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オレンジヒカリゴケの群生地とサクラの新技?

「はあ、なにこのもふもふな幸せ空間……」

 マニに背中から抱きついた俺は、目を閉じてマニの後頭部に鼻先を突っ込みつつ小さくそう呟く。

 一応短毛種っぽいマニだけど、カッツェよりも若干毛は長くてかなり柔らかいのでこうして抱きついていると本当に体の前半分が全部もふもふに埋もれている感じだ。

 嬉しそうに笑って俺に頭を擦り付けてくるマニにもう一度力一杯抱きついた俺は、そのまま目を閉じて文字通り全身で柔らかなもふもふを満喫していたのだった。

『おおい、そろそろ起きろよ〜〜』

 しばらくして不意に頭の中に響いた笑ったハスフェルからの呼びかけに、うっかり寝かけていた俺は慌てて飛び起きた。

「危ない危ない。いくらスライム達が確保してくれていると言っても、さすがにこの高度で熟睡するのは駄目だよな」

 笑いながら顔を上げたところで、マニの後頭部にどう見ても俺の涎の跡がしっかりと付いているのを見て、慌ててサクラに綺麗にしてもらうように頼んだ俺だったよ。



「ううん、いつものファルコの背の上なら飛びながら下の景色が見えるけど、これだけ大きな背中に乗っていたら下の景色が全然見えないよ」

 周りを見たところで思わずそう呟く。

「ご主人、そろそろオレンジヒカリゴケの群生地に到着ですよ」

 その時、巨大化したローザが軽く羽ばたいてすぐ近くまで来てそう教えてくれる。

「そうなんだ。あそこってほぼ全滅に近いくらいに酷い有様だったもんなあ。あれからどれくらい回復したのか楽しみだよ」

 大地の神レオの眷属で、巨大ミミズでイケボなウェルミスさんが請け負ってくれたから大丈夫だとは思うけど、あの惨状を思い出したらやっぱり心配になる。

 だけどこの万能薬が不足する事態は、世界の安全を守ってくれるハスフェル達に万一の場合があれば大きな負担をかける事になる。この状況は出来るだけ早く解消したいのが本音だから、少しでもいいから採取出来る状態になっていますように。

 心の中で半ば祈る様にそんな事を考えていると、ルベルが広げていた翼を少し畳むようにしてゆっくりと降下を始めた。他のお空部隊の子達もそれに続く。どうやら群生地の場所に到着したらしい。



 地響きを立ててルベルが地面に降り立ったのを見て、即座にスライム達が分解して地面に転がっていく。

 伏せていた従魔達が次々に起き上がって背中から飛び降りるのを見て、俺は慌てて側にいたマックスにしがみついた。

「待った! 降りるなら俺を乗せてくれよ」

 さすがに伏せてくれていてもこの高さから降りるのは俺には大変そうなので、思わずそうお願いする。

「もちろんですよ。ではどうぞ!」

 尻尾扇風機状態になったマックスが嬉しそうにそう言ってくれたので、笑ってその背中に乗せた鞍に跨る。

「では行きますね!」

 俺がちゃんと座ったのを確認したマックスは、そう言うなり、なんとその場から一息にジャンプした。

「どっひぇ〜〜〜〜〜!」

 予想以上の大ジャンプに情けない俺の悲鳴が響き、大きく弧を描いて地面に降り立つマックス。

 そして同時に吹き出すハスフェル達三人と従魔達。

「ご主人、危ないですよ〜〜」

 いっそ呑気なアクアの声の後、着地の際に勢い余って吹っ飛びそうになった俺の体は即座に確保されていたよ。

「あはは、ありがとうな。おお、すげえ!」

 即座に俺の下半身をしっかりと確保してくれたアクアを撫でながらお礼を言い、周囲を見て思わず声を上げた。

 だって、見える範囲が全て芝生のような生き生きとした緑色の草、オレンジヒカリゴケに覆われていたんだからさ。

「おお、ここまで回復していれば好きなだけ採取出来るな」

「いやあ、見事だ。さすがはウェルミスだ」

「ふむ、あれだけ酷い状態からひと冬の間に、ここまで回復してくれるとはな。いやあ、見事だ」

 軽々とルベルの背中から飛び降りてきた三人の感心したような呟きに、マックスの背から降りた俺もこれ以上ないくらいの笑顔で何度も頷いたのだった。



「じゃあ、ここからは手のある俺達の出番だな」

 採取用の大きなボウルを手にした俺の言葉に笑顔の三人も揃って頷き、それぞれに大きなお椀を取り出して散らばり早速採取を始めた。

 ベリーとカリディアも採取を手伝ってくれている。

「じゃあアクアがお手伝いしま〜す!」

 側にいたアクアがボウルを持ってくれたので、俺は両手を使ってひたすらオレンジヒカリゴケを引きちぎってはボウルに入れ続けた。

 ずっと屈んで採取していたらちょっと腰に来たので途中からはアクアに小さな椅子になってもらって座り、そのまま移動してもらいながらの作業になったよ。採取に合わせて動く椅子、超楽ちんだったね。



「ねえご主人、根っこを傷めなければ大丈夫なんだよね?」

 しばらく黙々と収穫作業を続けていたんだけど、すぐ側で俺のする事を見ていたサクラが、突然そう言ってビヨンと大きく伸び上がった。

「ええと、もちろん手伝ってくれるなら嬉しいけど、根っこを傷めずに収穫出来るのかな?」

 確か、スライムがオレンジヒカリゴケをを収穫しようとしたら、一旦丸ごと飲み込んでから千切るから根っこを傷めてしまうと聞いた覚えがあるので、一応ここは確認しておかないとな。

 採取の手を止めた俺が改めてそう尋ねると、何やら考えていたらしく伸びたり縮んだりしていたサクラが不意にもう一度ビヨンと大きく伸び上がってから俺の目の前に跳ね飛んできた。

「ご主人、これ、ちょっとお借りしてもいいですか?」

 そう言って差し出されたのは、以前バッカスさんからいただいたナイフだ。

 一応、コレクションしているナイフは頂き物を含め、順番に時々交換しながら使っている。

 あれは確か、次に使う予定のナイフだったはずだ。

「お、おう、もちろん構わないよ」

 驚きつつ頷いた俺がそう答えると、嬉しそうにぴょんと一回だけ跳ねたサクラは、触手で持ったナイフを抜いて鞘を収納すると少し離れた場所へ転がって行き、なんとそのナイフを使って触手で掴んだオレンジヒカリゴケを切ってそのまま収納したのだ。

 少し離れたところで採取していたベリーが、それを見てもの凄い勢いですっ飛んできた。

「す、凄い。今サクラちゃんはナイフを使ってオレンジヒカリゴケを採取しましたね。あの、もう一度やって見せてくれますか!」

「うん、いいよ〜〜」

 得意げにそう言ったサクラが、次々に周囲のオレンジヒカリゴケを触手でまとめて掴んでは、ナイフで切って収納するのを繰り返した。

「こ、これはまた新たな発見ですね。誰が教えたわけでもないのに、スライムが自分で考えて道具を使って採取するなんて……こんな事例は、見るのも聞くのも初めてです。本当に、ああ、本当に外の世界には驚きがいっぱいですね」

 感動のあまり目を潤ませているベリーの呟きを聞いて、もう一回ビヨンと伸びあがるサクラだった。

 俺には分かるぞ。あれはドヤ顔だ。



挿絵(By みてみん)

2025年7月16日、アース・スターノベル様より発売となりました「もふもふとむくむくと異世界漂流生活」十一巻の表紙です。

どうぞよろしくお願いしますm(_ _)m


今回も、れんた様が最高の表紙と挿絵を描いてくださいました。

冬のバイゼンで、やっぱり色々と大騒ぎです。

草原エルフの双子のお兄さん達も登場です。

どうぞお楽しみに!

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― 新着の感想 ―
そのうちスライムたちは、2足歩行とかしそうですね その前に早駆け祭でスライムレースも出来そう
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