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さあ出発だ!

「おはようございます!」

 リビングへ行くと、もう全員が準備万端な装備で待ち構えていた。

 もちろん、リビング奥の定位置でもふ塊になっている従魔達もキラッキラの目で俺を見ている。

 何その全員揃ってのやる気満々な感じは。

「ごめんごめん。すぐ用意するからな」

 まあ、とりあえず食事が先だ。

 気を取り直してそう言った俺は。鞄に入ってくれたサクラが出してくれるいつもの朝食メニューを色々取り出していった。

 それを見たほぼ全員が手持ちの色々を出してくれたので、なんだかとっても豪華な朝食メニューになったよ。

 最近はこんな感じで手持ちの料理を皆が色々と出してくれるからメニューにバリエーションが出て有り難いよ。

 どうしても俺が一人ですると若干メニューが偏る気がするからさ。



「ごちそうさまでした。今日も美味しかったです!」

 笑顔のアーケル君の言葉に、皆も次々に笑顔でそう言ってくれる。

「いや、皆も色々出してくれたから、メニューが豊富になって有り難いよ。こちらこそ、ごちそうさま」

 そう言うと、皆も笑顔で顔を見合わせて笑っていた。

「ケンさんのおかげで街へ出た時に、屋台巡りや食堂で持ち帰りをしている店を探す楽しみが出来ましたよ。本当に、高性能の収納袋を一つ料理用に確保するだけでこんなに食生活が豊かになるとは、今まで考えた事もなかったですよ」

「だなあ、高性能の収納袋は、郊外で採取した素材やジェムを入れるものだとしか考えていなかったし、時間停止の機能付きは料理関係者が使うものだと思い込んでいたからなあ」

 苦笑いしつつ上位冒険者らしい事を言っているのは、アルクスさんとボルヴィスさんだ。

「特に、郊外では携帯食を齧るのが当たり前だと思っていたからなあ」

「そうそう。美味しいものは街へ行った時の楽しみなんだと、なんの疑いもなく考えていたからな」

 顔を見合わせてそう言いながらうんうんと頷き合うアルクスさんとボルヴィスさんの横では、俺以外の全員が真顔で頷いている。

「へえ、そうなんですね。俺にしてみれば、弁当の文化自体はある上にあれだけ便利な収納袋、ましてや時間遅延の収納袋なんてものまであるんだから、逆に郊外へ弁当を持っていったり、食料を持って行って料理をするって発想が出なかった事に驚くんだけどなあ」

 元いた世界のアウトドアグッズの充実っぷりを思い出しつつそう言うと、ほぼ全員が驚いたように俺を見てから首を振った。

「いや、弁当は当日に食べるものだと思っていたし、そもそも自分で料理をする冒険者なんて一握りですよ。それこそ引退後は食堂でも開くつもりの人でない限り、せいぜい肉を焼いたり、乾燥野菜なんかでちょっとしたスープを作る程度ですって」

 真顔のオリゴー君の言葉に、これまた全員が思いっきり頷いている。

「ええ、料理するのって楽しいのに」

 思わずそう言うと、それは料理が出来る人の意見ですと真顔のアーケル君に突っ込まれて、もう笑うしかない俺だったよ。

 どうやら、こっちの世界では郊外で料理をする文化はあまり定着していないみたいだ。

 っていうか、街に住む人、主に主婦の皆さんは家庭料理的なものは作っているみたいだけど、特に冒険者の人達は、さっきのオリゴー君の言葉にもあるみたいに料理人や料理人希望の人以外は、普段から料理をする事自体が少ないみたいだ。

 確か、ハスフェル達でも出会った頃に俺が料理をするのを見てそんな事を言っていたもんな。



 そんな話をしつつのんびりと食後の緑茶を美味しくいただき、一休みしたところでいよいよ出かける事にしたよ。

 張り切って集まって来る従魔達を順番に撫でたり揉んだりおにぎりにしたりしてやり、最後に待ち構えていたマックスに鞍と手綱を取り付けてやる。

「いよいよカルーシュ山脈へ行くぞ。危険な場所だからよろしくな」

「もちろんです! 何があろうとも絶対にお守りしますので、安心してください!」

 尻尾扇風機状態なマックスにそう言われて、笑って太い首に両手を広げて抱きついた俺だったよ。

 はあ、このむくむくも癒される……。

「ああ、いかんいかん。ここで寝てどうする!」

 あまりの抱き心地の良さについ意識が遠くなりかけて、そう呟いて慌てて顔を上げて手を離した俺だったよ。危ない危ない。



「じゃあ、行くとするか!」

 全員が出発準備を終え、それぞれの従魔達を引き連れて表に出たところで扉に鍵をかける。

 一応、食事をしている間にスライム達にお願いして見て回ってもらい、戸締りは確認したから安心だ。

 最後に、門にも鍵をかければ出発準備は完了だ。

 ハスフェルとギイを先頭にその後ろに俺、俺の左右にリナさん一家が分かれて並び、俺の後ろに新人コンビとマール達とレニスさん、最後はランドルさんとアルクスさんとボルヴィスさんが横並びになってついてくれている。

 この顔ぶれで移動する時は、なんとなくこの並びが定着している。

 郊外で移動する時にも基本的にこの並びで、この周囲を従魔達が取り囲んでくれている形だ。

 だけど冷静に考えればこれって、俺と新人コンビとマール達、それからレニスさんが上位冒険者に前後左右を取り囲んで守られている図だよな。

 もちろん、従魔達がいてくれるから前後左右だけでなく頭上に至るまで全方位完璧に守られている訳だけど、当然のように何も言わずにこの配置になってくれる仲間達に、こっそり感謝した俺だったよ。



 街を出て街道を少し進んだところで、街道から外れて草地に飛び出す。

 快晴の空の下、俺達は歓声を上げながらそれぞれの騎獣を一気に加速させたのだった。

「あの赤い葉の木まで競争だ!」

「あの赤い葉の木まで競争だ!」

 マックスの頭の上に座ったシャムエル様が、はるか先に見える真っ赤な葉を茂らせた大きな木を指差しながら言った掛け声の直後、同じセリフを思いっきり叫ぶ俺。

 歓声と共に全員がさらに加速する。もちろん俺も体を少し倒して加速するマックスにしがみついたよ。

 ほぼ横並びのままなだらかな草原を駆け抜けて、目標の赤い葉を茂らせた大きな木の横を左右に分かれて通り過ぎる一同。

「あはは、完全に同着だったよ」

「だよな。誰が一位かなんて全然分からなかったよな」

 新人コンビの笑う声に、俺達も揃って吹き出したのだった。

 うん、やっぱりマックスに乗って郊外を思い切り走るのって、最高に気持ち良いよな!

 少し近くなったカルーシュ山脈の山並みを見て、そう言ってから大きく深呼吸をした俺だった。



挿絵(By みてみん)

2025年3月14日、アース・スターノベル様より発売となりました「もふもふとむくむくと異世界漂流生活」第十巻の表紙です。

ついにもふむくも二桁の大台に突入です!

改めまして、どうぞよろしくお願いしますm(_ _)m


今回も引き続き、れんた様が表紙と挿絵を最高に素敵に可愛らしく描いてくださいました。

連載開始当初からの目的地であったバイゼンに、ようやくの到着です!

到着早々色々と騒ぎが起こります。

そして貴重な女性キャラも登場しますよ!

その貴重な女性キャラを描いた今回の口絵も大爆笑させていただきましたので、どうぞお楽しみに!




挿絵(By みてみん)

「もふもふとむくむくと異世界漂流生活〜おいしいごはん、かみさま、かぞく付き〜」

コミックアース・スター様にて、コミックス第四巻が2025年3月12日に発売となりました!

もちろん今回も作画はエイタツ様。


ハスフェルに続きギイも、それからフランマもコミックスに登場です!

いつもながら最高に可愛いもふもふむくむく達と、美味しい食事!

そして、地下洞窟と恐竜達とテイム!

盛り沢山なもふむくコミックス第四巻を、どうぞよろしくお願いします!

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