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ムービングログ試乗会

「ううん、相当な価格だって聞いているムービングログがこんなにあったら、全然有り難みがないじゃあないか! どうしてくれるんだよ!」

 ずらりと並んだムービングログを見て、エルさんが呆れたような声でそう言い俺達は揃って大爆笑になる。

「でもまあ、皆で一緒に体験出来るのはいいね。それで、どうやったら動くんだい?」

 早くも興味津々なエルさんの言葉に頷いた俺は、とにかくムービングログから降りて、側にいたエルさんをムービングログに乗せてハンドルを握らせてやった。

「あれ、ちょっとハンドルが高いですね」

 しかし、ここで問題発生。

 俺とエルさんだと、俺の方がかなり背が高い。そのせいで、俺のムービングログではハンドルの位置がエルさんの身長の割にはかなり高めになってしまい、ちょっとバランスが悪そうだし、このままでは体重移動も難しそうだ。

「そんなの、高さを変えればいいだけだろうが」

 横から聞こえたハスフェルの言葉に、思わずそっちを振り返る俺。

「え? そんな事出来るんだ」

 驚いてそう言うと、ハスフェルだけでなくギイとオンハルトの爺さんにまで呆れたような顔をされた。

「お前、さては取扱説明書を読まずにとりあえず分からないままに物を動かすタイプだな」

 呆れたようなギイの言葉に、まさにその通りな俺は誤魔化すように笑って小さく頷いた。

「ちなみに、これの取扱説明書も読んでいないだろう?」

 またしてもその通りだったので、笑って誤魔化す。

 だって、かなり分厚い取扱説明書だったからさ。もらった瞬間に完全に読む気が失せたのは内緒だ。

「読んでいれば絶対に知っている知識だよ。ほら、ここのところを動かすとハンドルがある程度上下するんだよ。ハンドルの高さは、乗る人に合わせないと危ないからな」

 これ見よがしのため息を吐いたハスフェルが、そう言って苦笑いしながら実際に操作してくれる。

 確かに、T字型になったハンドルの真ん中にある操作版の裏側部分を示されて屈んでそこを覗き込むと、ハンドルの縦棒の横に小さな出っ張りのようなスイッチがあった。そんな物の存在を今初めて知りました。

 ガスコンロのスイッチみたいに、つまんで動かせるようにスイッチの真ん中部分が平らに出っ張っている。

 ハスフェルがそれを掴んで右に回すと、ハンドル棒の、胴体側の根本部分がゆっくりと動いて下がり始めた。

 まだ乗ったままだったエルさんの身長に合わせた高さになったところで、スイッチから手を離すと動きが止まった。

「ちなみにこれを右に回すとハンドルが下がり、左に回すとハンドルが上がる仕様だからな。ケンが使う時に元の高さに戻すには、左に回して高さを調節すればいい。ここ、目安の数字がついているから、自分の良い高さの数字を覚えておくといいぞ」

 笑ったハスフェルが示したハンドルの棒の根元部分を見ると、確かにごく薄くだけど目盛りがついていて、下から数字が刻まれている。

「へえ、初めて知ったよ。じゃあ後で確認しておくから調整よろしく!」

 笑った俺の言葉に、ハスフェル達だけでなくリナさん一家からも揃って呆れたような顔をされてしまい、もう一回笑って誤魔化した俺だったよ。

 うん、ムービングログの取扱説明書は置いてあるから、後でちゃんと読んでおこう。



 スタッフさん達にもそれぞれ高さを調節してから乗ってもらい、無言の譲り合いの結果ハスフェルとギイが乗り方の説明を実際に乗って見せながらしてくれた。

 それはそれは真剣な様子で説明を聞いていたエルさんとスタッフさん達は、一通りの説明を聞いた後、早速実際に動かし始めた。

「うわあ、本当に動く〜〜〜!」

 かなりの前傾姿勢になったエルさんが、それはそれは嬉しそうな声で叫んでいるけど、あれは前に体重をかけすぎだと思う。

 止めようとしたんだけど、その前にエルさんは豪快にすっ転んだ。

「だ、大丈夫ですか?」

 慌てて駆け寄ろうとしたが、俺が行く前に素早く起き上がったエルさんは満面の笑みで転がっていたムービングログを起こしてそのままもう一回飛び乗った。

「成る程。分かった。こうすればいいんだね!」

 嬉々としてそう叫ぶと、今度はさっきよりも起き上がった前傾姿勢でゆっくりと進み始めた。うん、あれはなかなか上手いと思うぞ。

 周りでも、スタッフさん達が試乗体験を始めている。

 エルさんみたいに前傾姿勢になりすぎて転んだ人や、逆に怖がって体重移動が出来ずに動かない人など割とカオスな状況になっている。

 でも、しばらくするとほぼ全員が何とか動かせる程度にはなった。

 最後は全員揃って運動場を一周して、拍手喝采になったのだった。



「ギルドマスター! 俺達にもやらせてくださいよ〜〜〜!」

 突然聞こえた大声に驚いて振り返ると、見覚えのある冒険者の皆が運動場横に集まって笑顔で手を振っていたのだ。

「あはは、もちろん良いよ。ほら来て来て」

 笑った俺がそう言って手招きしてやると、皆、歓声を上げてこっちへ走ってきた。

 って事で、試乗会第二弾は冒険者の皆が交代で体験することになった。

 しかしここはさすがは冒険者達。運動神経も反射神経も凄くて、誰も転ばずにほぼ全員がすぐに乗りこなしていた。

 そして大騒ぎの試乗会が終わる頃には、真剣に購入を検討する冒険者達が何人もいたのだった。

 まあ、俺達には頼もしい騎獣がいるから必要ないけど、徒歩の冒険者達の場合、状況によっては郊外でもあれがあれば安全に移動出来る事は多々ありそうだ。

 思わぬところで高額商品の営業をしてしまって、ちょっと会社員時代を思い出して笑いそうになったのは内緒だ。

 ヴァイトンさん、ガンスさん、エーベルバッハさん達ギルドマスターと職人の皆様! もう少ししたらハンプールからの大量注文が届くと思いますので、頑張って生産してくださいね〜〜!



挿絵(By みてみん)

2025年3月14日、アース・スターノベル様より発売となりました「もふもふとむくむくと異世界漂流生活」第十巻の表紙です。

ついにもふむくも二桁の大台に突入です!

改めまして、どうぞよろしくお願いしますm(_ _)m


今回も引き続き、れんた様が表紙と挿絵を最高に素敵に可愛らしく描いてくださいました。

連載開始当初からの目的地であったバイゼンに、ようやくの到着です!

到着早々色々と騒ぎが起こります。

そして貴重な女性キャラも登場しますよ!

その貴重な女性キャラを描いた今回の口絵も大爆笑させていただきましたので、どうぞお楽しみに!




挿絵(By みてみん)

「もふもふとむくむくと異世界漂流生活〜おいしいごはん、かみさま、かぞく付き〜」

コミックアース・スター様にて、コミックス第四巻が2025年3月12日に発売となりました!

もちろん今回も作画はエイタツ様。


ハスフェルに続きギイも、それからフランマもコミックスに登場です!

いつもながら最高に可愛いもふもふむくむく達と、美味しい食事!

そして、地下洞窟と恐竜達とテイム!

盛り沢山なもふむくコミックス第四巻を、どうぞよろしくお願いします!

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