朝の一幕とこの後の予定?
ぺしぺしぺしぺし……。
ぺしぺしぺしぺし……。
ふみふみふみふみ……。
ふみふみふみふみ……。
ふみふみふみふみ……。
ふみふみふみふみ……。
カリカリカリカリ……。
カリカリカリカリ……。
つんつんつんつん……。
チクチクチクチク……。
こしょこしょこしょこしょ……。
ふんふんふんふん!
ふんふんふんふん!
ふんふんふんふん!
ふんふんふんふん!
「うん、起きてるって……」
いつもの従魔達総出のモーニングコールに起こされた俺は、そう答えつつ妙な違和感を覚えて目を開いた。
うん、普通に目が開いたぞ。
「ええと……?」
首を傾げつつ起きあがろうとしたその時、腹に響いたあまりの痛さに悲鳴をあげてそのまま転がる。
「ああ、内出血はありませんでしたがやはり痛みが出ていましたね。じっとしていてください。治療しますので」
苦笑いしたベリーの声の直後、お腹の辺りがふわって感じに温かくなり痛みが一気に引いた。ベリーが扱う高位の癒しの術だ。
「どうですか? まだ痛みますか?」
心配そうにそう言われて、何とか起き上がってスライムベッドから降りる。
「うん、大丈夫だよ。ありがとうな。てっか、今の状況ってどうなってるんだ?」
そう言って部屋を見回すと、何故だか全員巨大化した従魔達が泣きそうな顔でこっちを見ていた。
「ご主人起きた〜〜〜!」
「よかった〜〜〜〜!」
「よかったです!」
口々にそう言いながら飛びついてくる従魔達に押し倒され、スライムベッドへ逆戻りする俺。
「ちょっと、待て。お前ら、落ち着けって! もがぁ!」
抵抗する間もなく、揉みくちゃにされてもふもふの海へ沈む。
ついでに、飛びついてきたマニにあらぬところを踏まれそうになって慌てて転がって逃げる。
「だから落ち着けって!」
巨大化したティグの顔に抱きつき、引き起こしてもらったおかげで何とかもふもふの海からの脱出に成功したよ。
「はあ、死ぬかと思った。で、どうしてこういう状況になってるんだ?」
一人、飛びついてこなかった小さくなったルベルを見て、俺は思わず吹き出してしまった。うん、思い出したよ。
「ルベル〜〜〜またやったな〜〜〜その小ささの時に全力突撃は禁止だ!」
腕を伸ばしながらそう言い、笑って捕まえるとそのまま力一杯おにぎりにしてやる。
「す、すまぬ。一応加減はしたつもりだったのだが、足りなかったようだ。もっと弱くしなければならぬのだな」
全くの無抵抗でおにぎりにされつつ、ショボーンって感じに見事に凹んだルベルがそう言って俺の指を甘噛みした。
「お、甘噛みは上手く出来るようになったんだな。うんうん。これくらいの力加減で頼むよ」
笑ってもう一度力一杯おにぎりにして、無抵抗なルベルをまん丸にしてやったよ。
「成る程。小さくなったルベルの腹への突撃で、せっかく起きたのにそのまま気絶したわけか。で、今って……何時なんだ?」
窓の外はすっかり明るくなっているが、太陽がここからは見えないので時間がわからない。
でも、割とマジで腹が減っているのでかなりの時間になっていると見た。
「そうですね。間も無くお昼頃ですよ。ハスフェル達は、朝に一度起きたんですが、貴方からの応えが無かったのでそのまま二度寝したようですね。ちなみにまだ三人とも寝ているみたいですよ」
笑ったベリーの言葉に俺も吹き出し、とりあえず顔を洗う為に水場へ向かった。
ここの水場は、いつものように水が流れる水槽が無いので水遊びチームはついてこない。
顔を洗って口を濯いでから、一緒に来てくれたサクラに綺麗にしてもらって部屋に戻る。
手早く身支度を整え、一応いつもの防具も一通り身につけておく。
『おおい。まだ寝てますか〜〜〜?』
剣帯を締めたところで、一つ深呼吸をしてからトークルーム全開にして話しかける。
『ああ、おはよう。やっと起きたか』
『おはようさん。朝は全く反応がなかったからなあ』
『おはよう。おかげで俺達ものんびりしたよ』
すぐに笑った三人の返事が返ってきた。
どうやら寝ていると言っても、うたた寝レベルだったみたいだ。
『でも腹は減ったぞ』
『『確かに〜〜』』
笑ったハスフェルの言葉に、ギイとオンハルトの爺さんが揃って吹き出している。
『あれ、もしかして何も食べていないのか? じゃあ俺の部屋集合な』
『了解だ』
『よろしくな』
『ああ、了解だ』
別に、それぞれ食料はそれなりに持っているんだから好きに食べればいいのに、何故か皆、部屋で一人の食事はあまりしようとしないんだよな。
「確かに、ああ見えて寂しがりなのかも」
以前、俺の料理の師匠であるマギラスさんからこっそり言われた言葉を不意に思い出してしまい、思わず小さく吹き出した俺だったよ。
「ご主人、何を出しますか〜?」
サクラが跳ね飛んで来てくれたので、とりあえずいつもの朝食メニューを中心に色々と出してもらった。
すぐに来た三人と一緒にまずはしっかりと朝昼兼用の食事を楽しんだ。
「まあ、言っていたようにしばらくはここで骨休みを兼ねてゆっくりしよう。それで旅を始めるタイミングでバイゼンへ行って、こっそりルベルを従魔登録すればいい」
食後のコーヒーを飲みながらのハスフェルの言葉に、俺も頷いて部屋の奥にいるもふ塊を見る。
今はいつもの大きさになった従魔達が、くっつきあってのんびりと寛いでいる。
ルベルは小さなサイズのままで、今は使っていない椅子の背もたれにファルコとネージュと並んで留まり、何やら楽しそうに話をしている。
ルベルを見た時のギルドマスターの反応を考えて、ちょっと遠い目になる俺だったよ。