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照り焼きチキンを作る

詳しく書いたら、またしても飯テロ回になりました。深夜に読んだ方、ごめんなさい!

「いやあ、本当にありがとうね。まさかこんな形で長年の夢が叶うなんてね」

 ピンクジャンパーのヴェルディを抱いたマーサさんは、恐らく無意識なのだろうけれど、先程からずっと同じ言葉を繰り返し言い続けている。

 ずっと撫で続けてもらっているヴェルディは、目を細めてすっかりご機嫌だ。



「すっかり遅くなっちゃったな。どうする? このまま移動するか?」

 そろそろあたりは日が暮れて暗くなり始めている。

「それじゃあ騎獣達が戻って来てくれたから、俺達も場所を変えよう。取り敢えず今日の野営地へ行こうか」

 話をしているところでマックスやシリウス、デネブも戻ってきたので、とにかく二面目のピンクジャンパーが出て来る前に、俺達は巣穴のある場所を後にした。

「それじゃあ行ってくるね」

 ニニの声に、巨大化したままの猫族軍団が、交代して狩りに行くために俺達から分かれて一斉に走り去った。あ、タロンも一緒に行ったし。

 苦笑いして見送り、ハスフェルの後を追った。

 カルーシュ山脈を右手に見ながらしばらく北上すると、小川から土手を上がったなだらかな草地が広がる場所に出た。

「ここと向こうに水が湧いている。綺麗な水だから、もちろんそのまま飲めるぞ」

 ギイが指差す場所は、岩の割れ目からこんこんと水が湧き出していた。

 一段下になった岩場に穴が空いていて、綺麗な水が溜まっていた。

「じゃあ、まずはテントを張らないとな」

 修理に出していたテントは間に合わなかったので、結局新しいテントを予備だと思って買ったのだが、組み立て方は説明を聞いただけで、一切触っていない。ううん……若干不安だ。だけど、出来れば明るいうちにテントは建ててしまいたい。

 サクラに鞄に入ってもらって、手早くまずは机と椅子を出し。荷物を置いてテント一式を取り出して組み立て始めた。

 組み立てて分かった。今まで持ってたテントと全く同じ建て方のテントを持ってきてくれてた。マシューさん、ありがとう!

 最初は恐る恐るだったのだが、どうやら大丈夫だと分かってからは、サクラとアクアに手伝ってもらってあっという間に大型のテントを張り終えた。

 机と椅子を中に持って入り、ランタンに火を入れておく。

 それからサクラに手を綺麗にしてもらってから、夕食のメニューを考える事にした。



「材料は沢山あるんだけど、作り置きはもう殆ど無くなってたよな。となると、何か作るか。ええと、せっかく醤油を手に入れたんだから……よし、今夜は照り焼きチキンだ! 俺はご飯で照り焼きチキン丼。パン食チームは照り焼きチキンサンドだな。あとはスープがあれば良いよな」

 メニューが決まったところで、テントの外にいる四人に声をかける。

「なあ、コメとパン、どっちが良い? ちなみに俺は米を食うぞ」


 鞄から携帯食を取り出しかけていたマーサさんが、驚いたようにこっちを見た。

 彼女の横にはクーヘンと変わらない小さな一人用のテントが張られている。


「え? コメかパンかって?」

「ああ、聞いてませんでしたか? ここでは俺が皆の分も一緒に料理してるんですよ。お口に合うかどうかは分かりませんが、良かったら一緒に食べてください」

「おやおや、それは嬉しいね。私はどっちでも構わないよ。ケンさんの楽な方でお願いします」

「俺はパンが良いな」

「俺もパンで頼む」

「私もパンが良いです」

 後ろから、それぞれのテントを張り終えた三人の元気な返事が聞こえる。

「了解。じゃあもうちょっと待っててくれよな」

 出入り出来るように、テントの横の垂れ幕を巻き上げておき、俺は机に戻った。

 マーサさんとクーヘンが、興味津々で一緒に入って来た。

「あ、マーサさんの椅子が無いぞ」

 俺が持ってるのは自分の分を入れても三つだけだ。クーヘンは自分で持っているから良いが、マーサさんの分が無い。

 慌てる俺に、マーサさんは笑って胸を張った。

「私が持ってる収納袋は六十倍なんだよ。自分の椅子は持ってるからご心配なく」

「六十倍とは羨ましいですね」

 クーヘンが自分の椅子を出しながらそう言って笑っている。

 マーサさんも自分の椅子を取り出し、更には俺が持っているような小さな机まで取り出したのだ。

「良かったら使っておくれ。これがあると、野営が一気に楽しくなるんだよね。ディーといつもここで一緒に一杯やったもんだよ」

 誰もいない向かい側を目を細めて見ながら、マーサさんは少し寂しそうにそう言って笑った。

「じゃあ、出来るまでこれでも飲んでてください」

 テントに入って来たハスフェルとギイの手にあるのは、どうやら赤ワインのようだ。

「俺も飲むー!」

 モモ肉の塊を取り出しながら右手を上げると、笑ったハスフェルが俺の分も用意してくれた。



 立ったまま赤ワインを飲みつつ、料理開始だ。

 まずは強火用のコンロを並べて、フライパンを乗せて火をつける。丸ごとのモモ肉は皮側から焼いていくんだ。そうすれば余分な脂が落ちてカリカリになる。

 その間に手早く照り焼きのタレを作る。

 大きめのお椀に、砂糖とみりんと醤油、米の酒を計って入れていくだけだ。

 今回、米の酒も有ったのでいくつか買ったのだが、正直言って料理にするにはどれも勿体無いレベルだ。

「ええい、美味しい料理のためだ!」

 そう言って適当に掴んだ酒も、計ってお椀に入れたよ。ああ勿体無い……。

 砂糖1、お酒が3、醤油とみりんは2。量は増えてもだいたいだがこの対比だ。沢山作るので大量に混ぜて準備しておく。

 これも定食屋で作っていたレシピなんだけど、これが簡単だけど美味いんだよ。



 ハスフェルとギイ、クーヘンの三人にはこれぐらいは食うだろうと予想してそれぞれモモ肉三枚分。俺とマーサさんの分は、ぶつ切りにしたモモ肉二枚分で丼にする。残ったらそのまま備蓄食料にすれば良い。

 ちなみに、このモモ肉のぶつ切りもサクラがやってくれました。スライムアシスタント最高だね。



 鶏肉に焦げ目が付いたら、トングで掴んで肉を裏返して反対側も焼いていく。

 その間に、食パンを足元にいたアクアに八枚切りサイズに切ってもらい、マヨネーズと辛子を塗っておく。

 葉物も少し出しておけば準備万端。

「お、そろそろ大丈夫かな?」

 モモ肉がいい感じに焦げ目が付いてきたので、用意していた照り焼きのタレを回し入れて、少し煮詰めれば完成だ。

 タレを入れると一気に香ばしい香りが立ち、皆が一斉にこっちを見た。

「良い香りだね」

 目を輝かせるマーサさんに、俺は笑って胸を張った。

「俺とマーサさんはコメで丼を作りますからね。あいつらに先にサンドイッチを作りますから、ちょっとだけ待っててください」

 嬉しそうに頷くマーサさんに笑い返して、俺は塊のモモ肉をひっくり返した。

 丼用のぶつ切りモモ肉も良い感じに焼けているので、残りのタレを回し入れて弱火にして少し煮詰めていく。

「その間に、サンドイッチを作りますよっと」

 そう呟いて、準備していたパンにレタスを乗せて、その上に焼きたての照り焼きチキンをまるごと乗せる。本当は薄く切ってから乗せるんだけど、あいつらなら絶対そのままでも大丈夫だろう。

 上からもう一枚のパンを乗せて軽く押せば完成だ。

 全部で9セット作り、まずはワンセットずつ切り分けてお皿に乗せて渡してやる。残りは大皿にまとめて並べておく。足りなければここから取るのも、毎回のお約束になってる。

 温めていたスープは、全員分を小さなお椀によそって渡した。


 照り焼き丼用のお椀を二つ取り出して炊きたてご飯をよそる。マーサさんの食べる量がわからないので、年齢を考えて少し軽めにしておいた。

 作り置きの炒り卵を取り出してご飯の上に並べて、ぶつ切りの照り焼きチキンをぎっしりと乗せて、少しだけマヨネーズをかければ出来上がりだ。

「はい、お待たせしました。足りなければおかわりもありますからね」

 ぶつ切りの照り焼きチキンもまだまだあるので、お代わり分ぐらいはあるだろう。

 手を合わせたマーサさんは、一口食べるなり目を輝かせて俺を見た。

「美味しい! 美味しいよケンさん。いやあ凄いね。私にはディーって愛しい人がいるのに、うっかりあんたに惚れちゃいそうだよ」

 大真面目なその言葉に、もうちょっとで食べていた照り焼き丼を噴き出すところだったね。

 それを聞いたハスフェル達は、横で食べながら大笑いしてたよ。

 ま、今のは最高の褒め言葉だと思っておくよ。



 結局、大量に作った照り焼きチキンサンドだったが、一人前くらいしか残らなかったよ。

 いやあ、本当によく食うな。お前ら。

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