寿司祭りだ〜!
生の魚を見ても平気そうに、いやそれどころかめっちゃ楽しみにしている面々を見て、これなら刺身祭りでもよかったかも、なんて考えていたところで、タイミング良く収納袋を手にしたアーケル君達が帰ってきた。
あの笑顔を見れば、成果を確認するまでもない。
笑って差し出された収納袋を受け取った俺は、早速中身を取り出してみる。
俺的には車海老よりもやや大きめサイズくらいの、かなり大きな手長海老がそりゃあもうわっさわっさと入っていて思わず拍手したよ。
まずは、流水でしっかりと洗ってからスライム達に手長海老の捌き方を詳しく説明して実際にやって見せてやり、その結果大量のエビのお刺身も手に入れたのだった。
まあ、車海老よりはやや身は細めなのでエビフライには不向きだけど、甘エビっぽいと考えれば大丈夫そうだ。
なので、今回の手長海老はもう全部寿司ネタにするよ。
って事でまずは準備万端に整った寿司ネタを使って一通りの握り寿司を作って見せ、あとはスライム達に量産してもらう。
それから、やや細めに切り分けた各種ネタを使って海鮮巻きをいくつか具材を変えて作り、サラダ巻きやトンカツ巻き、チキンカツ巻きなんかも作った。
味変に、とんかつバージョンはそのままレタスと一緒に巻いたものと、やや甘めのソースを絡ませたカツだけを巻いたのも作ってみた。肉の方が好きな人は、こっちを食べてもらえるだろうからな。
それから、少しだけ自分用にキュウリのみのカッパ巻きも作っておいたよ。
色々出来た巻き各種の量産はスライム達に任せておく。
それから、かなり大量に出来た中落ちを使った軍艦巻きも作って見せた。
軍艦巻きの具材は、鯛、マグロ、鰹、トラウトの中落ち、それからツナマヨ、コーンマヨだ。
それから少し考えて、豚の角煮をサイコロ状に切ったので軍艦巻きを作ってみた。これもなかなかに華やかで美味しそうなので、スライム達に量産をお願いしておく。
大きめの平らなお皿にびっしりと並べられた握り寿司はどれもめっちゃ美味しそうだ。
それから綺麗に切り分けられた各種巻き寿司も、これまためっちゃ美味しそうだよ。
「よし、準備完了だ!」
一通りの仕込みが終わったところで俺が笑顔でそう言うと、見ていた全員から大きな拍手が上がった。
「うわあ、これはまた美味しそうですね。このまま食べるんですか?」
興味津々なアーケル君の質問に、俺は笑顔で醤油の入った瓶を見せた。
「トンカツやサラダ巻きは、そのまま食べてくれて大丈夫だよ。こっちの握り寿司や海鮮巻きは、こんなふうに少しだけ醤油をつけて食べるのがおすすめ。醤油が苦手なら塩を振って食べるのもありかな。それから醤油をつける時にこのワサビをほんの少しだけ取って、一緒に食べるのもおすすめです。だけどワサビはちょっと独特の風味があるから、好みじゃあないと思ったら無理に食べる必要はないからな」
一応、汁物も欲しかったので赤味噌を使ったわかめと豆腐のお味噌汁も出しておく。
準備が整ったところで、まずは各自好きなように取ってもらう。俺は大張り切りでお皿を手に並んだ寿司を取り分けていった。
絶対シャムエル様に一通り取られるであろう事を考え、もちろんたっぷり取るよ。特に俺が好きなトラウト(サーモン)とエビはガッツリ取っておいた。
それから、巻き寿司各種もガッツリ取っておく。
見ているとどうやら握り寿司よりも巻き寿司の方がまずは人気らしく、駆逐されたお皿を見て、積み上がっていた巻き寿司各種をサクラ達が追加で切って準備してくれていたよ。
「ええと、釣り大会で手に入れたお魚各種を使ったお寿司色々です。生魚をシルヴァ達が大丈夫か分かりませんが、俺の元いた世界では普通に食べられていた料理だよ。美味しいのでぜひ食べてみてください」
いつもの簡易祭壇に、俺の分のお寿司を一通り並べて、少し考えて吟醸酒の瓶も並べておく。
味噌汁と醤油の小皿も用意してからそっと目を閉じて小さな声でそう呟いた。
いつもの収めの手が何度も俺の頭を撫でてくれた後に嬉々としてお寿司各種を撫でまわし、お皿ごと持ち上げてから消えるのを見送った。
「生魚も大丈夫みたいだな。よし、じゃあ食べよう!」
手を振って消えていく収めの手を見送ってから、立ち上がった俺はお皿を手に自分の席についた。
「じゃあ、まずは乾杯だな」
笑ったハスフェルが冷えた白ビールの瓶を渡してくれたので受け取り、マイグラスにゆっくりと注ぐ。
「では、釣り大会二連覇おめでとう! 負けたチームはもう一回頑張れ! そして今日は寿司祭りだ! って事で、それぞれの健闘を祈って乾杯! 愉快な仲間達、最高〜〜!」
笑った俺の乾杯の言葉に、あちこちから笑いと共に今度こそ勝つぞ! って声が聞こえて、皆で笑い合ったのだった。