郊外への出発と新たなる軍団名
「じゃあ、かなり時間を食ったが行くとするか」
借りた会議室で、手持ちの作り置きで少し早めの昼食を食べた俺達はエルさんやスタッフさん達に見送られて冒険者ギルドを後にした。
そのまま全員揃って大注目されつつ街を出て、街道沿いに少し進んだところで街道を外れて一気に駆け出した。
「うわあ、気持ちいい!」
久しぶりの晴れ間から差し込む太陽の光と、緑に輝く新緑の森の木々。
走るマックスの上で、思いっきり深呼吸をした俺だったよ。
途中、まずは猫族軍団の面々が、仲間達の猫科の子達も引き連れて離れて狩りに出ていった。
まあ、ずっと続いた長雨のせいで従魔達のストレスもマックスだったみたいだから、全員巨大化してもの凄い勢いで走って行ったんだよな。
戻ってきたら、マックス達も交代して狩りに行かせてやらないと。
「すまないけど、もうちょっとだけ我慢してくれよな」
嬉々として走り去っていった猫族軍団が見えなくなったところで、マックスの首元を軽く叩いてそう言ってやる。
「大丈夫ですよ。もちろん狩りにも行きたいですが、ご主人を背中に乗せて走るのが私にとって最高の時間なんですから!」
顔を上げてこっちを見たマックスが、尻尾扇風機状態でそう言ってくれた。
「いつもありがとうな。マックスに乗って走るのは、俺にとっても最高の時間だよ」
笑った俺の言葉に、マックスはワンと吠えていきなり大ジャンプをした。
「どわあ〜〜〜あぶねえって!」
ちょっと気を抜いていた俺は、咄嗟に振り落とされそうになって必死に手綱を握った。
でも、鞍から尻が完全に浮いて体が後ろに倒れてマジで焦る。
「ご主人危ないよ〜〜〜」
気が抜けそうなくらいののんびりとしたアクアの声の直後、一瞬で俺の下半身はアクアとサクラに包まれて確保されていた。
「あはは、ありがとうな。今のはマジで怖かったよ」
誤魔化すように笑って体勢を立て直した俺は、そう言って足に張り付いているアクアとサクラを撫でてやった。
「マックス! いきなりの大ジャンプはマジで危ないから、飛ぶ時は教えてくれ」
苦笑いしながらの俺の抗議に、もう一度ワンと吠えて、何故かさっきよりも更なる大ジャンプをしたマックスだった。
時折駆けっこも楽しみつつ、かなり走って前回の釣りの時に最初に来た場所に到着した。
遠目に見える湖の手前側にある水をたっぷり含んだ泥の池は、まだまだ干上がりそうにない。
「釣りをするにはちょっと遅い時間になったが、せっかくだから少しでもやってみるか」
笑ったギイの提案に全員から賛同の声が上がり、まずは野営地を確保してテントを立てる事にした。
だけど当然、長雨の後なので足元の草地はぬかるんでいてまだまだ大変な状態だ。
「じゃあ、まずは地面を綺麗にしま〜〜す!」
張り切ったアクアの声の直後、全員の連れていたスライム達が地面に転がっていき、前回と同じようにあちこちに跳ね飛んでいって、ビヨンと地面に広がり水分を吸収していった。
「お待たせしました〜〜〜!」
「もう大丈夫で〜〜す!」
「前回と同じで、背後と左右は木のある手前側までが安全地帯で〜す!」
「池側は石が並んでいる所までが安全地帯で〜す!」
「その向こうは底なし沼だから気をつけてくださ〜〜い!」
「万一落っこちたら、スライム連合がお助けしま〜〜す!」
「スライム連合がお助けしま〜〜す!」
前回と同じようなセリフだったけど、最後の、まさかのスライム連合発言に揃って吹き出した俺達だったよ。
まあ、猫族軍団、犬族軍団、お空部隊にふわもこ軍団、そしてもふ塊に続く新たなる呼称、スライム連合。
確かに数で言えばスライムが一番多い。しかも、一人一人が連れているスライムの数自体がすでにそれなりの数なわけだから、全員のスライム達が集まれば、ある意味連合って呼称が正解なのかもしれない。
「そっか〜〜〜スライム連合か。もしかして自分達で考えたのか?」
側にいたアルファを見ながらそう尋ねると、アルファだけでなく周りにいたスライム達が全員揃ってビヨンと伸び上がった。
俺には分かるぞ。あれはドヤ顔だ。
「ええとね。アルファ達にも猫族軍団やお空部隊みたいな、団体の名前が欲しいなってお話していたの」
「そうしたらベリーが考えてくれたんだよ」
「それぞれのご主人のところにいる子達が一つの団体で」
「それが全員分集まったら連合だねって!」
「「「「「「「「だからスライム連合なんで〜〜す!」」」」」」」」
アルファの言葉に被せるようにして、先を争うようにして説明してくれるスライム達。
最後のセリフは、もう全員揃っての大合唱だ。
その説明を聞いて、我慢出来なくてもう一回吹き出した俺だったよ。
まさかの命名者はベリーだったか。
でも、さすがは賢者の精霊。もうこれ以上ないくらいのぴったりな名前だよな。
よし、これからは全員のスライム達がいる時にはスライム連合と呼ぶ事にしよう。
すっかり綺麗になった地面に降り立った俺は、取り出したテントの柱を支えつつ、もう遠慮なく大笑いしていたのだった。
2025年3月14日、アース・スターノベル様より発売となりました「もふもふとむくむくと異世界漂流生活」第十巻の表紙です。
ついにもふむくも二桁の大台に突入です!
改めまして、どうぞよろしくお願いしますm(_ _)m
今回も引き続き、れんた様が表紙と挿絵を最高に素敵に可愛らしく描いてくださいました。
連載開始当初からの目的地であったバイゼンに、ようやくの到着です!
到着早々色々と騒ぎが起こります。
そして貴重な女性キャラも登場しますよ!
その貴重な女性キャラを描いた今回の口絵も大爆笑させていただきましたので、どうぞお楽しみに!
「もふもふとむくむくと異世界漂流生活〜おいしいごはん、かみさま、かぞく付き〜」
コミックアース・スター様にて、コミックス第四巻が2025年3月12日に発売となりました!
もちろん今回も作画はエイタツ様。
ハスフェルに続きギイも、それからフランマもコミックスに登場です!
いつもながら最高に可愛いもふもふむくむく達と、美味しい食事!
そして、地下洞窟と恐竜達とテイム!
盛り沢山なもふむくコミックス第四巻を、どうぞよろしくお願いします!