焼肉パーティーの準備開始!
「じゃあ、食材の準備はするから、セッティングはまたお願いしてもいいかな?」
振り返った俺がそう言うと、笑顔のハスフェル達が揃ってサムズアップで答えてくれた。アーケル君達や新人さん達も笑ってその後ろでサムズアップしている。
何しろ、あの大きなバーベキューセットだけでなく業務用コンロや焼き台も、ギイが収納して持ってくれているらしいので郊外でもバーベキューが出来るんだよ。
早速動き始めた彼らを見て、ディートヘルムさんが慌てている。
「一応、簡易コンロはそれなりの数があるから、持って来るよ!」
ディートヘルムさんはそう言ってテントの中へ走っていき、大きめの収納袋をいくつも抱えてすぐに走って戻ってきた。
「ここに簡易コンロや鍋、カトラリーなどの道具類が、それでこっちに持って来た食材が入っています。何か使えるものがあれば使ってください!」
「ええ、良いんですか?」
差し出された収納袋を見て驚く俺に、ディートヘルムさんは苦笑いしながら何度も頷く。
「食事当番はほぼ一巡したんですが、今のところさっき言った乾燥系の食材と、ベーコンと玉子以外はほぼ使われていないんですよ。パンは専用の収納袋に入れているので、こっちがそれ以外の食材が入った収納袋なんです。このままだとベーコンとチーズ、それから乾燥野菜と干し肉以外はそのまま持って帰る事になりそうなので、どうぞ遠慮なく使ってください!」
いっそ清々しいくらいの開き直ったその言葉に、俺は遠慮なく吹き出したよ。
「分かりました。では遠慮なく使わせていただきます」
受け取って中を見ると、3000と書かれた二色の文字が見えた。
「なかなか頑張って持って来たみたいだけど……まず何が入ってるんだ?」
小さくそう呟き、ここで我に返って振り返ると、すでに俺の分も含めて全員分のテントが、ここから少し離れたところに並べて張られていた。スライム達、仕事早すぎ。
「じゃあ、準備するか。おおい、スライム達全員集合〜〜」
「はあい! 今行きま〜〜す!」
張り切ったアクアの声の直後、俺のスライム達がテニスボールサイズになって集まってきた。
って事で、スライム達を引き連れた俺は自分のテントに戻り、受け取った収納袋の中にどんな食材が入っているのかを確認する事にした。
まずはスライム達にいつものジビエ各種を大量に渡して切っておいてもらい、その間に俺は預かった収納袋の中身を確認する。
ちなみに、出かける前に冒険者ギルドに頼んで捌いてもらったジビエのお肉は、収納袋ごと全部引き取って来ているので、俺の手持ちのお肉類は、そりゃあもう凄い量が確保されているんだよ。しかも今は魚も大量にあるから、もう好きな食材を好きなだけ使い放題状態だ。
「おお、レシピまで入っているのに、誰も作らなかったのかよ」
でもって、預かった収納袋の中から食材と一緒に出てきた分厚いノートを開いて思わずそう呟く。
恐らくこれを用意してくれたのは料理人なのだろう。素人でも簡単に作れる煮込み料理をはじめ、煮たり焼いたりするだけの簡単な料理のレシピが、幾つも手書きでびっしりと書かれている。
そして食材に関しても、鶏肉豚肉牛肉だけでなく野菜や根菜類、果物やキノコ、各種乳製品等々がそれぞれ大量に入っていた。同じく大量の生卵とゆで卵もある。
それから、入っていた木箱には岩塩をはじめ様々なスパイスなどがこれまた大量に入っていた。
これ、ちょっとでも料理の心得のある人がいれば大感激するレベルの準備具合だぞ。
ううん、これを用意してくれた料理人さんの苦労が偲ばれるよ。
ちなみに、聞いていた通りに生卵とチーズ類はちょっとは減っているが、それでもまだまだ一年くらいは籠城出来そうなレベルで入っている。第二陣は三十人だと聞いたけど、それにしてもやっぱり量がおかしいぞ、これ。
「じゃあ、せっかくだからお肉は焼いて戻しておいてやるか。それならすぐに食べられるからな。春野菜とキノコが大量に入っているから、これは使わせてもらおう」
笑ってそう呟いた俺は、大量の各種お肉を預かった道具入れから大きめのボウルを幾つも取り出して種類別に入れておく。
「ああそうだ。おおい、塊肉はいるか?」
ふと思いついて今まさに準備中のハスフェル達に声を掛けると、満面の笑みのアーケル君が走ってきた。
「ぜひお願いします! あの、いつも使ってる赤ワインソースもあればお願いします!」
「もちろんあるから、好きなだけ使ってくれ!」
あの赤ワインソースは、今ではいくつも用意して大量に収納してあるから、好きなだけ使ってもらえる。
取り出した赤ワインソースと一緒に手持ちの大きな塊肉をいくつも渡しながら、俺達は満面の笑みで頷き合ったのだった。
肉と赤ワインソースの入った収納袋を抱えて戻るアーケル君を見送った俺は、まだまだお肉各種をガッツリ準備してくれているスライム達にお願いして、こっちの普通のお肉各種も切り分けてもらえるようにお願いした。
それで預かった簡易コンロとフライパンを机に乗るだけ並べてオンハルトの爺さんに手伝ってもらい、時間が許す限りひたすらお肉各種を焼いては大皿に山盛りにして収納袋に戻すのを繰り返していた。
一応、塩味メインだけど照り焼きだったり生姜焼きだったり、味噌漬け肉にしたりと色々と味変もしておいてあげた。それから手付かずだった生野菜は、ちぎって簡単なサラダにしてこれも大皿に山盛りにして戻し、温野菜は、一口サイズに切って茹でておいてあげたよ。
まあ、これくらいしておけば食べてくれるだろう。自分の仕事に満足していると、テントの外から賑やかな声が聞こえてきた。どうやらドワーフさん達が戻って来たらしい。
ディートヘルムさんの声も聞こえて、俺も笑ってテントの外に顔を出したのだった。
2025年3月14日、アース・スターノベル様より発売となりました「もふもふとむくむくと異世界漂流生活」第十巻の表紙です。
ついにもふむくも二桁の大台に突入です!
改めまして、どうぞよろしくお願いしますm(_ _)m
今回も引き続き、れんた様が表紙と挿絵を最高に素敵に可愛らしく描いてくださいました。
連載開始当初からの目的地であったバイゼンに、ようやくの到着です!
到着早々色々と騒ぎが起こります。
そして貴重な女性キャラも登場しますよ!
その貴重な女性キャラを描いた今回の口絵も大爆笑させていただきましたので、どうぞお楽しみに!
「もふもふとむくむくと異世界漂流生活〜おいしいごはん、かみさま、かぞく付き〜」
コミックアース・スター様にて、コミックス第四巻が2025年3月12日に発売となりました!
もちろん今回も作画はエイタツ様。
ハスフェルに続きギイも、それからフランマもコミックスに登場です!
いつもながら最高に可愛いもふもふむくむく達と、美味しい食事!
そして、地下洞窟と恐竜達とテイム!
盛り沢山なもふむくコミックス第四巻を、どうぞよろしくお願いします!