ルベルのモーニングコール?
ぺしぺしぺしぺし……。
ぺしぺしぺしぺし……。
ふみふみふみふみ……。
ふみふみふみふみ……。
ふみふみふみふみ……。
ふみふみふみふみ……。
カリカリカリカリ……。
カリカリカリカリ……。
つんつんつんつん……。
チクチクチクチク……。
しょりしょりしょりしょり……。
ふんふんふんふん!
ふんふんふんふん!
ふんふんふんふん!
ふんふんふんふん!
「うん、だから起きてるってば……」
二度目のモーニングコールに叩き起こされるも、やっぱり目が覚めない俺。
「これは驚きだな。これだけ起こされても起きないとは……話に聞いても信じられなかったが、本当のようだな。起きる気配が全くない」
耳元で聞こえるのは聞き慣れない低い声。うん。あれはルベルの声だな。
「今日は……二日酔いだから、さらに起きられないだけで……普段は……」
「普段もこんな感じよね!」
俺の言葉をぶった斬る勢いで、フランマがそう言って笑っている。
「確かにいつもこんな感じよね!」
フランマの言葉に、他の子達も笑いながらそうだと言ってはまた笑っている。
「って事で、起こすからルベルも一緒にやりましょうね!」
「いくわよ〜〜〜!」
「おお〜〜!」
得意げなローザとブランの掛け声に、メイプルとファルコ、それからネージュに続いてルベルの低い声までが揃って声を上げる。
ちょっと待て! ルベルに噛まれたらさすがに冗談では済まないぞ! 起きろ俺の体! 緊急事態発生だ〜〜〜!
内心で大いに焦るも、残念ながら寝汚い俺の体がしたのはわずかに寝返りを打っただけ。
あ、今朝の抱き枕はタロンか。ううん、この小ささもいい感じだ。
現実逃避していると、軽い羽ばたきの音の直後に俺の耳たぶと上唇、それから鼻の横辺りをガリっとやられた。
その直後に脇腹を二箇所、ペンチでつねられたみたいにこちらもガリっとやられた。
「うぎゃ〜〜〜〜〜〜〜!」
あまりの激痛に悲鳴を上げた直後に、俺の鳩尾あたりを力一杯蹴っ飛ばして逃げていくタロン。
「うげっ!」
もう一回悲鳴を上げて転がる体。
その直後に、いつもならそのままスライムベッドから転がり落ちるはずが、何故か固い何かに当たって止まる。
「成る程。こういう事か。では遠慮なく」
笑ったルベルの声が聞こえた直後、もう一回鳩尾辺りに何かが当たる。
「ふごっ!」
予想外の強力な攻撃に、腹から空気が抜ける。これ空腹じゃあなかったら絶対腹から中のものが逆流してるぞ。
そしてそのまま遠くなる俺の意識。
「ふむ、もう少し弱くしないとこれでも強すぎるのか」
聞こえてきたのは、戸惑うようなルベルの呟きだった。
ぺしぺしぺしぺし……。
ぺしぺしぺしぺし……。
ふみふみふみふみ……。
ふみふみふみふみ……。
ふみふみふみふみ……。
ふみふみふみふみ……。
カリカリカリカリ……。
カリカリカリカリ……。
つんつんつんつん……。
チクチクチクチク……。
しょりしょりしょりしょり……。
ふんふんふんふん!
ふんふんふんふん!
ふんふんふんふん!
ふんふんふんふん!
「ご主人大丈夫〜〜〜?」
「ねえご主人目を開けて〜〜〜!」
「生きてるわよね〜〜〜〜?」
いつものモーニングコールのはずが、何故か半泣きになっている従魔達の声に、俺はなんとか目を開いた。
「ご主人起きた〜〜〜〜!」
「よかった〜〜〜!」
「ご無事でよかった〜〜〜」
「よかった〜〜〜!」
何やら大感激している従魔達。
そして、めっちゃ痛い俺の腹。それから酷い喉の渇きと、頭が割れそうなくらいの酷い頭痛。まあこっちは二日酔いのせいだな。
「ご主人、これ飲んでください!」
焦ったようなサクラの声が聞こえた直後、いつもの美味しい水の入った水筒を渡された。もちろん、すぐに飲めるように蓋を開けてくれる気遣いっぷり。
「おお、ありがとうな」
何とか体を起こして水筒を受け取り、一気に飲む、飲む、飲む。
「はあ〜〜〜めっちゃ美味しい!」
身体中に染み渡るような美味しい水にそう声をあげ、残りも一気に飲み干す。
おかげで何とか酷い頭痛と喉の渇きはおさまったみたいだ。
そこまでしてようやく周りを見る余裕が出来た俺は、目に飛び込んできた光景に思わず吹き出したよ。
何しろ、小型犬くらいの大きさになっていたルベルを、巨大化したティグとセーブルが左右から思いっきり押さえ込んでいたのだ。
「申し訳ありませんご主人。人間の体がいかにひ弱ですぐに壊れてしまい、またすぐには回復しない事をしっかりと言い聞かせておきますので!」
何故かドヤ顔のセーブルにそう言われてもう一回吹き出す俺。
「あはは、もしかして最後の腹への一撃は、ルベルのモーニングコールだったのか。あれはさすがに遠慮したい。マジで死ぬかと思ったよ」
「す、すまぬ。あれでもかなり手加減したのだが……我はモーニングコールには参加せぬ方が良さそうだ。今後は横で見学させてもらう事にする」
押さえ込みから解放されたものの、ショボーンって感じに思いっきり凹んでいるルベルの言葉に、俺はもう一回吹き出してから、近くへ飛んできたルベルを両手で力一杯抱きしめてやったのだった。