賑やかな夕食!
「おかえりなさい。今日の収穫はどうでしたか?」
賑やかな声に、料理が一段落した俺は笑顔でそう言いながらテントの外に顔を出した。
「ええ! ケンさんじゃあありませんか!」
「ええ、どうしてケンさんがここに?」
「しかもこの様子は一体??」
完全武装に収納袋をいくつも担いだドワーフ達は、俺の顔を見るなり驚きの声を上げてそう尋ねてきた。
中にはポカンと口を開けて俺を見ている人もいるくらいだ。
「俺は、仲間達と一緒に飛び地で狩りをしに来たんですよ。そうしたらこちらに先客のベースキャンプと思しきテントが幾つもあるのに気付いて、一応挨拶をしておくつもりで声をかけたんです」
その辺りの冒険者間のトラブル事情はハスフェルから詳しく聞いたのでにっこり笑ってそう言うと、皆納得したかのように揃ってうんうんと頷いた。
「確かに、飛び地や地下洞窟などに入った際、複数の冒険者が同時期に入って中で鉢合わせをすると揉める場合があるからな」
「誰かいるのに気付けば、声掛け程度はするべきでしょうからな」
「それで揉める場合もあるが、知らずにいきなり中で鉢合わせするよりは、まだマシだな」
さすがは冒険者を兼任する職人さん達。その辺りの事情もご存知だったらしく揃ってまた頷いている。
「それで、ディートヘルムさんがおられて、バイゼンの皆さんだと気付いて安心したんですよ。それで話をしていたんです。食料事情がなかなかに厳しいんですって?」
苦笑いした俺の言葉に、ドワーフさん達が揃って爆笑している。
「わはは、そうなんですわい。ですがまあ、ここまで来て贅沢は言いませぬよ。食事など腹さえ膨れれば……」
そう言いながら、ほぼ準備万端整っているバーベキューパーティーの会場を見て途中で言葉が途切れる。
さっき渡した塊肉は、もうめっちゃ良い香りが立ち上っていて、ほぼ完璧に第一弾が焼き上がっている状態だ。
「おお、さすがは最強の魔獣使い殿。食料事情も豪華なようですな」
完全に他人事なその言葉に、笑った俺は収納していた山盛りに切った岩豚の肉を一皿取り出して見せた。
「そうなんですよね。俺達の食料事情は従魔達のおかげでとっても贅沢しているんですよ。それで皆さんが栄養失調になったら大変なので、再会を祝して本日の夕食に皆様をご招待しようかと思いましてね。いかがですか?」
「そ、それはまさか……い、岩豚……」
「それを我らに食べさせてくださると? ご冗談を……」
信じられないとばかりに小さな声で尋ねられて、とうとう俺は我慢出来ずに思い切り吹き出す。
「まさかでも、冗談でもありませんよ。皆で好きなだけ肉を焼いて食べましょう。ほら、座って座って」
椅子が足りないので、俺の仲間達は全員がスライムソファーに座っている。もちろん俺も、スライム達にソファーを作ってもらっているよ。
「ありがとうございます!」
全員の声が綺麗に重なり、直後に拍手喝采になる。
用意した椅子にドワーフさん達が嬉々として座るのを見て、俺はちょっとドヤ顔で山盛りのお肉を次々に取り出して行ったのだった。
一つ出す度に拍手大喝采になったのは言うまでもない。
「いやあ、本当に美味しいですなあ」
「ケンさんに心からの感謝を!」
「久しぶりに食事が美味しいと思えましたぞ」
山盛りの肉の追加を出す俺に、満面の笑みのドワーフさん達が何度もお礼を言ってくれる。
中には、岩豚のお肉のあまりの美味しさに泣き出す人まで出る始末。
「肉も魚もまだまだありますからね。どうぞ遠慮せずに好きなだけ食べてください」
にっこり笑った俺の言葉に、またあちこちからお礼の声が上がった。
ちなみに、俺は白ビールをちょっと飲んだだけであとはもうひたすら食っているんだけど、ドワーフの皆さんは全員が平然とお酒を飲んでいる。中には吟醸酒やストレートのウイスキーを飲んでいる人までいて、ちょっと遠い目になった俺だった。
ハスフェル達も、普段に比べれば一応アルコールは少なめではあるが、俺的にはどう見ても飲み過ぎレベルに飲んでいるよ。だけどまあ、ここは一応安全地帯らしいから飲んでも大丈夫との判断なんだろう。
でもって、最初は岩豚を中心に各種ジビエを野菜と一緒に大量に出したんだけど、追加の第二弾の時点でお肉や野菜だけでなく、仕込んでおいた握り寿司や巻き寿司なんかを色々と出したのだ。
ドワーフの皆さんは最初、何だこれ? って感じで全く寿司には手出ししなかったんだけど、ハスフェル達やアーケル君達をはじめとする俺の仲間達が嬉々としてお寿司を取り始めたのを見て、何人かがこれは何だとハスフェル達やアーケル君達に聞き始めたのだ。
当然彼らがお寿司の美味しさを力説してくれて、興味をもった何人かのドワーフさんがそこまで言うならと、若干ビビりつつも食べてみたのだ。
まあその結果、当然ながらここでも争奪戦が行われる事態になったのだった。
でもまあ、バイゼンでは新鮮な魚を手に入れる機会は川沿いの街に比べたら少ないだろうから、生魚をそのまま食べる習慣は根付かないかもしれない。
それでも、せっかくの機会なんだから生魚の美味しさを少しでも知ってもらいたいと考える魚好きな俺だったよ。
だって、需要があれば、商人さん達が時間遅延の収納袋に入れて生魚をバイゼンまで運ぶ事だって出来るだろうからさ。
お酒を片手に嬉々として握り寿司を食べるドワーフさん達を見て、ちょっとドヤ顔になった俺だったよ。
2025年3月14日、アース・スターノベル様より発売となりました「もふもふとむくむくと異世界漂流生活」第十巻の表紙です。
ついにもふむくも二桁の大台に突入です!
改めまして、どうぞよろしくお願いしますm(_ _)m
今回も引き続き、れんた様が表紙と挿絵を最高に素敵に可愛らしく描いてくださいました。
連載開始当初からの目的地であったバイゼンに、ようやくの到着です!
到着早々色々と騒ぎが起こります。
そして貴重な女性キャラも登場しますよ!
その貴重な女性キャラを描いた今回の口絵も大爆笑させていただきましたので、どうぞお楽しみに!
「もふもふとむくむくと異世界漂流生活〜おいしいごはん、かみさま、かぞく付き〜」
コミックアース・スター様にて、コミックス第四巻が2025年3月12日に発売となりました!
もちろん今回も作画はエイタツ様。
ハスフェルに続きギイも、それからフランマもコミックスに登場です!
いつもながら最高に可愛いもふもふむくむく達と、美味しい食事!
そして、地下洞窟と恐竜達とテイム!
盛り沢山なもふむくコミックス第四巻を、どうぞよろしくお願いします!




