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先客の正体とこのあとの予定

「どうなったんだ?」

 ハスフェルが並んだテントの側まで行き声をかけたら、テントの中から誰か出て来たんだよ。でもって、その人とハスフェルとギイが話を始めたんだけど、さすがの俺の耳でも、これだけ離れていては会話の声は聞こえない。

 一応、いきなり斬り合いになったりせず、出て来た小柄な人とハスフェルとギイが顔を寄せて話をしているのを俺達は黙ってただただ見つめていた。



「あ、ハスフェルさんが笑ってますね」

 同じく心配そうに見ていたアーケル君の呟きに、同じ事を思った俺も小さく頷く。

 どうやら話し合いは友好的に進んでいるみたいだ。

「ケン、こっちへ来てくれるか!」

 すると、突然こっちを振り返って手招きするハスフェルの大声が聞こえて、俺とアーケル君が揃って飛び上がった。

「ああ、もしかしたら先客の冒険者の方は、早駆け祭りの英雄殿にお会いしたかったのかも!」

「いやいや、今回は俺は負けたんだから、それならリナさんかレニスさんだろうが!」

 笑顔のアーケル君の言葉に力一杯突っ込む俺。その声が聞こえたらしく、リナさんとレニスさんが揃って吹き出していた。

 だけどまあ、来いと言われればそりゃあ行きますよ。

 そう考えた俺は、マックスの背に乗ったままだった俺は、若干背筋を伸ばしつつマックスに合図を送ってハスフェル達のところへ向かった。アーケル君はその場に留まったままだ。

 当然、心得てくれているマックスは胸を張って堂々と進み、しかも若干ドヤ顔だったのに気付いて笑いを堪えるのに必死な俺だったよ。



「それで、何事だ?」

 テントのすぐ近くまで行ったところで出来るだけ平然とそう尋ねたけど、ハスフェルの隣に立ってこっちを見ていた人の顔に見覚えがあって思わず絶句する。

 それが誰だったのかに気づいた瞬間、俺は叫んでいた。

「ああ! もしかしてこの人達って、バイゼンから来ている人達だったりする?」

 だって、その人は俺の防具を作ってくれたディートヘルムさんだったんだからさ。

「ディートヘルムさん! お久しぶりです!」

 マックスから飛び降りて、そう叫ぶ俺。

「お久しぶりです。ケンさん。いやあ、自分が作った防具を身につけていてくださる姿をこうして郊外の現場で見るのは、防具職人にとってこれ以上ない喜びですよ」

 差し出された右手を握り返しながら、俺はもうこれ以上ないくらいの満面の笑みだ。

「おかげで、もう防御力めっちゃ爆上がりです。地下洞窟で恐竜と戦ってもほとんど不安がないくらいですから!」

 胸当てを叩きながらそう言うと、ディートヘルムさんも笑顔で頷いてくれた。

「そう言っていただけると職人冥利に尽きます。皆にもケンさんのその言葉を伝えます。彼らも聞いたら喜ぶでしょう」

 うんうんと頷くその言葉に、俺は思わずテントを見た。

「じゃあ、もしかしてフュンフさんもいるんですか?」

 バイゼンで、今から飛び地へ行くんだと言って嬉しそうに笑っていたフュンフさんの顔を思い出してそう尋ねる。

 会えたら、改めてヘラクレスオオカブトの剣のお礼を言いたい。

「残念だが、フュンフはもうバイゼンに帰ったそうだ。ここにいるのは第二陣の人達らしいぞ」

 笑ったハスフェルの言葉に納得する。

 確かに、全員一度には行けないので交代で行くんだって言っていたな。

 成る程、ここにいるのは派遣第二弾な訳か。

「そうなんですね。って事はがっつり素材は集まったんですか?」

 笑った俺の言葉に、ディートヘルムさんは満面の笑みになった。

「おう、ありったけ持って来た収納袋がパンパンになるまで集めたぞ。メタルブルーユリシスの翅も相当集まったらしい。もちろん俺達も毎日通って集めているよ。ちなみに今日俺がここにいるのは、メシ炊き担当だからだよ」

 今はもう午後のかなり遅い時間なので、俺達は今日のところは急いで中には入らずここで休む予定にしていたんだよ。

「へえ、もしかしてディートヘルムさんって料理も出来るんですか?」

 メシ炊き担当と聞いて思わずそう尋ねる。

「んな訳あるかよ。メシ炊きは順番に全員が一日ごとに交代で担当している。だいたい皆、とりあえず乾燥野菜と干し肉を鍋にぶちこんで水入れて炊くだけだよ。後は硬いパンとチーズ、ワインがあれば何とかなる」

 いっそ開き直ったかのようなその言葉に若干の頭痛がする俺。

「ええと、ちなみに第二陣の人数ってどれくらい来られているんですか?」

 思わずそう尋ねる。

「来ている人数か? 第二陣は俺を含めて全部で三十人だ。本当はもっと来たがっていたんだが、まあ春になってバイゼンに来る冒険者が一気に増えたからな。別注品に対応しようと思ったら、やはり作業するにはそれなりの人数が必要だからな」

 苦笑いするその言葉に、俺はにんまりと笑って鞄を見せた。

「じゃあ、夕食をご一緒しませんか? 皆さんはまだ戻って来ていないんですよね?」

 飛び地の中は太陽が無いので日が沈まない。

 それでもハスフェル達は体内に正確な時計を持っているから外の時間が分かるみたいだ。だけどドワーフさん達はどうしているんだろう?

「そりゃあ嬉しい。もちろん喜んでご一緒させていただくよ。ちなみにメシ代くらい喜んで払うぞ。ケンさんが作ってくれる飯はそりゃあ美味しかったからなあ」

 うっとりとした顔でそう言われて、もう笑うしかない俺だったよ。



 聞けば、タイマーみたいに一定の指定した時間を計る道具があるらしく、それを複数使って一日の時間を狂わないように管理しているらしい。

 成る程。体内時計が無い場合はそんな方法があるのか。

 さすがはバイゼンの職人さん達だ。密かに感心しつつ、ハスフェルと頷き合う。

 って事で、バイゼンの職人さん達が戻ってきたら一緒に夕食を食べる事にした。

 さて、ここはやっぱり各種ジビエで焼肉パーティーですよね!

 今の俺の手持ちには、ギルドで捌いてもらった各種ジビエだけでなくいろんな魚も大量に収納されているから、ちょっとやそっとでは減らないくらいにあるからさ。

 そう提案すると、それはもう大感激されてしまい何度もお礼を言ってくれた。

 聞けば、それなりの食材は時間遅延の収納袋に入れて相当量持って来ているらしいんだけど、どうやらほとんどの人達は料理なんてほぼした事が無いらしく、せいぜいがベーコンを焼くか玉子を焼くくらい。後はさっき聞いたように適当スープを作る程度なんだって。

 いやいや、長期戦でずっとその食事はさすがに辛いでしょう。

 ドワーフの皆さんの健康管理を考えて、ここは手持ちの作り置きを少し渡しておくべきか、割と本気で考えた俺だったよ。



挿絵(By みてみん)

2025年3月14日、アース・スターノベル様より発売となりました「もふもふとむくむくと異世界漂流生活」第十巻の表紙です。

ついにもふむくも二桁の大台に突入です!

改めまして、どうぞよろしくお願いしますm(_ _)m


今回も引き続き、れんた様が表紙と挿絵を最高に素敵に可愛らしく描いてくださいました。

連載開始当初からの目的地であったバイゼンに、ようやくの到着です!

到着早々色々と騒ぎが起こります。

そして貴重な女性キャラも登場しますよ!

その貴重な女性キャラを描いた今回の口絵も大爆笑させていただきましたので、どうぞお楽しみに!




挿絵(By みてみん)

「もふもふとむくむくと異世界漂流生活〜おいしいごはん、かみさま、かぞく付き〜」

コミックアース・スター様にて、コミックス第四巻が2025年3月12日に発売となりました!

もちろん今回も作画はエイタツ様。


ハスフェルに続きギイも、それからフランマもコミックスに登場です!

いつもながら最高に可愛いもふもふむくむく達と、美味しい食事!

そして、地下洞窟と恐竜達とテイム!

盛り沢山なもふむくコミックス第四巻を、どうぞよろしくお願いします!

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