表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1971/2071

再生した森と回復魔法の事

「うわあ……」

「ケンタウロスの術ってすっげえ……」

「夢みたいだわ……」

「でも夢じゃあないよな……」

「だよなあ……すっげえ……」

 突然始まった早送り映像のような森を再生させるとんでもない回復魔法を前に、若者達五人は、もう目をこぼれ落ちんばかりに見開いて、揃って呆然とそう呟いている。

 ボルヴィスさんとアルクスさんは、その隣で同じようにこぼれ落ちんばかりに目を見開いたきり、こちらは言葉も無く完全に固まっている。

 ベリーを知るリナさん一家とランドルさんも、さすがにこの衝撃の展開にはついていけなかったらしく、こちらも似たような有様で揃って目を見開いて固まっているよ。



「まあ、こんなもんでしょうかね。なかなか上手くいったようで安心しました」

 一仕事終えたと言わんばかりに笑ったベリーは、手を下ろして軽く肩を回してから腕を思い切り伸ばし、そう言ってすぐ側まで伸びてきていた細い枝先をそっと撫でた。

 新緑の綺麗な色をしたその小さな葉っぱにごく小さな芋虫が複数いるのが見えて、慌てて後ろに下がった俺だったよ。

 だけど、しばし考えて気付いたその衝撃の事実に驚き、俺は目を見開いてベリーを見た。

「なあ、ベリー。ちょっと質問してもいいか?」

「ええ、改まってなんでしょうか? 私に分かる事でしたら何でもお答えしますよ」

 驚いたベリーが、そう言ってこっちに向き直ってくれた。

「これ、今の回復魔法って……もしかして、森にいた虫や動物も再生している?」

 だって、周囲一面が完全な焼け野原になっていた場所なのに、今の俺の目には咲いている花の周りを飛ぶ虫や、綺麗な声で囀る鳥の鳴く声も聞こえているんだよ。

「もちろんです。この術は植物を新たにこの地に芽吹かせるのではなく、元々あった状態に復元する回復魔法ですからね。つまり現状の再生です」

 ちょっとドヤ顔になったベリーの説明に、俺だけでなく横で一緒に聞いていたハスフェル達も感心したように頷いている。

『ちなみに、今回は私も裏からちょっとだけ手伝ったから、今回の騒動に巻き込まれた森にいた動物やジェムモンスターの再生も完全に行われているよ。普通の復元魔法なら、植物と同時に昆虫までは再生出来るけど、ある程度以上の大きな動物やジェムモンスター達まではちょっと無理なんだよね』

 俺の右肩に現れたシャムエル様がドヤ顔でそう言い、その隣にすっ飛んできたカリディアも同じくドヤ顔になる。

「私は、通常の回復魔法以外にその復元魔法が使えるんです。元いた幻獣界でエントの長老がおわす漆黒の森を守る役目を担っていた我らの一族にとって、復元魔法は必須の術でしたからね。でもこの復元魔法は、ベリーによるとこの世界では知識としては残っていましたが扱える人が誰もおらず、ケンタウロスの方々の中でも伝説扱いだったみたいです。それどころか、本当にそんな術があるのかどうかすら分からず、ケンタウロスの方々の間でも長年の研究課題の一つだったそうですよ。今回、私が実際に復元魔法を使って見せましたから、もうベリーはこの術を完全に習得しました。良かったですねベリー。貴方の知識の補完のお役に立てて私も嬉しいですよ」

「ええ、次に父上に会う事があれば、また自慢するネタが出来ましたよ。本当にありがとうございます」

 嬉しそうにそう言って笑ったベリーの言葉に、あのばんえい馬みたいで超マッチョで眼光鋭い長老を思い出してしまい、ちょっと笑った俺だったよ。

 確か、ベリーって長老の息子で後継ぎ、つまり次世代の長老候補だったらしい。

 そんな彼がまた新たな知識を得る事が出来て良かった。彼の旅も無駄じゃあないって思えて俺も嬉しいよ。



 のんびりとそんな事を話している間に、ようやく固まっていた皆が復活したみたいでほぼ同時に歓声が上がり、皆それぞれに再生した周りの木々や草花を見て、触れて、また歓声を上げていたのだった。

「いやあ、本当にすごい術を見せてもらったよな。ところでベリー、腹は減っていないか?」

 あれだけ凄い術を行使したんだから、きっと疲れているはずだ。

 この世界に明確な数値でのステータスがあれば、MP一桁か下手をすればゼロって場面だろう。

「そうですね。実を言うとかなりお腹が減っています」

 苦笑いするベリーの言葉に頷いた俺は、大急ぎで鞄に入ったサクラからあの飛び地の激うまブドウとリンゴをはじめとしたいろんな果物を取り出して大きな箱ごと渡してやった。

 こうしておけば、フランマやカリディアも一緒に食べられるだろうからな。

 嬉しそうに食べ始めたベリーを見て、一つため息を吐いた俺は仲間達を振り返った。

「ところで、腹減ってないか?」

 笑った俺の問いかけに、全員揃った綺麗な返事が返ってきたよ。

 お腹空きました! ってな。



挿絵(By みてみん)

2025年3月14日、アース・スターノベル様より発売となりました「もふもふとむくむくと異世界漂流生活」第十巻の表紙です。

ついにもふむくも二桁の大台に突入です!

改めまして、どうぞよろしくお願いしますm(_ _)m


今回も引き続き、れんた様が表紙と挿絵を最高に素敵に可愛らしく描いてくださいました。

連載開始当初からの目的地であったバイゼンに、ようやくの到着です!

到着早々色々と騒ぎが起こります。

そして貴重な女性キャラも登場しますよ!

その貴重な女性キャラを描いた今回の口絵も大爆笑させていただきましたので、どうぞお楽しみに!





挿絵(By みてみん)

「もふもふとむくむくと異世界漂流生活〜おいしいごはん、かみさま、かぞく付き〜」

コミックアース・スター様にて、コミックス第四巻が2025年3月12日に発売となりました!

もちろん今回も作画はエイタツ様。


ハスフェルに続きギイも、それからフランマもコミックスに登場です!

いつもながら最高に可愛いもふもふむくむく達と、美味しい食事!

そして、地下洞窟と恐竜達とテイム!

盛り沢山なもふむくコミックス第四巻を、どうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ