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もふもふとむくむくと異世界漂流生活  作者: しまねこ


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1985/2100

ごちそうさまと翌朝の一幕

「いやあ、食いも食ったりって感じだな」

 さすがにそろそろドワーフの皆さんのお腹も膨れたらしく、ようやく肉や寿司の減りが止まった。

「ううん、握り寿司は用意していた分ほぼ壊滅だし、肉も余裕を持って準備したつもりだったけど、結構ギリギリだったみたいだなあ」

 サクラに残りの状態を確認した俺は、張り切ったスライム達が後片付けをしてくれているのを見つつ呆れたようにそう呟いたのだった。

「でもまあ、満足してもらえたみたいでよかった」

 ちなみに、先ほどまで俺の周りに集まって大感激でお礼を言いまくっていたドワーフの皆さん達は、今はハスフェル達の周りに集まり、この飛び地の即席の手書きの地図を前に何処にどんなジェムモンスターが出るのかの報告会を開いている真っ最中だ。

 どうやら、いくつかの出現場所や出るジェムモンスターが前回とは変わっているらしく、ハスフェル達だけでなくリナさん一家やランドルさんも真剣な様子で彼らから詳しい話を聞きつつせっせとメモを取っている。

 一応、その辺りの差配はハスフェル達にお任せしている俺は、一応聞き耳は立てつつスライム達が片付けてくれた食器類を受け取っては、サクラの入った鞄にせっせと収納していたのだった。

 ちなみに、あれだけ吟醸酒やストレートのウイスキーのような強いお酒を飲んでいた人が何人もいたのに、誰一人酔い潰れていないのは、さすがドワーフって感じだ。



 預かっていた道具の入った収納袋と、食材の入った収納袋を返す際ディートヘルムさんに、中のお肉をガッツリいろんな味で焼いておいた事や、サイドメニューになりそうなものをいくつか仕込んでおいた事をこっそり伝えておいた。

 大感激されて、またしても土下座せんばかりの勢いでお礼を言われてしまい、何事かと他の皆が集まってきて、またしてもお礼の嵐になったのだった。

 一応、あの料理人の方が書いてくれた簡単レシピ帳の存在も報告しておいたんだけど、それでも、誰も料理を作ろうって言い出さないのには、逆の意味で感心した俺だったよ。



 翌朝、いつもの従魔達総出のモーニングコールに叩き起こされた俺は、眠い目を擦りつつ何とか起き出した。

「ふああ、そういえばここは水場が無かったな。じゃあ、サクラに綺麗にしてもらうか」

 ちょとだけ伸びたヒゲを撫でつつそう呟くと、跳ね飛んできたサクラがポヨーンと俺に当たって転がった。

「ちゃんとリナさん達がいつもの水場を用意してくれたよ! 水遊びしたいで〜〜す!」

「あはは、そうなんだ。了解。じゃあちょっと待ってくれよな」

 笑ってそう言い、急いで身支度を整える。

 うっかり中途半端な格好でテントの外に出たら、絶対に中から出てきた獰猛なジェムモンスターに突っ込まれたりするんだよ。でもって、しっかり準備をしてから出れば何事もないんだよな。

 苦笑いしてそんな事を考えながら身支度を整えて、防具もしっかりと装備する。最後に剣帯を締めてヘラクレスオオカブトの剣を装着すれば準備完了だ。

 跳ね飛んで集まってきたスライム達を引き連れて外に出ると、マックス達も嬉々として俺の後をついて来た。

 いつもよりやや大きめの噴水が噴き上がる泉を見て感心しつつ、とりあえず顔を洗ってサクラに綺麗にしてもらう。

「なあ、ちょっと思ったんだけど、別に俺を待たなくても好きに水場で遊んで良いんだぞ?」

 そのままいつものようにサクラをフリースローで泉に投げ込んでやろうとしてふと思いついてそう言ったんだけど、俺の手の上でサクラが不思議そうな様子でビヨンと伸びた。

「だって、ご主人がいるからサクラ達は水遊び出来るんだよ?」

「ん? どういう事? 水場があれば、別に俺を待たなくても好きに遊んで良いんだぞ?」

 思わずサクラと顔(?)を見合わせるような感じになったところで、唐突に右肩に現れたシャムエル様が俺の右頬をペチペチと叩いた。



「あのね、分かっていないみたいだから解説しま〜す!」



「おう。お願いします」

 ちょっとドヤ顔なシャムエル様の言葉に、俺は半ば無意識にサクラをにぎにぎしつつ頷く。

「まず、従魔達にとって、ご主人が一番なのは分かるよね?」

「ああ、それはもちろん分かっているよ」

「そこで、従魔達が勝手に水遊びするかどうかって話になる」

 意外に真剣なその説明に、俺も真顔になる。ええ? これってそんな難しい話か?

「俺は別に遊んでくれても良いんだけど、そうじゃあないって口ぶりだな」

 少し考えながらそう言うと、シャムエル様は真顔でうんうんと頷いた。

「例えば、こう考えてみて。ケンがテントの中にいるのに、スライム達が勝手に外に出て水遊びを始めたとする」

「おう、別に良いんじゃあないか?」

「だけどそれに気付かず、ケンがそのまま水場とは反対側の出入り口から出て何処かに行ったりしたらどうする? 別にマックスに乗らなくても、ケンにはムービングログがあるし、歩いて何処かへ行く事だって不可能じゃあないよね? それで、勝手にやった水遊びを終えてテントに戻ってみて、そこにケンがいなかったらどうなると思う?」

「ああ、それはちょっと……大変な事になるだろうな」

 従魔達は、スライムを含めて全員が必ず俺の位置を常に把握してくれている。

 何かあったら即座に対応してくれるし、それこそ俺が転んだりした時にはスライム達が絶対に守ってくれる。

 それなのに、知らない間に俺が何処かへ行ってしまったりしたら……。

 思わず手にしていたサクラを見ると、まるで俺の腕に縋り付くみたいにしてビヨンと伸びて絡まってきた。

「そっか、俺が遊んで良いって言った時なら、俺は従魔達がそこにいる事を分かっているから離れて好きに遊んでも大丈夫だけど、俺が知らない間に水遊びをして、万一にも俺を見失ったりしたら大変だから勝手な事は絶対にしないわけか」

「そうそう。これは基本的にケンだけじゃあなくて他の従魔達も同じだよ。何であれ、ご主人の許可無しには従魔達は絶対に勝手をしない。例え目の前にどんな好きなものがあっても、どんな美味しいものがあっても、従魔達にとってはご主人以上に大好きなものも大事なものもないんだ。だから、ご主人側もそれだけは忘れないでいてあげてね。あの子達にとって、ご主人は文字通り全てなんだからさ」

「了解。じゃあ許可するから遊んでおいで!」

 笑ってそう言った俺は、ずっと手にしたままだったサクラをゆっくりとフリースローで大きな泉に放り込んでやった。

「アクアもお願いしま〜す!」

「アルファもお願いしま〜す!」

 俺がサクラを泉に投げ込んだのをみて、辺りに転がっていたスライム達が次々にそう言いながら跳ね飛んでくる。

 笑った俺は、次々に跳ね飛んでくるスライム達を空中キャッチしてはそのままフリースローで泉に投げ込んでやった。

 その後に走ってきたマックス達と場所を交代してやり、豪快に水飛沫をあげて遊び始めた従魔達を見て朝から和んだ俺だったよ。

 かなり暖かくなってきたから、たまには一緒にまた水遊びをしてもいいかもな。

 時折飛んでくる水飛沫を払いつつ、のんびりとそんな事を考えた俺だったよ。



挿絵(By みてみん)

2025年3月14日、アース・スターノベル様より発売となりました「もふもふとむくむくと異世界漂流生活」第十巻の表紙です。

ついにもふむくも二桁の大台に突入です!

改めまして、どうぞよろしくお願いしますm(_ _)m


今回も引き続き、れんた様が表紙と挿絵を最高に素敵に可愛らしく描いてくださいました。

連載開始当初からの目的地であったバイゼンに、ようやくの到着です!

到着早々色々と騒ぎが起こります。

そして貴重な女性キャラも登場しますよ!

その貴重な女性キャラを描いた今回の口絵も大爆笑させていただきましたので、どうぞお楽しみに!




挿絵(By みてみん)

「もふもふとむくむくと異世界漂流生活〜おいしいごはん、かみさま、かぞく付き〜」

コミックアース・スター様にて、コミックス第四巻が2025年3月12日に発売となりました!

もちろん今回も作画はエイタツ様。


ハスフェルに続きギイも、それからフランマもコミックスに登場です!

いつもながら最高に可愛いもふもふむくむく達と、美味しい食事!

そして、地下洞窟と恐竜達とテイム!

盛り沢山なもふむくコミックス第四巻を、どうぞよろしくお願いします!

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