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夕食と今後の予定

「はい、順番に焼くから待ってくれよな」

 焼けた分から、順番にお皿に乗せていく。これだけ大人数になると、さすがに全員分を一度では焼けない。

 コンロは追加で買ったが、フライパンは数が無いからだ。

 嬉しそうに素直に頷く彼らを見ても、そのあまりの顔面偏差値の高さに、やっぱり現実の光景とは思えなかったよ。



 二枚ずつは食うだろうと予想して大量に用意した分厚いステーキを、強火で一気に焼き上げていく。

 カトラリーも数が無いからどうしようか困っていたら、自分の分はあるから大丈夫だと言われて笑った俺は、肉を焼いている間に、お皿にレタスもどきとフライドポテトを、それからブロッコリーもどきを盛り合わせていく。

 油の残ったフライパンに、サクラに頼んで作ってもらった超みじん切り玉ねぎを入れて火にかけ、スパイスと醤油、お砂糖とお酢を入れて軽く煮詰める。

 このソースは、ローストビーフのレシピを教えてくれたマギラスさん直伝のレシピだ。うん、見ただけで美味そうだ。


「良い香り!」

 目を輝かせる女性二人の歓声に苦笑いしたハスフェルが、最初に出したふた皿を彼女達の前に置いた。

「良いの? じゃあお先に頂くわね」

 軽く手を合わせて早速食べ始める彼女達を見て、スープも作っておけば良かったと、ちょっと後悔したよ。

 丸いパンとフランスパンみたいなのも切って出しておき、次々と肉を焼いてはソースを作るのを繰り返した。

 予想通り、二枚ずつ用意したステーキ完食! そして、まさかの女性陣も嬉々として二枚ずつ平らげたのには、もう笑っちゃったね。やっぱり皆、食う量がおかしい。

 最後の一枚を自分用に焼き、俺もテーブルについた。

「ご苦労様。はいどうぞ」

 ハスフェルから赤ワインの入ったグラスが渡されたので、お礼を言って受け取って食べ始めた。

 自分で作って言うのも何だが、このステーキソース、めっちゃ美味え。


 自分の仕事に満足してゆっくり食べながら、漏れ聞こえる彼らが話している内容に聞き逃せない言葉を拾い、思わず聞き返していた。

「はあ、何だって? 未開の地下洞窟だって?」

 俺の叫びに、これ以上無いくらいの嬉しそうな顔で、ハスフェルが振り返った。

「そうなんだよ。少し前から、カルーシュ山岳地帯の北側の峡谷に奇妙な気配を感じていていてな。先日、確認したんだが。ここからもう少し奥地に入ったところに、新しい地下洞窟が出来上がっているんだ。実に、二百年ぶりの新たな地だぞ。知った以上行かずにいられるかよ」

 そんな恐ろしい事を、嬉々として言わないでくれって。

「俺も気が付いていたぞ。一度コウモリを飛ばしてある程度の中の様子を確認したんだが、思っていた以上に広いみたいだったので困っていたんだよ。何が出るか全く分からないからな。それで、行くならハスフェルを誘って、入念な下準備をして行こうと考えていたんだ。そんな時にケンに会ったんだよ。それで、こっちの方が面白そうだし、地下洞窟の冒険は後回しで良いかって思っていたのさ。だけど、こいつらがいるなら、話は別だ。せめて、マッピングだけでもして来ようと思ってな」

 ハスフェルの後を、ギイが引き継いで説明してくれる。

「ええと、マッピングって事は、その謎の地下洞窟の地図を作るって事か?」

 初めて聞く言葉に質問すると、ギイは笑って頷いた。

「俺やハスフェルは、一度でも入った迷宮は、頭の中に地図として残す事が出来るんだよ。だから、行った事がある場所なら、次に入る時は全部分かる」

 断言されて、感心するしかなかった。それはちょっと羨ましい能力だね。だけど、俺は要らない。何故なら、そんな危険な場所には近づきたくないからだよ!



「まあ、そんな危険な場所へ行くのなら、サンドイッチくらいは作るから、弁当がわりに持って行ってくれて良いぞ。材料はふんだんにあるから、また作るしさ」

 何気なく言った俺の言葉に、全員が目を輝かせて、声を揃えて叫んだ。

「お願いします!」


 俺、なんか……神様を飯で手懐けちゃったみたいです。



 で、相談の結果、まず、明日は神様チームは当初の予定通りに普通のジェムモンスター狩りに行く事になった。まあ、クーヘンに渡す用だね。

 その間に、俺は彼らに持たせるサンドイッチを作っておく事になった。飲み物は持ってるらしいので、今回渡すのはサンドイッチだけだ。まあ、いろいろ作るつもりだけどね。

 それから、地下洞窟には、まだどんな危険があるか分からない状態で俺が行くのは危険すぎるって事で、俺の同行は予想通り却下され、ここで料理作りと言う名の留守番をする事になった。そして問題の未開の地下洞窟へは、神様チームだけが行く事になった。

「ここには、従魔達とシュレムも置いて行くから、相手をしてやってくれるか」

「え? シュレムは行かないのか?」

 従魔達を置いて行くのは、まあ予想通りだったんだが、シュレムを置いて行くと言われて驚いた。

「こいつがいると、万一何かあっても、俺達は彼のいる場所へ瞬時に戻る事が出来るんだよ」

「瞬時に?」

「そうだ、彼は我々にとって、何処にいても見える目印みたいなものでな。緊急時に跳躍の術を使う際の良い目印になるんだよ」

「ええと、つまり万一洞窟内でなんらかの緊急事態が起こっても、シュレムがここにいれば、全員ここへ帰れるって事だな」

「そうそう、ケンは異世界人で、この世界の(ことわり)なんて知らない筈なのに、理解が早くて助かるわね」

 銀髪のシルヴァさんが笑ってそう言い。シュレムと手を叩きあって笑っている。

「いやあ、理解してるかって聞かれたら……ちょっと違うと思うぞ。どっちかって言うと、理解する事を放棄してる気がするんだけどな」

 しみじみ言った俺の言葉に、男性陣が笑っている。

「だけど、拒絶はしないでしょう?」

 シルヴァさんの言葉に、俺は驚いて彼女を見た。

 思いの外真剣なその顔に見つめられて、また不整脈が出た。俺、もう駄目かも……。


「拒絶って、そんな事したって意味無いでしょう? 現実に目の前にあなた達はいるわけだし、否定した所で何か変わるわけも無い」

 そう言って首を振ると、シルヴァさんは苦笑いして隣のハスフェルを見た。

「頭で分かってても、否定したくなるのが人間だと思ってたんだけどね」

「まあ、彼は我らの側に近いからな」

「全くじゃ。シャムエルの奴も、なかなか上手く作りおったな。見たところ、何処にも齟齬はない」

 出会った時のハスフェルにも言われたけど、オンハルトさんにも自信を持って断言されたのでちょっと安心した。

「もう、私だってやる時はやるよ! まあ、ちょっと後から色々と調整はしているけどね」

 シャムエル様が胸を張ってそう言うと、笑ったハスフェルがまぜっ返した。

「大雑把だけどな」

「ですよねー。やっぱり大雑把ですよねー」

 片付けを終えて、のんびり飲んでいた俺も、思わず軽口に乗った。

「ケン、酷い! 私が何を……えへへ、色々やらかしてるね。ごめんね。でも、何とかなったから良いじゃん!」

 右肩に座っていたシャムエル様がそう叫んで、飛び跳ねて俺の首にもふもふダンスで体当たりを始めた。

「こらこら、痛いからやめてってば……ああ、やっぱりこの尻尾。堪らんよ」

 腹の毛も最高だが、やっぱりシャムエル様のナンバーワンのもふもふは、この尻尾だと思うぞ。

 両手で捕まえて、笑いながら手の中で転がるシャムエル様の腹毛に、俺は頬や額を擦り付けてもふもふっぷりを堪能したのだった。

 一頻り満喫して顔を上げたら、呆れたような神様チームの視線を一気に集めて、俺は笑って誤魔化したのだった。

 良いじゃないか! もふもふは俺の元気の元なんだからさ!

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