大人気の寿司パーティーとテイマーの話
「へえ、これは初めて食べたけど、案外美味しいもんだねえ」
「そうですね。生の魚と聞いて驚きましたが、確かに美味しいですね」
マーサさんとクーヘンが、山盛りに取った握り寿司を食べながら感心したようにそう言って頷き合っている。
クーヘンのお兄さん一家はサラダ巻きと海鮮巻きが気に入ったみたいで、こちらも山盛りに取ったのを笑顔で食べてくれている。
逆にバッカスさん達ドワーフの皆さんは、生の魚と聞いて最初はドン引きして揚げ物とかばかり食べていたんだよな。もしかしてドワーフって魚が苦手だったりする?
でも、ランドルさんや皆が笑顔でお寿司各種や鰹のたたきなんかを山盛りに取って爆食しているのを見て、せっかくお招きいただいたんだし少しくらいは、と小さく呟いて、鉄火巻きをバッカスさんが一切れだけ食べたんだよ。
無言で鉄火巻きを咀嚼するバッカスさんを、ドワーフの皆さんがこちらも無言で大注目していた。
生の魚ってだけで、そこまでビビるか?
そんな事を考えつつ何となく俺やハスフェル達も無言でその様子を見ていると、ごくりと音を立てて鉄火巻きを飲み込んだバッカスさんが、もうこれ以上ないくらいの満面の笑みで彼らに向かってサムズアップをした。どうやらお口に合ったみたいだ。
「こりゃあ驚いた。美味しい。しかも今までに味わった事のない美味しさだ。いいから一度食ってみろ。俺は他もいただいてみる!」
驚きに言葉もない彼らを見てそう宣言したバッカスさんは、嬉々として握り寿司各種をはじめ軍艦巻きや巻き寿司なんかも一通りお皿に取っていった。
「ま、まあお前がそう言うのなら……」
ブライさんがそう呟いて鉄火巻きをお皿に取り、ちょっとだけ醤油をつけてから恐る恐るって感じに口に入れた。
もぐもぐもぐ……。
しばしの無言の咀嚼の後、目を見開いて大きく頷いたブライさんも、嬉々としてお寿司を取り始め、それを見た全員がようやくお寿司に手を伸ばし始めてくれたのだった。よし!
「気に入ってもらえたみたいでよかったですよ。まだまだありますから、遠慮なく取ってくださいね」
笑ってそう話しかけると、ドワーフの皆さんが揃って笑顔でサムズアップを返してくれたよ。
何しろ、カジキマグロをはじめ各種生魚の在庫は、まだまだ数十キロから百キロ単位で在庫があるんだからさ。
この人数でも、どれだけ食べても減るのは数キロ程度。どうぞ好きなだけ食べてください!
まあ時間停止の無限収納だから、別に置いていても問題はないんだけどさ。
それに、作ったものを美味しいって言って喜んで食べてくれる人がいてくれるのは、俺的にも本当に嬉しい。
笑顔で、追加で出された鉄火巻きを取り合いっこしているバッカスさんとランドルさんを見て、嬉しくなった俺も争奪戦に参戦したのだった。
「いやあ、食いも食ったりって感じだな」
すっかり空っぽになったお寿司各種が並んでいた大量の大皿を見て、もう笑いしか出ない。
結局、用意していたお寿司各種とお刺身と鰹のたたきは、全部綺麗さっぱり完食されてもう海苔のかけらも残っていないよ。
それからいつもの定番メニューの揚げ物や焼き物系も、出した分は綺麗さっぱりこちらも完食。
相変わらず、こっちの世界の人達は食べる量がおかしい。
汚れたお皿をスライム達に綺麗にしてもらっていると、クーヘンとバッカスさんのお店の人達が感心したようにその様子を眺めていたよ。
聞けば、お店の掃除はどちらもスライム達がやっているみたいでスライムに特に忌避感も無いらしいんだけど、それ以上の事が出来るとは知らなかったらしい。
俺が料理の手伝いなんかをスライム達に手伝ってもらっているんだって話をすると、本気で驚いていたよ。
そのあとはのんびりと飲みながら、俺達が留守の間にクーヘンが定期的にスライムトランポリンの興行をやって大好評だった話や、ハンプールの街でも新人冒険者の中にテイマーが少しずつだけど増えてきているって話を聞いたりして過ごした。
特に、スライムの有効性についてはギルドマスターにクーヘンが力説した効果もあるのだろうけど、特に新人冒険者達の中にテイマー希望者が増えているんだって。
まあ、強い従魔を複数従えて魔獣使いになれる人はある程度限られはするだろうけど、スライムをテイムして街で働くテイマーは今後はもっと増えていくだろう。
バイゼンの街ではすでに、雪かき要員にスライムを連れたテイマー達を積極的に雇って有効活用したりしていたからね。
ちなみにシャムエル様によると、魔獣使いになれる人の数は、この世界の中である程度の上限を設けているらしいけど、逆にテイマーになれる人の上限は設けていないらしい。
なので、その気になればこの世界では冒険者でなくても、誰でもテイマーにはなれる可能性があるんだって。
まあ、俺の元いた世界で言うと、動物好きだったりペットを飼っていた人の殆どがテイマーになれる可能性がある人だって言っていたから、確かに誰でもテイマーになれると言われて納得したよ。
とはいえ絶対に動物が嫌いだ、怖いから嫌だ、って人も一定数はいたから、全員ってわけではないだろうけどさ。
一仕事終えて戻ってきたスライム達を無意識におにぎりにしつつ、街の人がスライムやホーンラビットなんかを当たり前のようにペットとして連れている世界を考えて、ちょっと嬉しくなった俺だったよ。
いよいよ本日、2025年3月14日にアース・スターノベル様より発売となります「もふもふとむくむくと異世界漂流生活」第十巻の表紙です。
ついにもふむくも二桁の大台に突入です!
改めまして、どうぞよろしくお願いしますm(_ _)m
今回も引き続き、れんた様が表紙と挿絵を最高に素敵に可愛らしく描いてくださいました。
連載開始当初からの目的地であったバイゼンに、ようやくの到着です!
到着早々色々と騒ぎが起こります。
そして貴重な女性キャラも登場しますよ!
その貴重な女性キャラを描いた今回の口絵も大爆笑させていただきましたので、どうぞお楽しみに!
「もふもふとむくむくと異世界漂流生活〜おいしいごはん、かみさま、かぞく付き〜」
コミックアース・スター様にて、コミックス第四巻が2025年3月12日に発売となりました!
もちろん今回も作画はエイタツ様。
ハスフェルに続きギイも、それからフランマもコミックスに登場です!
いつもながら最高に可愛いもふもふむくむく達と、美味しい食事!
そして、地下洞窟と恐竜達とテイム!
盛り沢山なもふむくコミックス第四巻を、どうぞよろしくお願いします!