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今日の釣果は……?

「じゃあ釣り大会……何回目だっけ? まあいいや。ここに釣り大会リベンジ戦を開催いたします! 今回は湖側の諸君、せいぜい頑張ってくれたまえ」

 連覇しているチームの俺が釣竿を手にちょっと上から目線でそう言うと、あちこちから笑い声と共にブーイングの声も聞こえてきて皆で大爆笑になったよ。



 俺はまたアクア達を引き連れて、まずは今回の担当である陸地側から泥沼を見る。

 ちなみに今日もいいお天気だけど、目の前の泥沼はまだまだ水分をガッツリと含んでいてなかなかの良いコンディションだ。

「ううん、どの辺りから釣るのがいいかねえ」

 早速スライムカヌーで湖側へ出ていったリナさん達や新人さん達の笑う声が聞こえて釣竿を振る様子も見えて、俺は腕を組んで考えながらそう呟く。

「ご主人、釣るならこの辺りがいいと思うなあ」

 その時、安全地帯の目印である並んだ石の向こうにいたアルファが、そう言いながらスルスルと泥沼の上を動いて、とある場所でぴたりと止まった。

 ちょっと葦のような植物の生えたその場所は、泥沼の縁ギリギリに近い場所だ。

「ええ、そんな端っこで大丈夫なのか?」

 驚いてそう言ったが、プルプルと震えるだけでアルファはそれ以上説明してくれない。

 だけど、何となくこの意見は聞いておいた方がいい気がして頷いた俺は、言われた場所に立って手にしていた釣竿を思い切り振ってルアーを葦の茂みの向こう側へ投げ入れた。

 何度も引いてはまた投げ入れるのを繰り返す。

 泥沼の上にいたアルファ達は、同じく泥沼の上の少し離れたところからこっちを見ているだけで動かない。



 そのまま、陸側も湖側も誰の当たりも来ないままに時間だけが過ぎていく。



「お、来た!」

 あまりの当たりの無さにそろそろ場所を変えようかと考え始めたその時、もの凄い勢いで釣竿が一気に引かれて慌てて持ち直した。

 一瞬で跳ね飛んできてくれたアクアとサクラが釣竿をホールドしてくれなかったら、間違いなく竿ごと持っていかれていたであろうほどの強い引き具合だ。

「ちょっと待って! 何だよこれ!」

 冗談抜きで必死で踏ん張っても体ごと持っていかれそうな勢いだ。

「ハスフェル、助けてくれ! マジでこれは無理だ!」

 仰向けになるくらいに体を倒して竿を握りしめながら、必死で踏ん張って助けを求める。

「おいおい、お前さん一体何を釣ったんだよ」

 苦笑いしたハスフェルが自分の竿を上げて駆けつけてきてくれたので、釣竿を渡そうとしたがそれは断られた。

 一応、俺が引っかけたんだから最後まで自分で上げろと、そう言いたいらしい。

 で、どうなったかと言ったら、俺の背後に立ったハスフェルが、まるで子供の面倒を見るかのように両側から手を回して俺の釣り竿を一緒に持ってくれた。

 決して小柄ってわけではない俺の体は、完全にハスフェルに背後から抱き込まれた子供状態だ。

 だけどこれで一気にこっちが有利になるかと思われたが、グイグイとしなる釣り竿はハスフェルも驚くほどの引きの強さで、結局、見かねたギイまでもが自分の釣りを中断して駆けつけてきてくれる始末だ。

 ちなみにギイが来てくれた時点で、ハスフェルとギイの二人が俺の左右にくっついて立ち、それぞれ両手で横から一緒に釣り竿を掴んでくれている状態だ。

 だけど、これでようやく力が均衡したらしく釣り竿を持っていかれなくなったくらいだから、冗談抜きでとんでもない引きの強さだよ。



「ちょっとケンさん。一体何を釣ったんですか?」

 呆れたようなアーケル君の声がけにも、誰一人返事をする余裕は全くない。

 息を合わせて何とか引いては少しだけ緩ませるのをひたすら繰り返した。

 ちょっとでも油断をして息が合わないと体ごと持っていかれそうな勢いで引かれるので、タイミングを取る為に俺が掛け声をして、意識して息を合わせて何とか踏ん張っている状況だ。

「おいおい、これはまさかとは思うが泥沼の底にいると言われる伝説のクジラでも釣ったか?」

「いや、この引きの強さは、釣り竿を折りまくるので有名な、泥沼の破壊魔シャチじゃあないか?」

 踏ん張りつつ呆れたようにそう言う二人の会話を聞いて、本気で気が遠くなった。

「それ、どっちも絶対に竿で釣る対象の魚じゃあないってば!」

 いくら何でもこの設定はおかしすぎる!

 割と本気でそう叫んで、シャムエル様に文句を言いたくなっていた俺だったよ。



「ご主人、もうちょっとだから頑張ってね〜〜!」

 釣り始めた時に側にいたのはアクアとサクラ、それからアルファとゼータとベータだけだったんだけど、今は俺の連れているスライム達が全員集合して泥沼の上に待機している。

 アルファの声に、俺達は無言で顔を見合わせる。

「一度、息を合わせて思い切り引いて下がってみるか。普通の釣りと違い、泥沼から少しでも魚が姿を見せれば後はスライム達が確保してくれるからな」

 ハスフェルの言葉に、俺とギイも真顔で頷く。

「よし、いくぞ。せ〜の〜でっ!」

 必死で踏ん張りながら息を合わせて思いっきり釣り竿を引いて振り上げる。ついでにタイミングを合わせて三人揃って踏ん張りながら足を交互に動かして何とか後ろに下がる。

 バシャン!

 豪快な音と共に、何やらとんでもないのが泥沼から顔を出した。

「確保しま〜す!」

 スライム達全員の張り切った声の直後、その巨体が泥沼から一瞬で引き摺り出されてスライム達総出で確保された。

 それは、どこからどう見てもホエールウォッチングでお馴染みのザトウクジラだった。

 多分体長は10メートルちょいだから、ザトウクジラとしてはまあ小さい方だと思う。



「いや、10メートルクラスのザトウクジラを陸からルアーの付いた竿で釣るって、絶対に設定がおかしいって!」

 ザトウクジラにしては小さめだったな、と、納得しかけて我に返り、マジで叫んだ俺は、悪くないと思う。



挿絵(By みてみん)

2025年3月14日、アース・スターノベル様より発売となりました「もふもふとむくむくと異世界漂流生活」第十巻の表紙です。

ついにもふむくも二桁の大台に突入です!

改めまして、どうぞよろしくお願いしますm(_ _)m


今回も引き続き、れんた様が表紙と挿絵を最高に素敵に可愛らしく描いてくださいました。

連載開始当初からの目的地であったバイゼンに、ようやくの到着です!

到着早々色々と騒ぎが起こります。

そして貴重な女性キャラも登場しますよ!

その貴重な女性キャラを描いた今回の口絵も大爆笑させていただきましたので、どうぞお楽しみに!




挿絵(By みてみん)

「もふもふとむくむくと異世界漂流生活〜おいしいごはん、かみさま、かぞく付き〜」

コミックアース・スター様にて、コミックス第四巻が2025年3月12日に発売となりました!

もちろん今回も作画はエイタツ様。


ハスフェルに続きギイも、それからフランマもコミックスに登場です!

いつもながら最高に可愛いもふもふむくむく達と、美味しい食事!

そして、地下洞窟と恐竜達とテイム!

盛り沢山なもふむくコミックス第四巻を、どうぞよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
伝説だろうと幻だろうと、クジラとシャチが泥沼に生息しているのが常識って……相変わらずシャムエル様の世界創造設定、カオスすぎる!! たぶんアレやな、『卵胎生で子供を産むサメ・エイ』と『哺乳類のイルカ・…
くじらもシャチも魚じゃないし...
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