メタルスライムと新人さん達の目標!
「おお、なかなかに良きもっこもこだねえ」
新しくテイムした、小さくなったファングを撫でながら満足そうにそう呟く。
ご機嫌で喉を鳴らすファングは、女子率の高い俺の従魔達の中では貴重な雄の従魔でもある。
俺とのしばしのスキンシップを楽しんだ後、順番に他の子達と改めて挨拶をして、セーブルやファルコ、カッツェ達、雄の従魔達と顔を寄せて何やら楽しそうに話をしていたよ。
そんな従魔達を見て和んでいると、突然、新人コンビの二人がほぼ同時に悲鳴のような歓声を上げて、俺は割と本気で驚いて飛び上がったよ。
「ケ、ケンさん凄い!」
「あのデカいサーベルタイガーを、いとも簡単にテイムしたよ!」
「「こんなの、凄すぎて全然参考になりませ〜〜ん!」」
二人同時の最後の叫びに、その場は大爆笑になったのだった。
「じゃあ、次がいれば誰かテイムしてみるか?」
笑いが収まったところで俺がそう言うと、シェルタン君とムジカ君とレニスさん、そしてマールとリンピオが揃って凄い勢いで首を振った。
「お、俺は、メタルスライムのテイムを希望します!」
「俺もメタルスライムを希望します!」
「私も、メタルスライムを希望します!」
「俺もメタルスライムでお願いします!」
「あの、俺もメタルスライムを希望します!」
そして真顔の全員がほぼ同時にそう叫んだのだった。
若干、言葉が合っていなかったけど、全員の言いたい事はよく分かったよ。
まあ、ここに出るジェムモンスターも魔獣も相当に強いしデカいから、自分には無理だと思うのならやめたほうがいいだろう。もちろん、俺も無理強いはしないよ。
「あはは、了解だ。じゃあ当初の予定通りにメタルスライムの出る場所へ行こう。まあ途中でまた何か出れば、それはその時って事でいくか」
「それを、世間では行き当たりばったりと呼ぶ」
真顔のハスフェルのツッコミに、もう一回大爆笑になった俺達だったよ。
ハスフェルとギイを先頭にしたいつもの陣形で、従魔達に守られつつ目的のメタルスライムの出る場所を目指す。
途中に、何度か周囲に何かの気配を感じたりした事もあったけど、特にベリーからの警告も無く、従魔達も警戒しつつも知らん顔をしていたので、俺達もそれに倣って警戒はしつつも知らん顔をしていたのだった。
森を抜けて大きな石がゴロゴロ転がる岩場を通り抜けたあと、やや深めの茂みとところどころに木が生えた草原に出た。
ここがメタルスライムの出る茂みだ。
「どうする? まだ日が暮れるまでにはもう少し時間があるし、少しでもメタルスライムを見つけてテイムしておくか?」
一日のテイム数には上限がある。それを考えると一匹でも二匹でも今日のうちにテイムさせておいてあげるべきだろう。一晩寝たらリセットされるんだからさ。
そう考えて尋ねると、新人さん達だけでなくアルクスさんとボルヴィスさんも揃って頷いた。
「ぜひお願いします!」
全員の声が揃ってそう言い、俺はハスフェルと顔を見合わせて頷き合った。
「ええと、じゃあ今からここでスライム狩りをするから、周囲の警戒をお願いしてもいいかな? それとも、また交代で狩りに行くか?」
一応、昼の間に狩りに行ってもらっているから大丈夫だと思うが、もしかしたらもっと狩りに行きたいかもしれないのでそう聞いてやると、マックスとニニが顔を見合わせてから揃ってこっちを見た。
「もちろん、周囲の警戒は任せてね! 昼に狩りに行ったところだからお腹は一杯だから大丈夫よ。じゃあ、私達もこっちのスライム狩りに参加するわ。またメタルスライムを見つけたら、とりあえず確保してあげればいいのよね?」
おお、俺達なんかよりもはるかに動体視力と反射神経に優れた従魔達が協力してくれれば、メタルスライムの確保も容易だろう。
「従魔達が協力してくれるってさ。じゃあ、目指せメタルマスターだな」
笑った俺の言葉に、皆笑顔になる。
「よろしくお願いします! でもあの……」
その時シェルタン君が、何やら緊張した様子で片手を上げながらそう言って俺を見てから従魔達を見た。
「ん? どうかしたか?」
「いえ、あの……」
その様子が明らかに困っている風で、なんだか心配になってきた。
「おう、何かあるなら遠慮なく言ってくれていいぞ。協力は惜しまないからさ」
そう言ってやると、顔を見合わせたシェルタン君とムジカ君だけでなく、レニスさんとマールとリンピオが揃って進み出てきた。
彼らはまあ早駆け祭りの前には色々あったが今ではすっかり打ち解けていて、年齢が近い事もあって今ではとても仲が良い。
何事かと身構える俺達に向かって、五人が揃って深々と頭を下げた。
「ここまで連れてきていただき、本当にありがとうございます!」
五人の声が綺麗に揃う。
「それで、俺達、いつも話していたんです」
「連れてきてもらった最初の時は、まずは何色でも良いのでメタルスライムを一匹だけ自力でテイムしてみようって」
「まずは一匹で良いんです」
「それで、次からは自力でここに来ようって!」
「なので、メタルスライム全種類を集めるのは、それからにしようって!」
五人が先を争うようにして口々にそう言うのを、俺達は呆気に取られて聞いていたよ。
しばしの沈黙の後、俺は大きく頷いた。
「うん。確かにそれは素晴らしい目標だな。よし、じゃあまずは自力で一匹テイムしてみるといい。メタルスライムのジェムは貴重な色付きジェムだから、他はそのまま従魔達にいつも通りに狩って貰えばいいよ。って事だから、まずは普通に狩りをしてくれて良いぞ」
最後はマックス達に向かってそう言うと、話を聞いていた従魔達がそれぞれ顔を上げてうんうんと頷いてくれた。
「了解。じゃあそれでいきましょう。私達も遠慮なく狩れるからそれはそれで嬉しいわ」
目を細めたニニの言葉を全員に通訳してやってから、俺は拾った小石を皆に見せた。
「じゃあ、まずは第一弾だ。テイム希望者はまずは自力での確保を目指してください! 俺達は遠慮なく狩らせていただきます!」
「お願いします!」
全員の声が重なり、俺は手にしていた小石を茂みに向かって思い切り投げつけたのだった。
せっかくだから、レアなメタルスライム出ろ!
心の中でそう願った俺だったよ。
2025年3月14日、アース・スターノベル様より発売となりました「もふもふとむくむくと異世界漂流生活」第十巻の表紙です。
ついにもふむくも二桁の大台に突入です!
改めまして、どうぞよろしくお願いしますm(_ _)m
今回も引き続き、れんた様が表紙と挿絵を最高に素敵に可愛らしく描いてくださいました。
連載開始当初からの目的地であったバイゼンに、ようやくの到着です!
到着早々色々と騒ぎが起こります。
そして貴重な女性キャラも登場しますよ!
その貴重な女性キャラを描いた今回の口絵も大爆笑させていただきましたので、どうぞお楽しみに!
「もふもふとむくむくと異世界漂流生活〜おいしいごはん、かみさま、かぞく付き〜」
コミックアース・スター様にて、コミックス第四巻が2025年3月12日に発売となりました!
もちろん今回も作画はエイタツ様。
ハスフェルに続きギイも、それからフランマもコミックスに登場です!
いつもながら最高に可愛いもふもふむくむく達と、美味しい食事!
そして、地下洞窟と恐竜達とテイム!
盛り沢山なもふむくコミックス第四巻を、どうぞよろしくお願いします!