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もふもふとむくむくと異世界漂流生活  作者: しまねこ


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1994/2077

お別れの朝

「はあ、びしょ濡れだって。サクラ、悪いけどもう一回綺麗にしてくれるか」

 ハスフェル達の念話が届いたところでようやく水遊びは終了となり、パンツの中まで全身びしょ濡れになった俺は濡れた頭と手を振って水を飛ばしながら、そうお願いする。

「はあい、綺麗にするね〜〜!」

 水槽の中から跳ね飛んできたサクラがブワッと広がって、俺の全身を一瞬で包み込む。

 次の瞬間にはもう、あれだけびしょ濡れだった全身が綺麗さっぱりサラサラだ。もちろん濡れた服も全部すっかり乾いている。

「いつもながら見事なもんだな。よし、じゃあリビングへ行くか。おおい、リビングへ行くから皆来いよ〜〜」

 屋根裏への階段を半分くらい上がったところでそう声をかけると、元気な返事と共にニニ達が次々に駆け降りてきた。

「ご主人捕まえた〜〜〜!」

 ご機嫌なマニが俺の腹目掛けて突っ込んでくる。

「待て待て、いくら小さいとはいってもそんな勢いで突っ込んできたら、俺の方が吹っ飛ばされるって!」

 もちろん、吹っ飛ばされたところで一緒にスライムベッドに倒れるだけなんだけどさ。

「もう赤ちゃん言葉は終わりか? この甘えたさんが〜〜〜」

 どうやらマニはご機嫌で無防備に甘えている時なんかに赤ちゃん言葉が出るみたいで、今のように単に一緒にリビングへ行く時なんかは、甘えていても普通に喋っているんだよな。

「大好きなご主人に甘えるのは当たり前にゃの!」

「そうか〜〜当たり前か〜〜」

「ですにゃ!」

 胸を張ったマニのわざとらしい赤ちゃん言葉に、堪えきれずに吹き出してマニを抱きしめてやった俺だったよ。



「おはようございま〜〜す。今朝は最高の朝を迎えさせてもらったよ。皆、ありがとうございます!」

 リビングにはもう全員集合していて、揃って笑顔で俺を見ている。

 俺も笑って全員を見回してから改めてお礼を言ったよ。

「喜んでもらえたみたいで良かったです。従魔達から、ケンさんを起こしに行ってもいいかって聞かれて俺達大爆笑したんですよ」

 笑ったムジカ君の言葉に新人さん達が全員揃って大爆笑している。

「俺の寝起きが悪いのはもう仕方がないんです〜〜〜!」

 開き直った俺の仕方がない宣言に、今度は全員揃って大爆笑になったのだった。



「はあ、笑いすぎて腹が痛いって。じゃあ、いつもの朝食メニューかな?」

 笑いすぎて出た涙を拭いながらそう言い、鞄に入ってくれたサクラからいつもの朝食メニューを取り出していく。

「あ、そうだ。よかったら少し持っていくか? まだかなり残っているからさ。空になった重箱は、次に会った時に返してくれればいいからさ」

 手持ちの重箱に詰めた弁当がまだまだあるのを思い出してそう言ってやると、全員からありがとうございますの叫びが返ってきた。

「あはは、じゃあ食事が終わったら弁当配布会だな」

「よろしくお願いします!」

「あ、何なら俺達が持っている屋台飯と交換しましょう!」

 収納袋を持つアーケル君とオリゴー君の言葉に、皆がそれぞれの収納袋を取り出す。

「だ〜か〜ら! まずは飯にしようって! 俺は腹が減りました!」

「はあい!」

 笑ってそう言いながら激うまジュースの入ったピッチャーを並べてやると、これまた仲良く揃った返事が返ってきて、俺はもう笑うやら寂しいやらどんな顔をしたらいいのか分からなくなり、ちょっと涙目になっていたのだった。



 いつも以上に豪華で賑やかな食事を終えて一服したところで俺が重箱に入った弁当を皆に配り、一部の人達からは普段俺が買わないようなちょっと変わった屋台飯を色々と受け取ったよ。

 それが終わればもう出発の時だ。

 俺達が弁当の交換会をしている間にスライム達に建物内をチェックしてもらい、忘れ物が無いかや戸締りなんかの確認をしてもらった。

 まあ、また夏には帰ってくるし、留守の間はマーサさんのところにまた鍵を預けるんだけど、一応戸締りはしっかりしておかないとね。



「ええと、リナさん達はムジカ君達と一緒に王都へ行くんだよな。何で行くんだ? また船旅か?」

 もらった屋台飯を鞄に入ったサクラに全部まとめて収納してもらったところで、立ち上がった俺はアーケル君達を振り返った。

「今回は船ではなく鳥に乗って空から行きます。まあ、空を行くのは街を出てからですけどね。でもって先に王都の郊外にある別荘へそのまま空から行って、従魔達を置いてから俺達だけでのんびり王都入りする予定です」

「今度こそ例のお土産を渡してこないとね」

 アーケル君の言葉に続き、リナさんも苦笑いしながら四角い形を手でなどって見せる。

「あはは、ヴェナートさんの手書きサイン色紙を見たお姉さん達の反応がどうだったか、次に会った時に教えてくださいね」

 笑った俺の言葉に、バッカスさんとクーヘンのお店に渡した時の皆の反応を思い出して、揃って苦笑いしていた俺達だったよ。

「俺達は一旦街へ行って、バッカスの店に飛び地で集めたジェムと素材をいくつか渡してから出発します」

 笑顔のランドルさんの言葉にボルヴィスさん達とマールとリンピオが揃ってこちらも笑顔で頷いている。

「地下洞窟へ行くって言っていましたね。どうぞ気をつけて! どんな子が増えたのか、次に会う時の楽しみにしておきます」

「そうですね。ケンさんに自慢出来そうな凄い恐竜を探す事にします」

 笑ったボルヴィスさんの言葉に、マール達も笑顔でガッツポーズを取っていたのだった。

「じゃあ俺達も、出発の前にクーヘンの店に顔を出して、もう少しジェムと装飾品用の素材を置いてこようと思っているので一緒に行きましょう」

「じゃあ、俺達とはここでお別れですね」

 ちょっとしんみりしたアーケル君の言葉に、リナさん達もムジカ君達も真顔になる。

 もうすっかり綺麗に片付いたリビングのテーブルの上を見てから、頷き合った俺達はそれぞれの従魔を引き連れて廊下を歩き、そのまま外へ出て行ったのだった。

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