ルベルの背中の上
「じゃあ、行くとするか」
食事を終えて一休みしたところで、そう言った俺の言葉に立ち上がったハスフェル達も笑顔で頷く。
「じゃあ、今度こそルベルに乗せてもらおう」
笑った俺がそう言うと、マックスの首輪に取り付けたカゴに収まっていたルベルがひょこんと顔を出した。
今は超ミニサイズになっているよ。
「もちろん喜んでどこへでも乗せて差し上げるぞ。だが、我はそのオレンジヒカリゴケの生えている場所を知らぬがどうすれば良い?」
とりあえず籠から飛び出してきて、ググッとマックスサイズにまで大きくなったルベルの困ったようなその言葉に、お空部隊の面々が得意そうにパタパタと羽ばたいて集まってくる。
「じゃあ私達が先行してオレンジヒカリゴケの群生地まで案内してあげるからね」
「ルベルは大きくなって皆を乗せてあげてちょうだい」
得意そうなローザとブランの言葉に、他のお空部隊の子達も笑っている。
「じゃあそれで頼むよ。ほら行くぞ」
って事で、マックスサイズのルベルと一緒に、俺達はそれぞれの従魔達を引き連れて部屋から出て外へ出る扉へ向かった。
扉を出たところでルベルが一気に大きくなる。
「うおお、デカい! これが最大サイズなのか?」
首が痛くなるくらいに見上げた俺の言葉に、しかしルベルは笑って首を振る。
「さすがにここで最大サイズになれば、我の重みでこの巨木であっても倒れかねないからな。すまぬが、森の外までは皆に手分けして乗ってもらうほうが良さそうだ」
「ええ、これでもまだ最大サイズじゃあないんだ。お前、どんだけデカいんだよ」
苦笑いした俺は、少し考えてファルコを見る。
「じゃあ、森の外まではファルコに乗せてもらおうかな」
「そうですね。ではどうぞ」
笑ってそう言い、一気にいつもの俺達を乗せる時の大きさになったファルコにとりあえず乗せてもらう。
いそいそとマックス達が上がってきて、スライム達がしっかりと確保してくれる。
「じゃあ、まずは森の外へしゅっぱ〜つ!」
何故かファルコの頭の上に乗ったシャムエル様の号令一下、手分けしてその背中に従魔達を乗せたお空部隊の子達が次々と羽ばたいて飛び立って行く。
そのまま森の外れ付近まで、まずはファルコの背に乗ってゆっくりと飛んでいった。
ハスフェル達もそれぞれ自分の従魔の翼を持つ子達の背中に乗り、ファルコのすぐ後ろをついて来ている。
巨大化したルベルは、編隊飛行のお空部隊の子達の後ろをおとなしくついてきている。
「うわあ、デカすぎ〜〜」
広い草地に降り立った俺達は最大サイズにまで巨大化したルベルを見て、もう全員揃ってあんぐりと口を開けて目を見開いていた。
「ええ、テイムした時って夢中だったけど、こんなにデカかったっけ?」
冗談抜きで首を痛めそうなくらいに真上を見上げてそう呟くと、笑ったルベルが俺のすぐ目の前まで長い首を伸ばしてきた。
俺の視界一面が全部ルベルの顔になる。
「うむ、ご主人にテイムしてもらった後に大きくなったであろう? 今は、あの時と同じくらいの大きさだよ。これが我の最大の大きさだ。ちなみにハスフェル達と戦った時は、もう少し小さかったな」
軽く広げた片方の翼だけでも、巨大化したファルコ達が翼を思い切り広げた最大サイズよりもまだ大きいくらいだ。確かにこれなら俺とハスフェル達、それから全員の従魔達がその背に乗っても余裕の大きさだ。
お空部隊の子達も、巨大化したルベルを見て揃って苦笑いしている。
「まあいい。それじゃあ群生地までの道案内はお空部隊の子達に任せて、俺達は背中に乗せてもらおう」
笑った俺がそう言うと、ハスフェル達も笑いながら集まって来た。
伏せるようにしてじっとしてくれているルベルの腕から背中に上がり、首の付け根辺りに俺を先頭にハスフェルとギイとオンハルトの爺さんがまずは並んで縦一列になって座る。
即座にアクア達が跳ね飛んできて俺達の下半身をしっかりと確保してくれる。
「じゃあ我らも失礼しますね」
マックスの声が聞こえた直後、全員がすごいジャンプ力で一斉に背中に飛び乗ってきた。
「うわあ、お前らはこの高さもひとっ飛びなんだ。凄えな」
呆れたような俺の言葉に、揃ってドヤ顔になる従魔達だったよ。
「じゃあ、皆も確保しま〜〜す!」
ハスフェル達が連れているスライム達も次々に跳ね飛んできて、俺達の左右に分かれて収まった従魔達をこれまたしっかりと確保してくれる。
ちなみに、俺の左右にマックスとニニが座っていて、マックスの横にはビアンカが、ニニの横にはカッツェが並んで座っている。巨大な魔獣達がそれだけの幅をとって乗っても、ルベルの背中はまだまだ余裕の広さだ。
そしてマニは、何故か俺の前側に収まって座りピッタリと全身で俺とくっついているよ。ちょうど俺が、マニの背中に抱きつくみたいな感じだ。
一応小さくなっている他の従魔達はビアンカとカッツェの外側や俺達の後ろ側に集まってそれぞれ座っている。
もちろんスライム達がしっかりと確保してくれているので、ファルコ達と違って掴まるところの無いツルツルなルベルの背中の上でも落ちる心配は皆無だよ。
「では、行くとしようか」
大きく翼を広げたルベルがそう言い、軽く数回羽ばたくと巨大な体はまるで綿のようにふわりと浮き上がりそのまま一気に上昇していった。
巨大化したファルコがルベルの前につき、他の子達もルベルを取り囲むようにこれまた綺麗な編隊飛行になる。
「こっちですよ!」
得意そうなファルコの言葉と同時に、俺達はいつも以上の速さで一気に飛んでいったのだった。
いやあ、速い速い。
予想以上の速さに、その背中に並んで乗っている俺達は、もう揃ってただただ呆気に取られていたのだった。




