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もふもふとむくむくと異世界漂流生活  作者: しまねこ


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2012/2102

昼食とシャムエル様の帰還?

「はあ、空腹の俺にはかなりの重労働だったぞ」

 スライム達も加わり、あちこちから豪快な水飛沫や噴水が噴き上がっているのを見て笑った俺は、ため息を一つ吐いてから立ち上がって腕を上げて背筋を伸ばした。

 もう一度振り返ってちょうどこっちを見ていたマックスに手を振った俺は、とりあえずテントへ戻った。

「はあ、腹減った。よし、食うぞ!」

 椅子に座って、置いたままになっていた重箱の蓋をかぱっと両手で開けてから、とりあえず三段の重箱を外して広げた。

「あ、一応お供えして……サクラ〜〜遊んでいるところ悪いんだけど、祭壇用の敷布出してくれるか〜〜」

 お箸を手にしたところでお供えはしておくべきだと思いつき、だけどお供え用の簡易祭壇セットはサクラが全部持ってくれているのに気付いて思わず吹き出した俺は、立ち上がると急いでテントの外に出て大きな声でそう叫んだ。

「はあい、ちょっと待ってね〜〜〜!」

 元気なサクラの声が聞こえてから数秒後に、こっちに向かってすごい勢いで跳ね飛んで戻ってくるサクラが見えて思わず横に避けたよ。

 だけど、テントの外にいた俺にぶつかる事もなく見事な急ブレーキで止まったサクラが、いそいそとテントの中に入ってきてあっという間にいつもの簡易祭壇を用意してくれた。

「お待たせしました! ええと、他に何かいるものはありませんか? ご主人?」

 ビヨンと伸びたサクラの質問に、思わず考える。

「じゃあ、シャムエル様用に先に取り分けておきたいから、大きめのお皿をお願い出来るか」

 恐らく腹ペコで帰ってくるだろうから、一応一通り用意しておいてやろう。

「じゃあ、この辺りかな。一応これも出しておくね」

 そう言って大きめのお皿と小皿を数枚ずつ取り出し、麦茶を飲む時用の小さな盃も取り出してくれた。

 相変わらず、気遣いが凄い。

「ありがとうな。じゃあ、戻ってくれていいぞ」

 笑ってサクラを捕まえておにぎりにしながらテントの外に出る。

 相変わらず川辺では大はしゃぎの水遊び大好きチーム達が、豪快な水飛沫をあげて遊んでいる。

「ほら、行っておいで〜〜」

 サクラだけなので、オーバースローで思いっきり川に向かって放り投げてやる。

「いってきま〜〜す!」

 嬉しそうなサクラの声が聞こえて勢いよく飛んでいく。

「さあ、今度こそ食べるぞ」

 お皿を手に持ったまま中に戻って椅子に座る。

「じゃあ、まずはお供えだな」

 一旦お皿は横に置いてから、三段の重箱と冷えた麦茶を簡易祭壇に並べる。

「ええと、昼食は俺仕様の野菜多めのお弁当です。少しですがどうぞ」

 小さくそう呟いてから手を合わせて目を閉じる。

 いつもの収めの手が俺の頭を何度も撫でてくれるのを感じて目を開けると、重箱を一段ずつ持ち上げた収めの手は最後に麦茶のピッチャーを持ち上げてから、何故か俺の目の前に来た。

「ん? どうかしたのか?」

 驚いてそう尋ねると、収めの手は何故か改めて俺の頭を何度も何度も撫でてから、何かお願いをするかのように俺の目の前に来て両手を祈るかのように合わせて見せたのだ。

「ええと、今のは何に対するお願いなんだ?」

 思わずそう尋ねたが、声の出せない収めの手に尋ねたところで答えが返ってくる事はない。

 とりあえず、今のところは特に大きな問題は無いと思っているんだけど、あの様子を見るに、明らかに何かのお願いされたっぽい。一体何だ?

 訳が分からず大混乱している俺をおいて、手を振った収めの手はそのまま消えてしまった。

「ううん、何を頼まれたのかさっぱり分からないけど、なんだか嫌な予感がするなあ……気のせいだと思いたいけど、冗談抜きで絶対何か起こるフラグだよなこれ!」

 ちょっと本気で泣きそうになった俺は、大きなため息をひとつ吐いてからとりあえず重箱と冷えた麦茶を机に戻した。

「じゃあ、食べる前にシャムエル様用に……うん、野菜もしっかり取っておこうな」

 気分を変えるようにもう一回ため息を吐いた俺は、大きなお皿とお箸を手に岩豚の角煮は大きなのを丸ごと一切れと煮卵も一つ、それから俺の好きなおからサラダをはじめ様々なおかずを一通り取り分け、シャムエル様の好きな肉巻きおにぎりなど、おにぎり各種もその横に取り分け並べて、結果ほぼ半分くらいをお皿に綺麗に盛り付けていったのだった。

 まあ、この重箱は半分シャムエル様に取られるのを予想して多めに詰め込んだものだったので、俺一人だけだったら余裕で二食分の量だよ。

 ちなみに、ここにはデザートのお菓子は入ってなくて、あの飛び地で採れた激うまリンゴとブドウが入っていたので、これも半分こしてある。

 戻ってきたシャムエル様がお菓子が食べたければ、それは別に出してあげよう。



「はあ、ごちそうさま。いやあ自分で作って言うのも何だけど美味しかったよ。岩豚の角煮って冗談抜きで口に入れるととろけるんだよな」

 大満足のため息を吐いた俺は、そう呟いてから残っていた麦茶を飲んだ。

「だけどさすがにこのまま水遊びに行ったら口から逆流してきそうだから、ちょっと休憩だな」

 スライムたちが側にいないので、とりあえず食べ終えた重箱は一旦重ねて蓋をしてから適当に風呂敷で包んでおく。

 後でサクラに返せば綺麗にしてくれるだろうからな。

 そのまま背もたれに体重を預けて脱力する。

 目を閉じてうとうとしかけたところで、唐突に俺の額にふわふわが出現した。

「ちょっと! お願いだから寝ないで! 腹ペコな私をおいて寝ないで! 起きて〜〜〜〜!」

 予想通り過ぎる腹ペコなシャムエル様の叫びに、思わず吹き出した俺だったよ。

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