久々の川遊びタイムだ!
「じゃあ、川があるのはあっちだよ〜〜! レッツゴ〜〜〜!」
俺の右肩に座ったシャムエル様のご機嫌な声に、それぞれの背に従魔達を乗せたお空部隊プラスアルファの子達がシャムエル様が示した方角に向かって一気に加速する。
「おお、あの森林エルフの人達が住んでいる木の家の辺りは、こうやってみるとやっぱり木の大きさが桁違いだな」
ファルコの背の上から下を見下ろし、今出てきたあの木の家がある辺りの大きさを見て思わずそう呟く。
「まあ、あの皆が住んでいる巨木は、その為に用意した特別な木だからね。ずっと有効に使ってくれているみたいで安心したよ。それに、あの辺りも例の地脈が乱れて大変だった頃は本当に悲惨な有様だったからね。無事に回復したみたいで良かった良かった」
嬉しそうなシャムエル様のその言葉に納得する。
確かに、いくら木が歳月を経れば大きくなるとは言っても、あれはちょっと異常な大きさだったからな。シャムエル様が、彼らの住処として特別にあの巨木を設定したと言うのならあの大きさにも納得だよ。
「そうなんだ。まあ、回復したのなら良かったじゃないか」
例の地脈の回復云々って話に関しては、俺の手柄だって言われても本人には全く自覚のない事なのでスルーしておく。
「そうだね。特に森林エルフ達にはこの世界の発展の一端を影から支えてもらっているから、あまり数が減られると困るんだよね」
「お、神様っぽい発言いただきました〜〜」
「当たり前でしょうが!」
からかうようにそう言ってやると、何故か耳元をちっこい手で叩かれたよ。解せぬ!
「おお、あれが目的の川のある辺りかな?」
そんな話をしていると、眼下に森が途切れた細い筋状のものが見えてきて、思わず身を乗り出して下を見る。
「そうそう、もう少し先に行くと広い河原があるから、降りて遊ぶならそこかな」
うんうんと頷くシャムエル様の言葉に、ファルコが一声高く鳴いてゆっくりと下降しながら飛んでいく。
みるみる近くなってきた川は、思ったよりも大きくてグネグネと何度もS字にカーブしながら流れていた。
確か高校の時に地理の先生から、自然の川は本来真っ直ぐではなく蛇行しながら流れるんだって聞いた覚えがある。成る程、確かに蛇行しているな。そんな事を不意に思い出して妙に納得したよ。
そんな事を考えて上空から蛇行する川をのんびりと眺めていると、さっきのシャムエル様の言葉通りに広い河原が見えてきた。
「あそこ?」
「そうそう。このところ天候も落ち着いているから、今なら河原に降りても安全だからね」
下を指差しながらそう言われて、思わずちょっと遠い目になったよ。
確かに、河原のある場所は大きく蛇行する川の内側部分だから、急に川の水が増水したら間違いなく水没するだろう。この間みたいに長雨が続いていたら、多分あの河原は全部川になっていただろう。
「じゃあ、安全だって言ってもらえた事だし、降りてみるか」
笑った俺の言葉に、旋回していたファルコが大きく羽ばたいてまたゆっくりと降下していく。
他の皆も、それを見てファルコに続いて降下し始めた。
「おお、なかなか広い場所だな。じゃあ、一応テントは建てておくか」
「はあい、じゃあ場所を作りま〜〜す!」
俺のスライム達だけでなく、全員のスライム達が張り切ってそう言うと、バレーボールサイズくらいになって一気に散らばっていった。
そして、膝下くらいまであった雑草を一気に刈り取ってくれて、おかげで川から少し離れた所に広い場所が確保されたよ。
「じゃあ、この辺りかな」
いつもの大きいテントをサクラに出してもらい、支柱を適当な場所に立てる。
「では立てま〜〜す!」
いつもの如くスライム達が手分けしてあっという間にテントを立ててくれた。もちろん、中にはいつもの折りたたみ式の椅子と机も並んでいるよ。
「でも、せっかくだからたまには俺も水遊びに参加しよう。これは後で休憩する時に使うぞ」
当然だけど、周りには人っ子一人いないから、そのままにしておいても問題なしだ!
「じゃあ行くぞ〜〜!」
剣と剣帯を念の為収納した俺は、そう言いながら川に向かって走り出した。
当然、その辺で寛いでいた従魔達が一斉に飛び起きてそれに続く。
今は元の大きさに戻っているお空部隊プラスアルファの面々も、一斉に羽ばたいてそれに続いた。
「ほら! 水攻撃〜〜!」
取り出した手桶で川の水をすくって、振り返りざま思いっきり撒き散らかす。
当然走って来た先頭にいたマックスに当たったけど、ご機嫌でワンと吠えたマックスがそのまま突っ込んでくる。
「待て待て! それは無し!」
さすがに危険を感じて慌てて下り、水際にいた俺は笑ってもう一度水をすくって川に飛び込んだマックスに横からかけてやった。
水遊び大好きチームが次々に突っ込んできて、浅瀬で大はしゃぎしている。
「ご主人乗りますか〜〜?」
アクアの声が聞こえた直後、スライムカヌーが目の前に現れる。
「おう、よろしく!」
笑いながら飛び乗ると、そのままスルスルと川の中へ入っていった。
それを見たお空部隊の子達が飛んできたので、俺は手桶に水をすくって上空に思いっきり撒いてやる。
「うひゃあ!」
だけど、当然重力に従ってほとんどの水が落ちて来てしまい、びしょ濡れになる俺。
「あはは、でもこの気温なら寒くないぞ〜〜!」
びしょ濡れになった前髪を掻き上げつつ声を上げて笑い、手桶は一旦収納した俺は両手で川の水をすくっては頭上に向かって撒き散らかしてやり、お空部隊の子達は大喜びでスライムカヌー周辺に集まってきて、俺がかける水でバシャバシャと羽ばたきながら水浴びをしていたのだった。
当然それを見たマックス達が集まって来たので、また手桶を取り出して水をすくって撒き散らかしてやった。
もう、水遊び大好きチームは全員揃って大はしゃぎだ。
俺も笑いながら、何度も水を汲んでは撒き散らかしてやったよ。
ううん、久々の川遊びは楽しいぞ〜〜!