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出発の朝

「それじゃあ、また明日」

「おやすみなさ〜い」

「おやすみ」

 笑った皆の言葉に俺も挨拶を返して手を振る。

 賑やかな夕食を終え、軽く一杯やった程度でその夜は解散となった。

 一応、明日からカルーシュ山脈の麓へ行く予定なので、さすがに深酒をするような奴はいなかったみたいだ。

 俺は食べながら白ビールを飲んだだけで、かなり自重していたのでほぼ酔いはない。

 なのでまあ、これくらいなら風呂に入っても大丈夫だろうと判断して、いそいそと風呂の準備をしたのだった。

 カルーシュ山脈まで行くとなれば、しばらく風呂に入れないのでここは満喫しておかないとな。



「はあ、やっぱり風呂はいいねえ」

 広い湯船で手足を伸ばして肩まで湯に浸かった俺は、大きなため息を吐いて湯船の縁に頭を預けた。

「ご主人、そろそろ場所交代ですか〜?」

 しばらくして、俺が作ってやったいろんな形の氷のボールで遊んでいたアクアが、触手で俺の頭をごく軽く突っついてそう聞いてきた。

「おう、そうだな。じゃあ体を洗うから場所交代してくれるか」

「はあい、じゃあ交代だよ〜〜〜!」

 アクアの掛け声と共に、洗い場で遊んでいたスライム達がボールごと湯船に飛び込んできたので、急いで湯から上がって場所を交代する。

「おう、足元がめっちゃ冷たい!」

 さすがに氷のボールで遊んでいたせいか、足元のタイルが文字通り氷みたいに冷え切っている。

 慌てて湯船からお湯を汲んでまき散らした俺だったよ。



 体と髪も洗ってもう一回湯船にしっかりと浸かって温まった俺は、湯上がりの麦茶もしっかり飲んでから屋根裏部屋に戻った。

「ご主人おかえり〜〜〜」

 大きなベッドの上では、ニニとマックスとカッツェが猫団子状態で待ち構えていた。

 このベッドはマックスやニニ達、小さくなれない魔獣の子達が寝るのを想定して別注で作ってもらった大型ベッドなので相当な重さまで大丈夫らしい。

 もちろん、この屋根裏の床も改装の際に荷重対策はしっかりしてもらっているので安心だ。

 でも、今夜のビアンカはベッドには上がらず、ベッドの横に寝転がってマックスと背中合わせでくっついているみたいだ。

「お待たせ〜〜〜では、失礼して真ん中に飛び込ませてもらいま〜〜す!」

 笑って靴と靴下を脱いだ俺は、そのまま宣言通りに三匹の真ん中に少しだけ開けてくれてあった隙間に潜り込んだ。

「おお、全方向もふもふとむくむくしかない世界だ! お前ら本当に最高だな」

 俺が場所を決めて収まったのを見てから、中型犬サイズになったウサギトリオが俺の背中側に潜り込んできて収まり、最後にマニが俺の腕の中に潜り込んでくる。

「今夜の俺の抱き枕は、マニですか〜〜〜」

 笑って両手でマニの顔をモミモミしてやる。

「ご主人あったか〜いでしゅ〜〜」

 地響きのような勢いで喉を鳴らし始めるマニ。おお、ちょっとしたマッサージ機状態だぞ。

「ふああ〜〜〜じゃあ明日はいよいよカルーシュ山脈だぞ。きっとまた、あんな事やこんな事が起こって、主に俺が酷い目に会うんだろうなあ……せめて、あんまり痛くないといいんだけどなあ……」

 大きな欠伸の後にそう呟き、そもそも酷い目に合うのが前提でいる事に気付いて、割と本気で遠い目になった俺だったよ。

 俺は平穏無事がいいんだってば!



 翌朝、いつもの従魔達総出のモーニングコールに叩き起こされた俺は、眠い目を擦りつつなんとかベッドから起き上がった。

「ふああ〜〜〜まだちょっと眠いよ」

 だったらもうちょっと寝ようとばかりに、マニとタロンとフランマがトリオで俺を押し倒してくる。

 そのままちょうどすぐ目の前にいたフランマを抱きしめてもふもふ尻尾を堪能していると、やきもちを焼いたらしいマニとタロンが俺の左右の腕の脇の下から鼻先を突っ込んできて、邪魔をし始める。

「じゃあ全部まとめてこうだ!」

 笑いながらそう言い、三匹まとめて両手で抱きしめてやる。

「はあ、このもふもふの幸せな事……」

 フランマとマニの間に顔を埋めて深呼吸をしながらそう呟く。

 うっかり目を閉じてしまい、ここで俺の記憶はプッツリと途絶えた。

 もふもふの癒し効果、マジで凄え。



『おおい、そろそろ起きてくれよ〜〜』

『皆起きてリビングにいるぞ〜〜』

『腹減ったぞ〜〜』

 二度目のモーニングコールに叩き起こされたものの、まだ寝汚くタロンを抱きしめてゴロゴロしていると、不意に頭の中にハスフェルとギイ、それからオンハルトの爺さんの笑った念話が届き、ここでようやく俺も起きたのだった。

『あはは、ごめんごめん。もう起きてたんだけど、従魔達とくっついてゴロゴロしていたよ。じゃあ準備していくからもう少々お待ちくださ〜〜い』

 笑って答えると、三人の笑い声と共にトークルームが閉じるのが分かった。

「よし、じゃあ起きるぞ!」

 そう宣言して勢いよく腹筋だけで起き上がって立ち上がり、まずは顔を洗う為に階下にある洗面所へ向かった。

 いつものように冷たい水で顔を洗ってからサクラに綺麗にしてもらい、跳ね飛んでくるスライム達を順番に水槽に放り込んでやる。

 それからマックス達水遊び大好きチームと場所を変わってやり、一旦屋根裏に戻ってからしっかりと身支度を整えた。今日は遠出するので防具の確認もしっかりとしておく。



「おおい、準備完了だからリビングへ行くぞ〜〜」

 剣帯に剣を装着してから、鞄を手に階段を降りながら水場に声をかける。

「はあい、今行きま〜〜す!」

 ご機嫌なスライム達とマックス達の返事がして、しばらくして出てきた。

 従魔達を全員引き連れてリビングへ向かいつつ、今回は何が起こるのかと考えてまたしても遠い目になる俺だったよ。

 いやマジで、俺は平穏無事がいいんだってば!

 またしても脳内でそう叫んで拳を握りしめたのだった。

 あの、シャムエル様……その、さあ行こうとばかりに期待に満ち満ちたキラッキラの目で俺を見るの、やめてくださいます?



挿絵(By みてみん)

2025年3月14日、アース・スターノベル様より発売となりました「もふもふとむくむくと異世界漂流生活」第十巻の表紙です。

ついにもふむくも二桁の大台に突入です!

改めまして、どうぞよろしくお願いしますm(_ _)m


今回も引き続き、れんた様が表紙と挿絵を最高に素敵に可愛らしく描いてくださいました。

連載開始当初からの目的地であったバイゼンに、ようやくの到着です!

到着早々色々と騒ぎが起こります。

そして貴重な女性キャラも登場しますよ!

その貴重な女性キャラを描いた今回の口絵も大爆笑させていただきましたので、どうぞお楽しみに!





挿絵(By みてみん)

「もふもふとむくむくと異世界漂流生活〜おいしいごはん、かみさま、かぞく付き〜」

コミックアース・スター様にて、コミックス第四巻が2025年3月12日に発売となりました!

もちろん今回も作画はエイタツ様。


ハスフェルに続きギイも、それからフランマもコミックスに登場です!

いつもながら最高に可愛いもふもふむくむく達と、美味しい食事!

そして、地下洞窟と恐竜達とテイム!

盛り沢山なもふむくコミックス第四巻を、どうぞよろしくお願いします!

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