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神様仲間大集合

「うわあ、なんだよあの無駄に高い顔面偏差値は!」

 思わずそう呟いた俺の言葉に、同じく右肩からハスフェル達を見て驚いていたシャムエル様が吹き出した。

「上手いこと言うなあ。その表現ピッタリだね」

 手を叩いて大笑いしているシャムエル様を見て、俺はもう笑うしか無かった。

 ハスフェルとギイは、俺の感覚ではおそらく五十代の超マッチョイケおじだ。

 その二人と並んで見劣りしないってどれだけ!



 背後にいる全員が、冒険者のような出で立ちで、腰には剣を差している。しかも、そのうちの二人は女性だった。

 その女性のうちの一人は大きな弓矢を背負っているし、男性のうちの一人は巨大と言ってもいい長い槍を手にしていた。

「おかえり。そんなに大人数で来られても、椅子はないぞ」

 正直言って、めっちゃ驚いてるんだけど、それを認めるのも悔しくて、平然と言ってやった。


「ご心配には及びませんよ。我々も基本的な装備は持参しております」

 ハスフェル達のすぐ背後にいた、焦げ茶色の髪の男性が、笑顔でそう言って右手を差し出してきた。

 あれ?この人、肌の色が俺に近い。顔立ちは違うけどアジア系なのかな?

「初めまして、レオナルドエンゲッティと申します、どうぞ、レオとお呼びください。貴方に最大限の感謝を。異世界人よ」

 ああ、久々にこの呼び方来たよ。

 苦笑いした俺は、とにかく差し出された右手を握り返した。

「初めまして、ケンです。あの、その件に関しては本当に俺に言われても困るので、お礼も感謝もどうぞこちらにお願いします」

 右肩に座るシャムエル様を左手で示すと、レオはそれを見た瞬間、美男子にあるまじき勢いで吹き出した。


「ブフォ!」


 そして俺の右手を握ったまま膝から崩れ落ち、地面に左手をついてしゃがみ込んで、ひきつけを起こしたかのように大笑いしているのだ。

「だ、大丈夫ですか?」

 慌てて手を離して覗き込む。

「シャ……シャムエル……お前、一体……その姿で何をしているんだ」

「ええ?可愛いでしょう? ケンは、もふもふした可愛いのが好きみたいだからさ」

「もふもふ……」

 そう繰り返しながら、地面に突っ伏して大笑いしている。


 まあ、あのドラゴンの姿を知ってたら、確かに今の姿は何事だよ! ってなるよなあ。

 遠い目になる俺に、また別の右手が差し出される。



「初めまして、異世界人よ。感謝は要らぬと言われるが、それでは我らの気が済まない。聞き流してくれれば良いので、せめて面と向かって言わせてくれ」

 大きな槍を左手に持ち替えた彼に、聞き流せないから言ってるんだけどな、と、内心で苦笑いしながら俺は、肩を竦めて差し出された大きな右手を握り返した。

「ケンだよ。よろしく。それじゃあ一度だけな。簡潔に!」

 笑った俺の言葉に、全員が目を瞬かせて小さく笑った。

「成る程、それは良い考えかもしれんな。では改めて。エリゴールバイソンだ。どうぞエリゴールと呼んでくれ。貴方に心からの感謝と謝罪を。異世界人よ」

 笑って肩を竦める俺に、見事な赤毛のエリゴールも笑ってその手を離した。



「グレイリーダスティンよ。初めまして異世界人のお兄さん。貴方が来てくれた事を、心から歓迎するわ。どうぞ、グレイって呼んでね」

 次にそう言って右手を差し出してくれたのは、どこのモデルだよって言いたくなるような、超ゴージャスな美人だった。

 背は俺より確実に高い。しかも物凄い砂時計体型。やや黒っぽい長い銀髪をポニーテールにしている。

 ゲームのキャラなら、星五つは確実だね。

 俺が横に立ったら、確実に負ける。見劣りするなんてもんじゃ無い。絶対、俺はモブの村人レベル1確定だね。

 ちょっと悲しくなってきた。

「ケンです、よ、よろしく……」

 差し出された手は、吸い付くみたいにな柔らかな手で、握った瞬間、物凄い勢いで心臓が跳ねたよ。


 あ、不整脈かも……。



「シルヴァスワイヤーよ。シルヴァって呼んでね。異世界人のお兄さん」

 気安く話しかけてきてくれたのも、これまた超美人。弓を背負ったその女性は、ハスフェルと対になるような見事な銀髪で、緩やかな癖毛の髪を長く伸ばしている。背は俺と変わらないくらいだから、この中では小さい方だが、絶対に彼女も普通の女性よりも小さいわけでは無いと思う。

 握手をした後、俺の右肩にいるシャムエル様を大喜びで突っついてずっと笑っていた。



「オンハルトロッシェだ。オンハルトと呼んでくれれば良い。其方に幸あれ。異世界人よ。我らの感謝は常に其方の上にある」

 厳かな神様っぽい声でそう言ったオンハルトは、五人の中では恐らく一番の年長だろう。初老の爺さんって感じで、短く刈り上げた髪は、見事な白髪だった。

 そして、驚いた事にその彼の右肩には、以前一度だけ挨拶を交わした小人のシュレムが、笑顔で座ってこちらに向かって手を振っていたのだ。

「また会ったね、異世界人よ。早駆け祭りに出るんだって? 是非とも頑張ってくれたまえ、応援しているよ」

 目を輝かせてそんな事を言われて、もう乾いた笑いしか出なかったね。





 持参した椅子をそれぞれ取り出し、何故か全員が俺のテントで寛いでいる。仕方がないから、紅茶を出しておいた。

 女性二人は猫族軍団の所へ行き、姿を表したベリーやフランマと一緒に大喜びで何か話しながらじゃれ合っているし、レオ達男性三人は、マックスとシリウス、それからチョコとデネブに駆け寄って、大興奮しながらハスフェル達と何やら話をして笑っていた。

 顔面偏差値が高すぎるお陰で、その光景には全く現実味がなくて、何と言うか……映画のワンシーンを見ているみたいだよ。



「なあ、あれって全員神様だよな?」

 俺の肩に戻って来たシャムエル様に小さな声でそう尋ねると、シャムエル様は、ちっこい目を細めて大きく頷いた。

「彼らは皆、私の古くからの大事な友達だよ。こんなに一気に揃うなんて、滅多に無いんだよ」

「ちなみに、何の神様か聞いても良い?」

 見ていたが、さっぱり分からん。

 俺の言葉に、シャムエル様は少し考えてこっちを見た。

「ええとね、レオは大地の神。農業を始めとする、豊穣、つまり恵みの神だよ。エリゴールは炎の神。グレイは水の神。シルヴァは風の神だよ。世界を一から構築するには、この四人の協力は絶対に欠かせないんだ。だけど、普段はあんな風に人型の実体を取る事は無いよ。多分、ハスフェル達に呼ばれて、大急ぎで人型を作ってきたんだと思うね」

 そう言って、シャムエル様は嬉しそうに目を細めた。


 ほお、成る程……うん、さっぱり分からん!


「白髪のオンハルトは、装飾と鍛治の神だよ。あ、ヘラクレスオオカブトの剣を作るなら、彼に頼んで素材に守護をもらっておくと良いよ。最高の素材に昇華してくれるからね」

「昇華?」

「そう、ええと……」

「つまり素材を精錬する際に、最高値が出るようにしてやるんだよ。普通はそんな事頼まれてもしないが、お前さんになら幾らでもしてやるぞ」

 シャムエル様が説明に困っていると、覗き込んだオンハルトに横から突然にそう言われて、俺は思わず飛び上がった。


 すると、アクアが俺の足元に来て、物言いたげにビヨンビヨンと飛び跳ね始めた。

「こいつが、それを持ってるのか?」

 オンハルトに聞かれて、頷く。

「ああ、ヘラクレスオオカブトの角ですか? ええ、アクア、出してくれるか」

 俺の言葉に飛び跳ねるのを辞めて、アクアがヘラクレスオオカブトの角を二本取り出してくれた。

「ほお、やや小振りだがなかなかに上物だな」

 笑顔でそれを手に取りそっと撫でると、二本の角の先に順にキスをしたのだ。

 その瞬間、一瞬だけ二本の角は光ったように見えた。

「お返しするよ。これなら良い剣が作れるだろう。工房都市へ行けば、ドワーフ達が大喜びで作ってくれるぞ」

「あ、ありがとうございます」

 受け取って、反射的にお礼を言って、アクアに返す。

 平然とアクアも返したヘラクレスオオカブトの角を飲み込んでくれた。


「あの、シュレムは? 彼の主人ってのは、何の神様なんだ?」

「ああ、彼とは会ってるって言ってたね。あのね、怒りの神だよ。だけど、別に怒らせなければ無害だからね」

「怒らせなければ?」

「怒らせなければ」

 顔を見合わせて、同じ言葉を言い合った俺とシャムエル様は、同時に遠い目になり乾いた笑いを零したのだった。


 駄目だ。俺の許容量を完全に超えてる。

 幾ら何でもパーティーの人数が多すぎです!


「心配はいらないよ、ハスフェルやギイと違って、我らがここにいるのは期間限定だからね。ただの祭り見物だよ。どうぞ気にしないでくれ」

「ええ、そうなの?」

「ああ、今回の我らは、言ってみれば其方達の護衛役だよ。気にせずいつも通りにしてくれれば良い」

 五人の中では、見かけは一番若そうな赤毛のエリゴールが笑ってそう言い、紅茶を飲み干した。

 そう言われても、無視する訳にはいかないよな。


「ええと、夕食はステーキを焼くつもりだったんだけど、どうする? 皆食べますか?」

 俺の質問に、五人が驚いたように一斉に振り返った。シュレムもオンハルトの肩の上で、同じく驚いたようにこっちを見ている。

「まあ、今なら食材は豊富にあるから、大したものは無いけど少しぐらいなら出せますよ。どうする?食べますか?」


「食べる!」


 一斉に声を揃えて返事されてしまい、堪える間も無く吹き出した。

「了解、じゃあ、ちょっと待っててくれよな」

 ありったけのコンロを取り出して、更にフライパンをサクラから取り出す俺を見て、ハスフェルがニンマリと笑った。

「じゃあこうしよう。明日も俺とギイはジェムモンスター狩りに行くから、お前らも手伝え。この顔ぶれなら、あそこへ行けるぞ」

「そうだな。二人だとちょっとキツイが、これだけいれば確実だろうさ」

 何やら二人が不穏な会話をして盛り上がってる。

 七人と小人が、顔を寄せて嬉々として相談を始めたのを見て、俺はここにいる間中、ずっと料理の仕込みをしようと誓ったのだった。

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― 新着の感想 ―
神様's人間の冒険者ではムリなモンスター狩ってきそう(;^ω^)
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