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ジェムの行方とその扱いについて

「到着〜〜〜」

 時に街の人達にこっそり手を振られつつ、特に何事もなく無事に冒険者ギルドへ到着した。

 昼前の時間な事もあり、いつもは大勢の冒険者達がいるギルドも人が少なくて閑散としている。

「あ、エルさん。アーケル君達はもう戻ってきていますよ」

 受付カウンターがあるのとは反対側の壁に作られた、休憩スペースに置かれたテーブルを二つ占拠して、リナさん一家とレニスさん、それからシェルタン君とムジカ君がのんびりと寛いでいるのを見て、カウンターの中に戻りかけたエルさんの肩を軽く叩く。

 彼らの前にあるテーブルの上には、何処かで買ってきたらしい包みがいくつも置かれていて、その横にはシャムエル様が喜びそうなお菓子やパイ、それから串焼きや惣菜パンなんかが並んだお皿も何枚も置かれている。

 アーケル君達が飲み物の準備をしているから、もしかしたらここで昼食にするつもりなのかも。



「ああ、もう戻っていたんだね。ええと、草原エルフの皆さんにちょっと話があるので、寛いでいるところを悪いんだけど、ちょっと別室まで来てもらえるかな」

 リナさん達のところへ駆け寄っていったエルさんが、少し声をひそめてリナさん達にそうお願いする。

「改まって何事ですか?」

 お酒の瓶を出しかけていたアーケル君が驚いたようにそう言い、こっちを振り返る。

 苦笑いした俺達が揃って頷くのを見て、アーケル君は手にしていた例のラベルの地ビールの瓶を置いた。

「話があるのは、俺達だけですね。ええと、じゃあちょっと席を外すから場所の確保だけ頼むよ。腹減っているんだろう? 先に食べておいてくれていいからな」

 隣に座っていたシェルタン君達にそう言うと、草原エルフの一家は立ち上がってエルさんと一緒にこっちへ来てくれた。

 だけど顔を見合わせた三人は揃って苦笑いして首を振ると、そのまま椅子に座ってのんびりと寛ぎ出した。

 ムジカ君が、アーケル君達が座っていた方のテーブルに移動して、空いた椅子に収納袋を置いてから別の席に座った。

 こうしておけば、ここにはまだ人が来るのでこの場所を取っているとの意思表示になるのだ。

 あの場所は基本的に早い者勝ち状態なので、俺達みたいに大人数のパーティーの場合、誰かが残って場所の確保をしている事もある。

 まあ、頼まれれば相席したりする事だってあるよ。基本的に無料のスペースだから、そこは譲り合って使わないとね。



 手を振る三人に見送られてその場を離れた俺達は、リナさん一家も一緒にギルドマスター達の案内で奥へ進み、会議室みたいな広い部屋に通された。

 なんとなく手前側に俺達が座り、その横にリナさん一家が並んで座る。

 そして横長の会議机を挟んだ向かい側、ちょうどリナさん一家と向き合う形でギルドマスター達が座った。

「それで、改まって何事ですか? 何かまた問題でも起こりましたか?」

 何となく顔を見合わせたギルドマスター達とリナさん一家だったけど、真顔のアルデアさんが代表してそう言ってギルドマスター達を見た。

 俺達は、特に何も言わずに、彼らの横に並んで大人しく座っているだけだ。

「うん、実はバイゼンでケンが買った、彼のお城の地下洞窟で出たジェムについて、少々聞きたい事があって来てもらったんだ。ちょっと他の人達には聞かれたく無い話だったのでこの部屋を用意させてもらったんだ」

 こちらは代表してエルさんが口を開いた。当然エルさん達も全員真顔だ。

「ああ、もしかして恐竜のジェムか素材で欲しいものがある、とかですか?」

「いやいや、どのジェムや素材だってケンさん達が大量に持っているだろうから、わざわざ俺達に聞く必要なんてないと思うぞ」

 聞いていたアーケル君の、不意に思いついたって感じの呟きに、隣に座っていたオリゴー君が、こちらも真顔でそう言って首を振っている。

「まあ、確かにそうだな。ケンさん達が一番数も種類も多く持っているだろうから、わざわざ俺達に声をかける必要なんて無いよな。ええ、じゃあ一体何が聞きたいんですか?」

 納得したアーケル君がそう言って、不思議そうにエルさん達を見た。

「その地下洞窟のさらに下。水没地域で手に入れた大型水棲恐竜のジェムについてだよ」

 真顔のエルさんの言葉に草原エルフ一家が揃って、ああアレか、って感じで頷いている。

「評価価格を聞きたいとの事で、ケンが持っていたそのジェムを一通り見せてもらったんだ。どれ一つとっても素晴らしいジェムだったよ。当然、評価価格はかなりのものになったんだけど、その値段そのものよりも未発見のジェムであるという点が大きいんだ。そこで問題となるのが、間違いなくこれらのジェムは王都の貴族の方々が大喜びされるだろうって事。当然王族の方だって反応するだろうからね。一応販売する前に王様には一通りのジェムを発見の報告を兼ねて献上するつもりだよ。ああ、もちろんそれはギルド連合の名目でするから、ケンやハスフェル達の名前が出る事は無いので気にしないでいいよ」

 王族に献上すると言われて無言で慌てる俺達を見て、苦笑いしたエルさんがそう教えてくれる。

 王族なんて、貴族より更に関わりたくないレベルの人達だよ。

「つまり、どの貴族に売るかで今後のお付き合いが変わる可能性があるので、販売ルートは一つに絞りたいって事ですね」

 貴族の事情に詳しいリナさんの言葉に、エルさん達も苦笑いしつつ頷く。

「君達もあのジェムや素材を持っていると聞いた。ここに来る前に王都へ行っていたんだろう。王都の冒険者ギルドに売った? それとも、お姉さんを通じての付き合いのある商人に直接売ったのかな?」

「別に責めているわけではない。リナさんが言われたように、貴族との付き合いは色々と裏での調整や配慮が必要なので、何処に売ったのかを教えて欲しいんだよ」

 エルさんに続いてアルバンさんもそう言って真顔でアーケル君達を見た。

 その説明に納得したらしい彼らは、顔を見合わせて苦笑いしつつ頷き合った。

「それなら心配はいりませんよ。何処にも売っていませんから」

 代表してそう答えたリナさんの言葉に、ギルドマスター達が揃って驚いた顔になる。

「売らなかった? それなら王都へ行ってあれを売らなかった理由を聞きたい。こう言っては何だが、ここよりも王都で売る方が買い取り価格は高くなるぞ」

 明らかに信じていない風のアルバンさんの言葉に、アーケル君達は揃って困ったようにもう一度顔を見合わせた。

「俺達だって、未発見のジェムを勝手に個人で売っていいかどうかくらい分かりますよ。結局、岩食い騒ぎの後もバタバタしていてバイゼンでは相談出来なかったので、ここで祭りも終わった事だし、まずはケンさん達があのジェムの扱いをどうなさるつもりなのかを確認してから、改めてエルさん達に相談するつもりだったんです」

 どうやら大人の対応をしてくれたらしい彼らの返事を聞いて、ギルドマスター達は揃って安堵のため息を吐いていたのだった。



挿絵(By みてみん)

2025年3月14日、アース・スターノベル様より発売となります「もふもふとむくむくと異世界漂流生活」第十巻の表紙です。

ついにもふむくも二桁の大台に突入です!

改めまして、どうぞよろしくお願いしますm(_ _)m


今回も引き続き、れんた様が表紙と挿絵を最高に素敵に可愛らしく描いてくださいました。

連載開始当初からの目的地であったバイゼンに、ようやくの到着です!

到着早々色々と騒ぎが起こります。

そして貴重な女性キャラも登場しますよ!

その貴重な女性キャラを描いた今回の口絵も大爆笑させていただきましたので、どうぞお楽しみに!



挿絵(By みてみん)

「もふもふとむくむくと異世界漂流生活〜おいしいごはん、かみさま、かぞく付き〜」

コミックアース・スター様にてコミックス第四巻が、2025年3月12日に発売となります!

もちろん今回も作画はエイタツ様。


ハスフェルに続きギイも、それからフランマもコミックスに登場です!

いつもながら最高に可愛いもふもふむくむく達と、美味しい食事!

そして、地下洞窟と恐竜達とテイム!

盛り沢山なもふむく第四巻を、どうぞよろしくお願いします!


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