お疲れ様でした!
「なあ、ところで、俺は腹が減ったんだけど、お前らはどうだ?」
「確かにぺこぺこだよ。朝から休む間も無く大騒ぎだったからな」
「確かに、言われてみれば腹ペコだな」
笑いが収まったところでハスフェルがそう言い、ギイとオンハルトの爺さんが揃って頷きお腹を撫でながらしみじみとそう言って笑っている。
確かに俺も空腹な事を今更ながら自覚して、もう一回揃って吹き出したのだった。
「た、確かに、もう昼飯の時間はとっくに過ぎているな。俺も腹減ってペコペコだよ。ええと、ここで食べても大丈夫かな?」
今、俺達がいるのは元々アサルトドラゴンの群れがいた、湖横にある草地の端っこ辺りだ。
群れがいた場所は完全に焼き払われていて黒焦げになった土が剥き出しになっていたんだけど、この辺りはかろうじて芝生みたいな丈の短い草が生い茂っている場所だ。
「ああ、ここなら安全だよ。それに今の俺達には最強の従魔達がいるからな」
にんまりと笑ったハスフェルの言葉に、俺は俺の右肩にシャムエル様とくっついて留まっているルベルを見た。
確かにセーブルとルベルがいれば、どんな相手が来ても瞬殺だろう。
「そうだな。もう何があっても大丈夫だって事だけは分かるよ。じゃあ遅くなったけどここで昼飯にしよう。適当に作り置きを出すから好きなだけ食ってください。おおい、もう大丈夫だから出てきてくれていいぞ。でもって、飯にするからテントを立てて机と椅子の準備もよろしく〜〜」
そう言いながら、背負っていたリュックを下ろしてスライム達を出してやる。
シャムエル様は一瞬でマックスの頭の上に移動して、俺の左肩にいたファルコとメイプルは当然のように羽ばたいて一旦肩から離れ、俺がリュックを下ろしたところでこれまた当然のように肩に戻った。
「成る程。ご主人が鞄を下ろす際にはそのようにすればいいのか」
シャムエル様が移動したのを見て慌てたように羽ばたいて舞い上がったルベルは、ファルコ達の様子を見てからそう呟き、大きく翼を広げて降下してきてまた俺の肩に留まって甘えるように俺の頬に顔を寄せた。
シャムエル様は、マックスの頭の上に座ってご機嫌で尻尾のお手入れを始めているので戻ってこなかったよ。
「ご主人、テントはどこに立てますか?」
張り切ったアクアの声がしたので、俺はアクアから渡されたテントの柱を適当な位置に立てて支えた。
何処にテントを立てるかは俺が指示してやらないと、スライム達には判断出来ないからな。
「はあい。じゃあここにテントを立てま〜〜す!」
張り切ったアクアの声が聞こえた直後、わらわらと集まってきたスライム達によりあっという間にいつものテントが立てられ、折りたたみ式の机や椅子もすぐに準備された。
「いつもありがとうな。さてと、何が食べたい?」
「「「肉をお願いします!」」」
テントの中に入ったところで振り返ってそう尋ねると、即座に予想通りの答えが三人から揃って返ってきた。
「あはは、やっぱそうだよな。じゃあサクラ、肉料理メインで色々出してやってくれるか」
「はあい、じゃあこの辺りかな?」
ビヨンと伸び上がって机の上に飛び乗ったサクラが、そう言いながら次々に山盛りのお皿を取り出してくれる。
いつものトンカツや唐揚げなんかの揚げ物各種、焼いたステーキと分厚く切った燻製肉各種、焼いた岩豚のトンテキなどなど、俺的には見ただけで胸焼けしてきそうな茶色一食だ。
苦笑いする俺を見て、岩豚ピカタや冷しゃぶサラダ、それから鶏ハムなんかも取り出してくれた。
副菜のお惣菜や煮物、サラダにスープ、味噌汁。そしておにぎり各種とパンの盛り合わせなんかが出たところで、ハスフェル達がテントに入ってきていそいそといつもの椅子に座る。
「まあ、好きなだけ食ってくれ」
笑った俺の言葉の直後、頷いたハスフェルが赤ワインの大瓶を取り出した。
それを見たサクラが、即座にワイングラスを取り出してくれる。
「まあ、確かに今日は乾杯していいよな」
笑った俺もワイングラスを手に取り、真っ赤なワインを入れてもらった。
「「「「では、お疲れ様でした! 最強の魔獣使い殿に乾杯!」」」」
「あはは、お疲れ様でした! じゃあ愉快な仲間達に乾杯!」
ハスフェル達三人だけでなくワイングラスを持ったベリーまで一緒になって乾杯してくれたもんだから、思わず吹き出した俺はいつもの乾杯の言葉を叫び、またしても揃って大爆笑になったのだった。
いや、マジで本当にお疲れ様だな。
改めてルベルとの戦いを思い出すと冗談抜きで足が震えてきて、誤魔化すようにワインを半分ぐらい一気飲みしてから、唐揚げを口に放り込んだ俺だったよ。
はあ、自分で作って言うのもなんだけど、唐揚げ美味しい……。