、次から次へと凄い勢いで量産されていったのだった。
それを見て面白がった俺が、思いつきで紙飛行機の折り方をいくつか説明して実際に作って部屋の中で飛ばして見せたところ、これまた全員揃って大興奮して大騒ぎになった。
その結果、この巨大な木の家の真ん中、広い吹き抜け空間に幾つもの紙飛行機が乱舞する羽目になり、何も知らずにそれを見た住民の皆さんが、揃って驚きあれは何だと言い出してこれまた大騒ぎになってしまって、後で俺はこっそり頭を抱える羽目になったのだった。
でもまあ、結果として住民の皆さんまで参加した紙飛行機飛ばし選手権が開催される事となり、どれくらい遠くまで真っ直ぐに飛ばせるのか、また、回転して飛ぶ紙飛行機や高速で飛ぶ紙飛行機など、俺が教えたのの数段上の性能を持った紙飛行機がこれまた量産される事になったのだった。
まあ、森林エルフの皆さんは頭が良いようで、ちょっと作り方のコツを教えただけで次々に新しい折り紙を開発していたから、元々の出来が良い方は、何をやってもすぐにものにしてしまうんだなあと密かに感心していたのだった。




