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新たなる神様仲間と謎の石?

「はあ、腕も痺れてきたぞ」

 巨大なザトウクジラをリリースして、スライム達が外してくれた釣竿を一旦足元に置いた俺は、大きなため息を吐いてそう呟きその場に座り込んだ。

 まあ、その瞬間アクアがすっ飛んできて瞬時に椅子になってくれたので、結果として俺はスライム椅子に座る形になったんだけどね。

「ありがとうな。ちょっとマジで疲れてヘトヘトだよ。握力が完全に無くなってるぞ」

 もう全身をアクアに預けて脱力状態な俺は、プルプルと震える両手を見てもう笑うしかなかった。

「ハスフェルとギイは大丈夫か?」

 苦笑いしながらそう尋ねると、釣り竿を拾った二人は揃って顔を見合わせてから、俺を見て右手を握ってみせる。

「「俺達は鍛えているからな」」

 二人揃ってドヤ顔でそう言われてしまい、悔しくて声を上げた俺だったよ。

 よし、もうちょい俺も頑張って鍛えよう!



 って事で、俺は脱落したんだけどその後も釣り大会は続き、湖側にはかなりの釣果があったみたいだ。

 逆に陸側はギイが大きめのトラウトを一匹釣っただけで全然釣果が無く、後半はもうぐだぐだになっていたのだった。

 昼食は俺がこんな状態だったので、俺の手持ちの作り置きプラス皆が出してくれた買い置きでサクッと済ませた。

 俺は昼食の前にハスフェルに癒しの術をかけてもらって、ようやく握力が復活したのだった。

 とはいえ、怪我とは違ってこういった激しい疲労には、万能薬や癒しの術もあまり効果が無いらしい。まあ、全く効かない訳では無いんだけど、怪我の時みたいに一瞬で治るとかではなく、なんとなく楽になったかな? 程度だ。

 この辺りの基本設定がどうなっているのかも、ちょっと気になるところだよな。

 一応ハスフェルに聞いてみると、怪我に関しては万能薬が一番効果があり、癒しの術はその次くらいの効果がある。だけど、どちらも怪我そのものは治っても出血があったりすると体力の回復までは出来ない。

 まあ、その辺りは実体験を以って知っているので納得したよ。

 疲労に関しては、どちらもある程度までは回復するけど完全復活ってわけにはいかないらしい。

 これはハスフェルいわく、万能薬を毎回飲んでずっと仕事を続けるなどの無茶をするのを防ぐ意味があるらしい。

 まあ、エナジードリンクの強化版って考えれば確かにそうだろう。

 この世界に、社員に無茶をさせるブラック企業が無い事を密かに祈った俺だったよ。



 午後からは、また俺も参加してのんびりと釣りを楽しんだ。

 普通サイズのトラウトが釣れて、心の底から安堵した俺だったよ。

 だって、あのザトウクジラを上げていた時に、釣り竿を折りまくるので有名な、泥沼の破壊魔シャチがいるって言っていたから、もしかして次にそれがかかるんじゃあないかって思ってマジでビビってたんだよ。

 うん、俺は普通の釣りがいい!

 釣り上げた普通サイズのトラウトをアクアが飲み込むのを見て、こっそり拳を握って心の中で絶叫した俺だったよ。



 またルアーを投げ入れてすぐ、突然俺の目の前の泥沼の水面が不意に波立つみたいに不自然に動き始めた。

「こ、今度は何だ?」

 慌てて竿を引き上げて走って下がる。

 次の瞬間、泥沼の中からあのザトウクジラが顔を出した。

 そして、そのままずずっとこっちへ向かって進んできて、そのまま陸地に体を乗り上げて止まったのだ。

 もう全員が呆気に取られてこっちを見ている。

 もちろん俺も、突然目の前に現れた泥まみれのザトウクジラを見て、もう声も出ない。

「クジラさん、綺麗にするね〜〜〜!」

 何故か嬉々としたアクアの声の直後、スライム達が一気に集まってきてさっきのようにザトウクジラを包み込む。一瞬で泥が無くなりザトウクジラの全身が見えた。

 嬉しそうに軽く身震いしたザトウクジラは、少し鼻先を横に動かしてから俺を見た。

 うん、確実にあのちっこい目で俺を見たのが何故か分かったんだよ。

『そこの人間、戻してくれて感謝するぞ』

 その時、頭の中に初めて聞く声が響き、俺は文字通り飛び上がった。

「だ、誰?」

 慌てて周りを見回すが、少なくとも周囲には誰もいない。



 って事は……?



 無言で目の前の、スライムに包まれたザトウクジラを見る。

『うむ、私だ。シャムエルから聞いたが、其方がこの世界を救ってくれた救世主だそうだな。心より感謝申し上げる』

 もしかして、このザトウクジラって新たな神様仲間だったの?

 しかも、ハスフェルやギイも知らないお方? 何それ超レアじゃん。

 そこまで考えて、本気で気が遠くなった俺だったよ。



『我からの心ばかりの感謝の印だ。よければ使ってくれ。もちろん、売ってもらっても構わぬぞ』

 ザトウクジラがそう言った直後、ゆっくりと口を開いた。

「これ、もらっていいの?」

 アクアの声に、目を細めるザトウクジラ。

「ありがとうね! じゃあ貰いま〜〜す!」

 そして、ザトウクジラから何かを受け取るアクア。

『では邪魔したな。どうぞ我が住処での釣りを楽しんでくれたまえ』

 そう言うと、身震いしたザトウクジラはそのままずずっと下がっていき、泥沼の中へと戻って行ったのだった。

 当然、スライム達もそれに合わせて動き、ザトウクジラが泥沼に消えていくのに合わせてまたばらけて周囲に散らばった。



「……ええと、さっきのクジラさんから、何をもらったのか聞いてもいい?」

 足元に来たアクアに、何とか気を取り直してそう尋ねる。

「これだよ。はいどうぞ!」

 何やら謎の大きな石を見せられて、無言になる。

「何だこれ?」

 しかし、手に取ってみると何やら甘い不思議な香りがする。

「お、お前それ……」

「ま、まさか……」

 絶句するハスフェルとギイを振り返った俺は、手にした謎の石、大きめのスイカくらいはあるそれを差し出して見せた。

「これが何か分かるか? なんだか甘い香りがするんだけど、食べ物じゃあないよな?」

 俺の言葉に、ハスフェルとギイが揃って大きなため息を吐いた。

「これは龍涎香と呼ばれる石だ」

「香料や薬の材料として珍重される、超貴重なものだよ」

「しかもこの大きさ……」

「俺も初めて見るな」

「じゃあ、ギルドへ持っていけば売れる?」

 無言で頷く二人を見て、笑った俺は石をアクアに返した。

「じゃあ、街へ戻ったら売る事にしよう。それまで持っていてくれるか」

「了解で〜す。これは龍涎香だね」

 石を飲み込むアクアを見て、何故かもう一回大きなため息を吐くハスフェルとギイだった。



挿絵(By みてみん)

2025年3月14日、アース・スターノベル様より発売となりました「もふもふとむくむくと異世界漂流生活」第十巻の表紙です。

ついにもふむくも二桁の大台に突入です!

改めまして、どうぞよろしくお願いしますm(_ _)m


今回も引き続き、れんた様が表紙と挿絵を最高に素敵に可愛らしく描いてくださいました。

連載開始当初からの目的地であったバイゼンに、ようやくの到着です!

到着早々色々と騒ぎが起こります。

そして貴重な女性キャラも登場しますよ!

その貴重な女性キャラを描いた今回の口絵も大爆笑させていただきましたので、どうぞお楽しみに!





挿絵(By みてみん)

「もふもふとむくむくと異世界漂流生活〜おいしいごはん、かみさま、かぞく付き〜」

コミックアース・スター様にて、コミックス第四巻が2025年3月12日に発売となりました!

もちろん今回も作画はエイタツ様。


ハスフェルに続きギイも、それからフランマもコミックスに登場です!

いつもながら最高に可愛いもふもふむくむく達と、美味しい食事!

そして、地下洞窟と恐竜達とテイム!

盛り沢山なもふむくコミックス第四巻を、どうぞよろしくお願いします!

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