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飛び地を後に

 翌日、ベースキャンプを撤収した俺達は、満面の笑みのドワーフさん達に見送られて飛び地を後にした。

 ちなみに、リナさん達が作ったあの噴水付きの泉は、あのままドワーフさん達に譲ったんだって。

 ドワーフさん達の中には当然水の術を使える人もいてリナさん達が詳しい作り方を説明しておいたらしいので、今後はベースキャンプでの水の調達が容易になったみたいだ。

 知識も技術もあるのに、こんな簡単な事を思いつかない辺りが、いかにも頭の硬いドワーフって感じだね。



 ちなみに、外へ出る際にも当然だが再度イバラを超えていかなければいけない。

 あの飛び地を取り囲んでいる問題のイバラは俺達が入った後あっという間に回復してしまい、もうプティラ達が開けてくれた穴はどこにもない。

 どうやら、数日あればイバラに開けた穴は全部回復するみたいだ。

「つまり、そんな速さで回復するって事は、これって植物に見えるけど植物じゃあないって事だよな?」

 目の前に立ちはだかるびっしりと絡まり合ったイバラの壁を見ながら、俺は呆れたようにそう呟く。

「まあそうだな。これは飛び地と元の世界を繋ぐ、いわば結界の外側部分が物体化した物なわけだから、当然欠損部分は数日程度あれば自己修復されるわけだ」

 にんまりと笑ったギイの説明に、俺は両手を上げて降参のポーズをして見せる。

「その辺りの詳しい説明をされても俺には理解出来る気がかけらもしないので、その辺りはシャムエル様に全部お任せしておきます! 上手くやってください!」

「ああ、私に丸投げした〜〜」

 マックスの頭の上に座ったシャムエル様の言葉に、俺達は揃って吹き出したのだった。



「さて、じゃあまたここはプティラとデネブの出番だな」

 そう言った時、背後から何やら声が聞こえて振り返ると、何人ものドワーフさん達がムービングログに乗ってこっちに来るところだった。

「あれ、どうかしましたか?」

 何か忘れ物でもあったのかと思い、慌ててマックスの背から飛び降りてドワーフさん達に駆け寄る。

「ケンさん。ぜひこれの成果を見てください!」

「この道具には、ケンさんも設計段階で参加してくださったと聞きましたから!」

 得意そうなドワーフさん達が収納袋から取り出したのは、あの、フクシアさん達が設計して仕上げた丸刃の付いた電動ノコギリもどきだった。

「ああ、もしかしてこのイバラを切り開いてくれるんですか?」

「はい、ここは我らにお任せあれ! おい、やるぞ!」

 リーダーと思しき大柄のドワーフさんの大声の元、一列に並んだドワーフさん達がほぼ同時に電動ノコギリもどきのスイッチを入れた。

 妙に懐かしいもの凄い駆動音と飛び散るおがくずとともに、みるみるうちにあの固いイバラが切り倒されていく。

 少し離れたところで見ていると、二列目に控えていた手ぶらのドワーフさん達が、切り倒されたイバラの枝を拾って端に集めている。

「この切り倒したイバラの枝もおがくずも数日後には綺麗に消えて無くなります。ですが一応、通る際に邪魔にならぬよう端に集めておきます」

「断面が鋭利ですので、怪我をせぬようお気をつけください」

 手慣れた様子のドワーフさん達の様子をただただ感心して眺めていると、あっという間に外までの道が出来上がってしまった。

「お見事です。これなら自力でのこの飛び地攻略も可能ですね」

 拍手しながら俺がそう言うと、ドワーフさん達は揃って嬉しそうに胸を張った。

「切れ味は抜群でご覧の通り問題であったイバラ攻略は完璧に出来ました。唯一の悩みは、この大きな音なんですわい。バイゼンに戻ったら、もう少し効果のある耳栓を開発しようと皆で言っております」

 どうやら柔らかな紙を丸めて耳に詰め込んでいたらしく、そう言ったドワーフさん達が指先でそれを引っ張って取り出しながら笑っている。

「ああ、確かにそれは言えていますね。では是非とも耳栓の開発をお願いします」

 笑った俺の言葉に、電動ノコギリもどきが動いている間中ずっと耳を塞いでいたハスフェル達や他の皆も、揃って凄い勢いで頷いていたのだった。



「ありがとうございました!」

「また、冬のバイゼンでお会いしましょう!」

「どうかお気をつけて!」

「こちらこそありがとうございました。ではまた!」

 もう一度満面の笑みのドワーフさん達に見送られた俺達は、笑顔で手を振り返してドワーフさん達が開けてくれた穴から外の世界へ出て行ったのだった。

「いやあ、確かに凄い技術だけど、あの音はちょっと勘弁してほしい」

「だな、冗談抜きで耳が潰れるかと思ったよ」

「確かにあれを使うなら、耳栓は必須だな」

 アーケル君達もどうやらあの音には参ったらしく、苦笑いしつつ耳を塞ぐ振りをしながらそんな話をしていたよ。

「ケンさんは、案外平気そうでしたね」

 アーケル君にそう言われて、内心ちょっと焦りつつ笑って耳を塞ぐ。

「いやいや、平気な振りをしていただけだって。ドワーフさん達には、是非とも高性能な耳栓の開発をお願いしたいね」

「ですよね。そうしないと耳を痛めますよね」

 笑ったアーケル君の言葉に、あちこちから同意の声が上がり俺達はもう一回大笑いしたのだった。



「よし、それじゃあとにかく街へ戻ろう! 俺は風呂に入りたいんだって!」

「俺も入りたいです!」

「俺も俺も〜〜〜!」

 笑いが収まったところで俺がそう言うと、笑ったハスフェルとギイの言葉に皆も笑って何故か全員が右手を挙げている。

「あはは、皆がお風呂を気に入ってくれて俺は嬉しいよ。じゃあ行くぞ〜〜!」

「おお〜〜!」

 笑った俺の掛け声に何故か全員の声が重なり、マックス達が一気に駆け出す。

「あの赤い葉っぱの木まで競争だ〜〜〜!」

「おお〜〜〜〜!」

 さっき以上の掛け声に続き、全員が一気に加速して目標の木を目指して走り出したのだった。



挿絵(By みてみん)

2025年3月14日、アース・スターノベル様より発売となりました「もふもふとむくむくと異世界漂流生活」第十巻の表紙です。

ついにもふむくも二桁の大台に突入です!

改めまして、どうぞよろしくお願いしますm(_ _)m


今回も引き続き、れんた様が表紙と挿絵を最高に素敵に可愛らしく描いてくださいました。

連載開始当初からの目的地であったバイゼンに、ようやくの到着です!

到着早々色々と騒ぎが起こります。

そして貴重な女性キャラも登場しますよ!

その貴重な女性キャラを描いた今回の口絵も大爆笑させていただきましたので、どうぞお楽しみに!




挿絵(By みてみん)

「もふもふとむくむくと異世界漂流生活〜おいしいごはん、かみさま、かぞく付き〜」

コミックアース・スター様にて、コミックス第四巻が2025年3月12日に発売となりました!

もちろん今回も作画はエイタツ様。


ハスフェルに続きギイも、それからフランマもコミックスに登場です!

いつもながら最高に可愛いもふもふむくむく達と、美味しい食事!

そして、地下洞窟と恐竜達とテイム!

盛り沢山なもふむくコミックス第四巻を、どうぞよろしくお願いします!

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