朝の一幕
「ちょっと、待って。パンツがずれたって……」
いつも以上に増えた従魔達の総攻撃にあっけなく陥落して揉みくちゃにされた俺は、リンクス達による爪無し猫パンチと時折舐め舐め攻撃の際、ケツを舐められたのに気付いて慌ててパンツを握って引っ張りそれ以上脱がされそうになるのをなんとか回避したのだった。
「だ〜か〜ら〜ちょっと待てって言ってるだろうが〜〜〜!」
なんとかパンツを戻して起き上がった俺は、すり寄ってくるリンクス達を順番に思いっきり撫で回してやった。
「おお、ルルちゃんとカッツェの毛並みは案外撫で心地が似ているんだな。でもカリーノとミニヨンは撫でた感じが全然違うぞ」
笑ってそう言いながら交互に揉みくちゃにしてやる。
どの子も大きく喉を鳴らしてご機嫌だ。
しかし、こうやって同時に撫で比べてみると分かるんだけど、大きくなったとは言ってもカリーノとミニヨンは明らかに骨もまだ細いし筋肉のつき具合も違う。まだ成長途中の十代って感じだ。
一番体格がしっかりしていて大きいのは当然だけどカッツェで、骨の太さとついている筋肉の量が桁違いだ。まあ、これは当然だよな。
次に大きいのはリナさんのところのルルちゃん。でも、こちらは骨はしっかりしているけど明らかに雄であるカッツェとは骨の太さや筋肉量に違いがある。しなやかな雌の体だ。
ちなみにルルちゃんを撫でての感想は、ニニの方が若干体も大きいし筋肉量も多いかな? って感じだ。まあ、ニニの場合は毛の量が半端ないので実際よりも体が大きく見えるから、おそらくほぼ同じくらいの体格なのだろう。
そして、記憶にあるよりもカリーノとミニヨンの体は明らかに一回り以上大きくなっている。
特にこうして撫で比べると、ミニヨンは骨の太さがマニやカリーノとは明らかに違う。
きっと数年もすれば、カッツェと変わらないくらいの立派な体格になるんだろう。
「そんなに急いで大きくならなくてもいいんだぞ……ずっと子供のままでいてくれていいんだからさ」
なんだかたまらなくなって、この中では一番小さく骨も細いマニを抱きしめてやる。
「ご主人だいちゅきにゃの!」
何故か赤ちゃん言葉に戻ったマニが、ご機嫌に喉を鳴らしながら俺の胸元に顔を突っ込んでくる。
「ああ、俺も大好きだぞ。ずっとずっと一緒だ」
「いっちょにゃの!」
喉を鳴らしたカッツェまで俺の腕に鼻先を突っ込んできて、またしてもニニの上に押し倒されてしまった俺だったよ。
「はあ。それで、どうして朝からこんな騒ぎになっているんだ?」
またしても従魔達の総攻撃に撃沈していた俺は、なんとか起き上がって改めてそう言いながら今部屋にいる従魔達を見て思いっきり吹き出したのだった。
「だって、今のご主人が、前のご主人とは今日でお別れだからもう一回甘えておいでって言ってくれたんだもん!」
カリーノの言葉にミニヨンも嬉しそうに目を細めてうんうんと頷いている。
「そっか、でもそれならミニヨンとカリーノだけでいいと思うんだけど……」
全員の猫科の従魔達が勢揃いしているのを見て、もう一回吹き出す俺。
「だって、ご主人はこういうのが大好きでしょう?」
「だから、他の皆にもお願いして一緒に来てもらいました!」
得意げに胸を張るミニヨンとカリーノの言葉に、他の子達も笑って頷いている。
「あはは、そりゃあありがとうな。おかげで最高の朝を迎えられたよ」
声を上げて笑った俺は、改めて一匹ずつお礼を言って撫でまくってあげたのだった。
例の癒しの手はここでも健在だったみたいで、どの子ももう蕩けそうになってもの凄い音でゴロゴロと喉を鳴らしていたよ。
「そうか。他の部屋と違って俺の部屋って屋根裏部屋で階段は下ろしっぱなしにしているから、部屋の扉が無いからある意味出入り自由なのか」
ひとまず俺が起き上がったところで、来てくれた従魔達は一旦それぞれのご主人のところへ戻り、俺は水浴び大好きチームとスライム達を引き連れて水場に向かいながら、何故俺の従魔達以外の子が部屋にいたのか考えて今更その事実に気付いて思わず吹き出した。
バイゼンのお城では、俺は当主の部屋に住んでいたから当然部屋の広さに見合っためっちゃデカい扉があったんだけど、ここの別荘にある俺の部屋は屋根裏部屋を改装してもらったから、そもそも廊下の天井にあった屋根裏部屋への扉は撤去されていて無いんだよ。
この階段も従魔達の体重を考えて強化してもらい、さらには折りたたむ必要は無いので固定してもらったから、部屋にはある意味出入りし放題だ。まあ、従魔達がいる時点で保安上は全然問題ないんだけどさ。
それから屋根裏部屋の床はこれも従魔達の重量を考えて相当強化してもらっていたんだけど、今朝の従魔達の顔ぶれを思い出して割と本気で過去の自分を褒めた俺だったよ。過去の俺、グッジョブだ!
水場でいつものように顔を洗ってからサクラに綺麗にしてもらい、そのままサクラをフリースローで水槽に放り込んでやる。
若干投げる力が足りずに手前で落ちそうになったけど、ちゃんと自動修正されて無事に水槽に飛び込んでいった。
「ご主人、アクアも〜〜!」
「アルファもお願いしま〜す!」
「おう、来い!」
張り切って跳ね飛んでくるスライム達を空中キャッチしては、水槽目掛けてフリースローで投げ込んでやる。
全員投げ込んだところで、マックス達と場所を交代しようとして今日の気温を考える。
「よし、久しぶりに俺も一緒に水遊びタイムだ!」
そう宣言するなり水槽に手を突っ込み、両手を握ってマックス目掛けて水鉄砲を発射してやった。
大きく口を開けて飛んできた水を口に入れたマックスが、ご機嫌で俺に向かって飛びかかってくる。
「そうはさせるか〜〜〜!」
「ご主人、お手伝いしま〜〜す!」
俺が両手でバシャバシャとマックスに向かって水をかけるのを見て、サクラとアクアがすぐ側に来て水を吹き出し始める。
ビアンカと、テンペストとファインの狼コンビも加わり、さらにはお空部隊の面々まで参加してもう水場は大騒ぎだ。
ちなみに俺はもう、服どころかパンツの中までびしょ濡れだよ。
「でも、すぐにサクラが全部綺麗にしてくれるから気にしないぞ〜〜!」
途中からは自分で収納していた大きなお椀を使って水を汲んではぶっかけてやり、結局ハスフェル達からの念話が届くまでの間、俺は久し振りの従魔達との水遊びを満喫したのだった。