休憩の日と翌朝の大騒ぎ
「た、確かに従魔登録していませんでしたね!」
「うわあ、本当だ! すみません! 従魔登録をお願いします!」
しばらくして買い取り手続きが終わったらしい新人さん達が戻ってきたところで、苦笑いしたハスフェルが彼らにも従魔登録の話をして、当然、すっかり忘れていた全員が揃って悲鳴を上げてカウンターに並んだのだった。
無事に全員の従魔登録が出来たところで、次は別室を借りての収納袋身内販売会再びとなった。
収納袋の査定はエルさんと専任のスタッフさん達が手分けして行ってくれたので、俺の手持ち分をムジカ君とシェルタン君とレニスさん、それからマールとリンピオの五人に販売してあげた。
ボルヴィスさんとアルクスさんには、ハスフェルとギイが手持ちの収納袋を販売していた。
全部の手続きが終わったところでそのまま全員揃って別荘へと戻り、俺は念願のお風呂にようやく入れたのだった。
翌日は休憩日って事にして、皆で昼から飲みながらのんびりだらだらとゲームをして遊んで過ごした。
夕食は皆のリクエストで、お寿司とお刺身パーティーとなった。
ううん、皆が魚料理を気に入ってくれて嬉しいよ。
「ところで、この後ってどうするんだ?」
冷えた吟醸酒を飲みながらそう言うと、スモークサーモンをつまみに飲んでいたアーケル君達が揃って顔を上げた。
「俺達は、言っていたようにまずは王都へ行って、その後は川沿いの街を巡回しながらスライム集めをします」
「俺達は、地下洞窟へ行くよ」
笑ったボルヴィスさんの言葉に、マール達も笑顔で頷いている。
「そっか、じゃあここでひとまず解散だな。ううん、すっかり大人数が当たり前になっちゃっているから、急に減ったら寂しいよ」
苦笑いしながらそう言うと、何故かハスフェルとギイに両方から笑いながら抱きつかれた。
「なんだよ、可愛い事を言うじゃないか」
「まだまだ俺達は一緒にいるから、安心していいぞ〜〜」
「俺もいるぞ〜〜!」
更には、笑ったオンハルトの爺さんまでが背後から抱きついてきた。
「野郎に抱きつかれる趣味はありません! 離せ〜〜〜!」
そう叫んで逃げようとしたんだけど、完全にホールドされていて逃げ出せないどころか首が締まってしまい、俺はハスフェルとギイの腕を必死で叩いてギブアップする事になったのだった。
「はあ、死ぬかと思ったよ。ここでの再会は夏の早駆け祭りか。さて、次のレースはどうなる事やら」
ようやく解放されたところで、グラスに残っていた吟醸酒を飲みながらため息を吐いた俺は、次はリベンジ出来るかなあ。なんてのんびりと考えていたのだった。
ぺしぺしぺし……。
ぺしぺしぺし……。
ふみふみふみ……。
ふみふみふみ……。
ふみふみふみ……。
ふみふみふみ……。
カリカリカリ……。
カリカリカリ……。
つんつんつん……。
チクチクチク……。
こしょこしょこしょ……。
ふんふんふんふん!
ふんふんふんふん!
ふんふんふんふん!
ふんふんふんふん!
「うん、起きてるって……」
翌朝、いつものように従魔達総出のモーニングコールに起こされた俺は、眠い目をこすりつつ何とかそれだけを答えた。
「う、うん……」
だけどまだ起きたくなくて、腕の中の抱き枕代わりの子をギュッと抱きしめる。
お、このもふもふ尻尾はフランマだな。ううん、相変わらず良き触り心地だ。
半ば無意識にもふもふ尻尾を撫でさすりつつ、気持ちよく二度寝の海へ落っこちて行ったのだった。ボチャン。
ぺしぺしぺしぺし……。
ぺしぺしぺしぺし……。
ふみふみふみふみ……。
ふみふみふみふみ……。
ふみふみふみふみ……。
ふみふみふみふみ……。
カリカリカリカリ……。
カリカリカリカリ……。
つんつんつんつん……。
チクチクチクチク……。
こしょこしょこしょこしょ……。
ふんふんふんふん!
ふんふんふんふん!
ふんふんふんふん!
ふんふんふんふん!
「うん。だから、起きてるってば……」
なんとかそれだけ言ったんだけど、相変わらず寝汚い俺の体は一向に起きてくれる気配無し!
そして、腕の中にいたのがフランマからフラッフィーに変わっている。
「この尻尾は、フラッフィーか。ううん、この尻尾も良きだねえ……」
小さくそう呟きつつ腕を伸ばしてもふもふな尻尾を満喫していると、不意に背後から耳元の辺りでもの凄い鼻息が聞こえてきた。しかもいつもよりも数が多い!
「ええ、何だよ一体……?」
さすがに不審に思った俺がなんとか薄目を開いて背後を見た瞬間、見えた光景にマジで本気で目が覚めたよ。
だって、猫族軍団は全員巨大化しているし、マニとカッツェは揃ってキラッキラなやる気満々な目で俺を見ている。
しかもそれだけじゃあなくて、ハスフェルの従魔のスピカとギイの従魔のベガのジャガーコンビを筆頭に、シェルタン君の従魔のリベルターやムジカ君の従魔のリリス達など仲間達全員の猫族の子達が何故か全員巨大化して俺を見ていたんだよ。
ルルちゃんとかミニヨンやカリーノまでいるって絶対おかしい! ここ、テントの中じゃなくて俺の屋根裏部屋だぞ!
「ちょっと待て! どうして俺の従魔じゃあない子達までここにいるんだよ!」
力一杯叫んで逃げようとしたんだけど、時すでに遅し。
巨大化した猫族軍団プラスアルファの面々に腕や足だけでなく、服がまくれて剥き出しになっていた背中から脇の辺りまで、生身の部分を一斉にザリザリジョリジョリと舐められて悲鳴を上げる俺。
そして、それと同時に力一杯俺の腹を蹴っ飛ばして逃げていくフラッフィー。
当然、蹴り飛ばされた勢いで巨大ベッドから転がり落ちる俺。
「ご主人危ないよ〜〜〜」
気の抜けるようなアクアののんびりとした声と同時に、俺はスライムベッドに顔から突っ込んで止まった。
「お返ししま〜〜す!」
「返さなくっていいって!」
息が出来なかったのは一瞬だったので安堵したのも束の間、そのままもう一回吹っ飛ばされた俺は巨大化した猫族軍団の中へ落っこちていき、爪無し猫パンチの洗礼を受けた後にまだ横になったままだったニニの腹の上に見事に着地したのだった。
そして、そのまま一気に小さくなった猫族軍団プラスアルファの子達に飛びかかられて、今度は歓喜の叫びを上げる羽目になったのだった。
ええ? 朝からなんのご褒美ですか。これ?
2025年3月14日、アース・スターノベル様より発売となりました「もふもふとむくむくと異世界漂流生活」第十巻の表紙です。
ついにもふむくも二桁の大台に突入です!
改めまして、どうぞよろしくお願いしますm(_ _)m
今回も引き続き、れんた様が表紙と挿絵を最高に素敵に可愛らしく描いてくださいました。
連載開始当初からの目的地であったバイゼンに、ようやくの到着です!
到着早々色々と騒ぎが起こります。
そして貴重な女性キャラも登場しますよ!
その貴重な女性キャラを描いた今回の口絵も大爆笑させていただきましたので、どうぞお楽しみに!
「もふもふとむくむくと異世界漂流生活〜おいしいごはん、かみさま、かぞく付き〜」
コミックアース・スター様にて、コミックス第四巻が2025年3月12日に発売となりました!
もちろん今回も作画はエイタツ様。
ハスフェルに続きギイも、それからフランマもコミックスに登場です!
いつもながら最高に可愛いもふもふむくむく達と、美味しい食事!
そして、地下洞窟と恐竜達とテイム!
盛り沢山なもふむくコミックス第四巻を、どうぞよろしくお願いします!